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私は皇帝  作者: 破魔矢タカヒロ
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16/21

その16


 キタコウライのミサイルが我が国の海域に落下した一件。


 妃のコチミはそれをハメリカの仕業と見ている。そして、その見解を内閣官房長官にぶつけたわけだが、官房長官は返答しない。そこで、コチミは返答を促した。


「どうなのですか? 声に出して言わなくても、首を縦に振るか横に振るかでも構いませんのよ」


 しかし、官房長官は声に出して返答した。


「そのような非礼なことは致しません。では、お答えします、肯定も否定も致しません」


 表面上は曖昧な答えなのだが、コチミはそれに満足した様子だ。


「そうですか、わかりました。それと、最後にもう一つだけ答えてください」


「なんでしょうか?」


「前カミガタ市長のナシモト氏が法務大臣になりましたよね、あれは、かねてから予定されていたことでしょ。今の事態に備えてのことですよね。在日キタコウライ人を逮捕させるために民間から登用したのですよね?」


「それについても、肯定も否定も致しません」


「そうですか、長官、どうもありがとう。それで十分ですわ」


 コチミからの質問に答え終わると、「また思い出話でもしましょう」と言い残して、内閣官房長官は急いだ様子で首相官邸へと戻って行った。


 コチミは官房長官の返答に納得したようだが、私には、官房長官の返答の真意が不明だった。だから、その点についてコチミに尋ねた。


「官房長官は肯定も否定もしないと言っていたよね。あれでわかったの?」


「ええ、十分ですわ。肯定したのですよ」


「つまり?」


「キタコウライのミサイルが我が国の海域に落下したのはハメリカの仕業だし、マナベ総理はそんなハメリカに協力しているのですよ」


「え、マナベ総理がハメリカに協力している? それって、要するに、マナベ総理はキタコウライと戦争する方向に協力しているということ?」


「さようですわ。マナベ総理もナシモト法相も好戦的な人物ということです。私は、以前からそのように感じていました」


「そうかなあ、確かに右にいる人物だけど、好戦的とは思っていないよ。かりに好戦的だとしても、最悪で1000万人も死ぬのだよ。戦争する方向に協力するわけないよ」


「そうですわね、それが常識的な観測ですわね。だから、これは、私の勘なのですよ」


「コチミの勘は当たるからね。勘と聞いても、大いに気になるね。それで、コチミは、どうして、そのように思うの?」


「キタコウライが今以上に強大になることをハメリカが看過できないからですわ。今叩いておかないと、ハメリカですら手を焼くようになるからですわ。キタコウライの今の通常戦力なら、核兵器という返り血を浴びても、容易にひねりつぶすことができますからね」


「つまり、ハメリカは、これ以上待てないというわけか。しかし、ハメリカはそうだとしても、どうしてマナベ総理はそれに協力するのだろうね?」


「マナベ総理はハメリカ大統領と同じ見解を共有しているのでしょうね。つまり、マナベ総理も同じ様に感じているのでしょうね」


「他の選択肢はないのかね?」


「あるでしょうね」


「例えば?」


「キタコウライのことをハメリカと同様の核保有国として認めて、徐々に懐柔するとかですわね」


「キタコウライはそれで大人しくなるかな?」


「さあ。将来の事なんて、なにもわかりませんわ。でも、わからないだけに、チュンコクのような開放路線に転じる可能性もあるし、クーデターが生じて、イ・ドンドン第一書記が失脚することもあり得るでしょ。いずれにせよ、今1000万人が死ぬよりもマシですわ」


「確かにそうだね。けど、現実は、戦争を回避できそうにない。そして、象徴皇帝の私は何もできない」


「恐れながら、さようですね。だから、私たちは、不審でも不満でも、シェルターに入るしかなさそうですわね」


「残念だけど、そういうことだね。それにしても、太陽国人を含む1000万人が死ぬかもしれないのだよ。マナベ総理はよくもそんな現実を受け入れられるよね」


「受け入れられるのでしょうね。そして、ナシモト法相も同じでしょうね。つまり、あの人たちは、そのような冷酷な人種なのでしょう」


 すると、ここで、私たちに同行していた侍従長のスマホの呼び出し音が鳴った。


「はい、侍従長のトヨトミです。えっ、本当ですか! 間違いありませんか? ・・・ そうですか、わかりました ・・・ はい、では、そのように」


 通話を終えた侍従長は、私たちに告げた。


「皇帝陛下、皆様、今、皇帝庁長官から連絡が入りまして、ハメリカの先制攻撃が始まりました」


=続く=


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