何でもないもの (補足章 最終話)
この話は、補足章最終話です。
本章の続きを書く予定はないのですが、その後の話として掲載するものです。
この最終話を読むと、もし本章を続けることになった場合、その面白さが半減する可能性があります。
その点をご留意いただいた上で、お読みいただけると幸いです。
もともと地球に、翔一なる人物は存在しない。
宇宙を生み出し続ける大いなる存在の、意識の一面からこぼれ落ちた何でもないものが、適当な宇宙の適当な星の適当な生物たちをもとに、適当に創り出した存在に過ぎなかった。
何でもないものは何か面白いことはないかなと思っていた。そしてきまぐれに、何もしないある宇宙の管理者に、適当に創り出した存在の在りようを写してみた。
適当に創り出した存在は翔一となり、そして何でもないものはローリー・フェイヴと名乗ってみた。地球のある物語サービスの読者たちの在りようが、自分と近しいと思ったからだ。「○○になろう」サービスのreaderだから、ローリー。好意ある(favorable)存在でありたかったので、フェイヴ。
翔一と過ごす宇宙は楽しかった。何億年、何兆年と楽しい時が過ぎた。そして――
翔一の在りようが摩耗を始めた。何もしようとしなくなる。パチンっ、と頬をはたいても、あの時のようには戻らない。
ローリーは翔一を消滅させようと思った。ただ感謝の想いは深い。ローリーは翔一を、本当に地球に存在する人物にすることで還すことにした。
こうして20世紀末の日本に、もともと存在しない翔一が誕生する。
ローリーはとっても感謝していたので、とってもたくさんの翔一を誕生させた。そのうちの1人は後にショウに連なることになる。
同じ名前で同じ容姿を持つ男たちが、互いに互いを知ることなく成長し、活躍し、その一生を終えていった。ローリーにとってはあっという間の出来事。一人ひとりを慈しみを持って見届けた。
そして最後の、ショウであった翔一がその一生を終えると。
「ありがとう」
もう白い空間は存在しない。
もうローリーは存在しない。
どこでもない空間で、何でもないものは、何か面白いことはないかなあと思った。
完
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。




