攻略対象その三を懐柔
「ねえ、エリアーヌ。新しいお友達が欲しくない?」
急にお母様からそんな話を振られた。どういうことだろうか?
「えっと…新しいお友達とは?」
「随分前に、ドナシアン家の奥様がお亡くなりになったでしょう?そのことで、息子さんがまだ塞ぎ込んでいるそうなの。よかったら、会って友達になってあげて欲しいの」
「シャルル・コロンブ・ドナシアン様ですか?」
「あら、知っていたのね。そう、魔法師団長の息子さんよ」
「よろしければ、是非お友達になりたいです」
いつどうやって接触しようかと迷っていたからちょうどいい。攻略対象その三、懐柔しに行ってみよう!
ということでトントン拍子に会う予定が決まり、今私はシャルルの部屋の前にいる。
ドアをノックしても返事がない。
悪いが勝手に入る。
そこには、ベッドの上で毛布をかぶって三角座りしているシャルルがいた。
「失礼致します」
「…誰?」
「お初にお目にかかります。エリアーヌ・ビジュー・デルフィーヌですわ」
彼はちらりと私を見たが、目をそらした。
「わがまま令嬢って本当なんだね。そっとしておいてよ」
「そうはおっしゃいましても、私はわがまま令嬢ですから」
勝手にベッドに近づいて、彼の隣に座って三角座りする。
「…なんだよ」
「いえ、誰かさんが相手をしてくれなくて暇なので…いっそ真似してみようかと」
「なにそれ…」
彼は不貞腐れる。
「ねえ、貴方のお母様ってどんな方だったんですの?」
「今それ聞く!?」
「だって、失ってそこまで落ち込むくらい素敵なお母様だったのでしょう?」
「…うん」
「思い出話、聞かせてくださいな」
そんな私の言葉に、シャルルはポツリポツリと話し始めた。
「お菓子を作るのが得意だったんだ。よくクッキーを焼いてくれた」
「あら、美味しそう」
「すごく美味しかったよ。あと、裁縫が得意でさ、よくぬいぐるみを作ってくれたんだ」
「それはとっても素敵ですわね!羨ましいですわ。私裁縫は苦手ですのよ」
「へぇ。でも、母上も最初から得意だったわけではないらしいよ。いっぱい練習したんだって」
シャルルの表情は少しずつ明るくなる。
「あと、花が好きでさ。よく庭の花を眺めながら一緒に散歩したよ」
「意外といい運動になりますわよね」
「そうなんだよ。庭中歩き回るとなんだかんだでヘトヘトでさ。で、東屋で休憩してお茶とお菓子を楽しむんだ」
「最高ですわね!」
「最高だよね」
すごく楽しそうに思い出を語るシャルルだが、その目に涙がたまってきた。
「…もうちょっと、一緒に居たかったなぁ」
涙はやがて頬を伝う。私は、そんなシャルルを抱きしめた。
「…思いっきり泣いていいんですのよ。いつまでも未練を引きずっていては、お母様は心配で天国にいけませんわ。だから今、思いっきり泣いてすっきりしてしまいましょう?きっと、その方がお母様のためですわ」
「…うっ…ぅぅ…うわぁあああああ!」
私はシャルルをぎゅうぎゅうと抱きしめる。涙が止まるまで、ずっと付き合った。




