逃走
領都を出発した私たちは森を抜けたところで、待ち構えていた帝国騎兵の襲撃を受けた。
騎兵の数はわずか百騎に満たない数、だが私たちは戦えない者が中心で武器も木の棒やナイフしか持っていない。
あっという間に恐慌におちいり、集団はちりぢりになって逃げ出した。
こうなっては立て直すことなど出来ない。
いや、そもそも私はこうなることが分かっていて、ここまで彼らを連れてきたのだ。
私は領都に帰らせないために皆を励まし、あざむいてきたのだから・・・
幼い子供が槍で突かれた、老婆が馬に踏まれた、必死に棒を振る男が首をはねられた、私は周囲が血に染まっていくのをただ見つめ続けた。
これで私の役目は終わった・・・
楽になりたかった、七千人もの領民を殺すためにここまで連れてきた。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・
「ミーシャ様、最後まで諦めないでください。まだ生きている領民がいるのです。責任を果たしてください!」
一人の男が立ち尽くしていた私の手を引き走り出した。
そうだ、まだ私は生きている。
最後まで、少しでも出来ることがあるならばそれを成さなければ
私は“安易に死に逃げる事は許されない“と心に刻んだ。
それから、半時ほどがたち十数名ほどが私とともに行動していた。
背後からはたいまつの火が追ってきている。
怖い、苦しい、だけど・・・
今誰か一人でも音を上げれば皆立ち止まってしまう。
現状でそれは死を意味する。
私たちは励まし合い、薄い月明かりの中を必死に進んだ。
本当はもうすべてが限界で、追ってくるたいまつの火は死に神のように恐ろしい。
恐怖に駆られ後ろを気にしながら進む私たちには、前方にある危険が見えていなかった。
谷底の川に転落するその時まで・・・




