国王と学校、まるで将棋だな。
遠くから作業を終えた3人がこちらに歩いてくるのが見える。
「とにかく俺は婚約破棄するから。
レナは普通に許嫁と結婚しろ。
そんでもし今回の事がバレて捨てられる様な事があったら俺のとこへ来い。
レナがうまくいったら俺は生涯結婚出来なくなるが、俺は生涯一人でも大丈夫なタイプだから気にするな。」
そう言って俺は3人の方へ走って逃げた。
翌日の日曜日。
俺はラインズのもとへ向かった。
ラインズは学校にも行かずに、王位第一継承者として毎日過酷な日々を送っている。
俺と会う日はラインズにとってとても楽しみな日なのだ。
「フレズ兄さん。
今日は何して遊ぶ?剣の訓練?魔法の練習?将棋?それとも社会学習?」
遊ぶと言っているのに、訓練とか練習とか学習とか言っている時点でラインズの日常が伺える。
これでまだ8才だ。
これでもまだマシな方らしい。
10才になれば外交行事も増えもっと忙しくなるのだ。
将棋というのは文字通りただの将棋で軍の采配の基礎を学ぶ為のものだ。
俺も貴族の嗜みとして覚えた。
実際の戦争と将棋は違うと言いたいが、将来王になるラインズから見れば実際の戦争も将棋みたいな感じで行われるのかもしれない。
社会学習というのは俺に学校や街や軍について聞くという事だ。
城から一切出た事のないラインズには、ただの日常生活の話しがとても楽しく、なおかつ時期王としての勉強に繋がるのだ。
貴族かつ前世の評価で優遇されている超絶天才の俺の話しなど庶民生活を知るのに何も役立たないがそこは仕方ない。
今日は社会学習だと言ってあげたい所だが、将棋にした。
ここ最近の日常の事件レナの事を話す訳にはいかないし、しばらく俺も忘れたい。
俺はハンデとして角を落として美濃囲いに駒を進めた。
本来ならば、中飛車で攻めまくるタイプなのだが、角のハンデの分冷静に戦況を見守る。
ラインズは俺仕込みのごきげん中飛車美濃囲いで俺の陣を崩しながら、余裕を持って穴熊に移行した。
俺は歩を使い穴熊を崩しに入るが、対策されており徐々に追い詰められて負けた。
こんなの勝てるかとツッコミたい所だが、僅か8才で穴熊を使いこなすラインズの苦労に頭が下がる。
次は平手で打ってラインズの穴熊に歩をぶち込んでやろう。
歩対策がどこまで出来てるか見てやる。
一戦終えると執事が甘いアッサムティを入れてくれる。
疲れた脳に糖分が染み渡る。
ラインズはお茶だけでなくラムネを食べだした。
まだ8才の子供だなと見ていると、ラムネをムシャムシャと食べだした。
「フレズ兄さん、ラムネは疲れた脳の回復に良いんだよ。僕専用のラムネを作ってもらってるからお土産に持って帰って。」
俺達は二戦目はじめた。
今度はハンデなしの平手打ちで、ラインズは予想通りのガチガチの穴熊。
王にとって国の守りが最も重要なのだろうなと思わされる堅実な立ち回りだ。
「ラインズは良い王になりそうだ。」
などと言いながらボコボコにして一戦目の恨みを晴らす。
まだハンデなしの平手打ちなら大丈夫だ勝てる。
次の日。
俺は朝起きると学校へ向かう。
レナと顔を合わせるのは憂鬱だが仕方がない。
レナはAクラス筆頭、俺はBクラス筆頭、クラスが違う分同じ小隊内で会うよりはマシだ。
この国では全ての学校が無料で貴族も平民も通える。
成績順に通うべき学校が国より伝えられて、それぞれ進学するのだが、俺達の通う学校は全員貴族だ。
学校は無料でも家庭学習は違う。
平等とはなんだろう。
俺はなんとも言えない気になる。
俺がAクラスでないのは、少しだけ残る前世の記憶のせいで混同するからだ。
地理や歴史や理系科目が自然災害や科学の進歩により変わっている事があるのだ。
こんなの常識だろと回答して間違う事がある。
なかなかうまくいかないものなのだ。
そしてもう一つうまくいかない事がある。
クラスのみんなとの交流だ…。
「隙ありカンチョー!」
「わーい!うお、フレズにカンチョーした指臭え。どうしてくれるんだ。臭いつけタッチ。」
「ちょっと男子達フレズ様に何するの!」
「さあ、フレズ様こちらでおままごとして遊びましょう。」
「ちょっと待ちなさいよ。私がフレズ様の奥さんよ。わーきゃーわーきゃー。」
毎日これである。
超エリート校なのだがまだ9才。
こればかりは仕方がないのだ。
俺は隙を見てそっと屋上に逃げる。
屋上にも生徒が居るが、上級生な分少しはマシだ。
俺が屋上のベンチで寝ていると、レナが来て隣に座る。
隣にレナが来るのはいつもの事だし、土曜日の事をレナは全く気にしていない様だが少し気まずい。
少し前世の記憶が残ってる俺にとっては裸に触れたくらいで結婚とかバカらしく思う。
それにあれは事故だ。
しかし、レナは9才の少女なのだ。
しかも貴族なのでより一層繊細だ。
傷つけたくない。
俺はどうしても土曜日の事が気になってしまう。
「おいおい、またフレズが女子と一緒にいるぞ。フレズはスケベだスケベだ。」
「ちょっとやめなさいよ。でもレナって少し生意気よね。何フレズ君を独占してんの、奥さん気取り?」
「ねー。」
「ねー。」
上級生は少しマシと言ってもこの程度だ。
俺は上級生達を睨みつけ立ち上がった。




