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王太子

その報告が王都にもたらされたのは国境が突破され、エスケルト侯爵領の領都が包囲されてから四日以上が過ぎていた。

侯爵領と隣接するジット伯爵領に逃げ込んだ領民からの情報やエスケルト侯爵領の領都方向で何日も複数の煙が立ち上っている状況を考えればすでに侯爵領の領都は陥落しているだろう。

王国近衛騎士団の上級騎士たちはそう考え、当初はジット伯爵領に増援を送って防御に徹し帝国軍を足止めする。

そして、諸侯の軍が集まり次第反撃に移る案が奏上された。

国王陛下の御裁可により近衛騎士団を率いて先発するのは王太子である私、ディッケルト・アビリエンスだ。


==============


「エスケルト侯爵領の状況が分からないだと、ジット伯爵は今まで何をしていたのだ。なぜ偵察を行っていないのか」

先発隊として入城した我々にこの小太りの伯爵は、帝国軍の一部が街道を封鎖していることは分かっているがその兵力および帝国軍本隊の位置は不明と報告してきた。

「いえ、そのようなことはありません。騎兵を中心とした部隊が街道の要所に陣地を構築しておりこれ以上の情報は得られませんでした」

役立たずが・・だがこんなやつでも伯爵家の戦力は必要だ。

私は言葉を飲み込んで近衛騎士団から軽装の弓騎兵を編成して偵察に出した。



街道を封鎖している帝国軍は街道の北に広がる森林地帯に多数の騎兵部隊を展開しており、偵察隊は南の草原地帯を大きく迂回してエスケルト侯爵領の領都付近まで潜入して無事に情報を持ち帰った。

「エスケルト侯爵領の領都は未だ抵抗を続けており三万程度と見積もられる帝国軍が領都を包囲しておりました。また、街道を封鎖している帝国軍は騎兵を中心とした五千程度と見積もられます」

朗報だ、領都が陥落していないのであれば、こちらの戦力が整えば敵に二正面作戦を強要でき、我が方が有利になる。

私はこの情報を早馬で王都に送った。

助けられるかもしれない。私はこのときそう考えていたが、すでに一つの惨劇が終わっていたことは知らなかった。

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