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私は皇帝  作者: 破魔矢タカヒロ
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12/21

その12


 謁見の間に向かい歩きながら、私は、侍従長にボロボロ共和国について聞いた。


「ボロボロ共和国なんて国があったんだ」


「はい。去年独立した国でございます」


「で、どこにあるの?」


「アフリカです」


「アフリカのどのへん?」


「あ ・・・ はい ・・・ ええ ・・・ そ、そのへんです」


「あ、そう。そのへんね。まあ、それでいいや。で、国状はどんな感じ?」


「それが、独立以来、ひどいインフレでして、一年前にはバナナ1本が1ズタズタだったのですが、今では1万ズタズタするそうです」


「そのズタズタって何?」


「ボロボロ共和国の通貨です」


「ふーん、それがインフレでズタズタなわけね」


「フフッ、まあ、さようでございます」


「で、どのような産物があるの?」


「農産物にさしたるものはありませんが、ボロンが採れるそうです」


「ボロンって?」


「半金属ですよ。ホウ素のことです」


「あ、そう。つまり、ボロボロ共和国ではボロンが採れるわけね」


「ええ、その国名はボロンに由来するそうです」


「ふーん」


 謁見の間に着くと、ボロボロ共和国大使がそこに立って待っていた。


 私が玉座の前に立つと、大使は、左足を上げ、そのかかとを右ひざにつけた。そして、そのような姿勢で片足立ちしながら、右手を頭の後ろにまわし、親指と中指で左耳の耳たぶをつまんだ。


 それを見た私は当惑して、トヨトミ侍従長に尋ねた。


「ねえ、侍従長、あれって何?」


「オカミ、あれはボロボロ共和国特有の御挨拶ですよ」


「え、そうなの、それで、私はどうすればいいの、同じようにするの?」


「まさか。『もうよろしいですよ』と仰ればよいのです」


「あ、そう。では、早く言ってあげないと、あの姿勢のままでは可哀そうだね」


 私は、早速、「もうよろしいですよ」と言おうとしたのだが、その前に、大使はバランスを崩して転んでしまった。


 大使は、自分の失態に焦りはしたが、すぐに立ち直った。そして、また、挨拶のポーズをとろうとした。そこで、私は ・・・


「も、もうよろしいですよ」


 私の言を通訳が素早く伝えた。


 そして、ボロボロ共和国大使が信任状を私に恭しく手渡し、儀式は無事に終わった。


 それから、私と侍従長は、ニギリスから帰国したコカの待つ居間へと急いだ。


 居間に着き、トヨトミ侍従長がドアを開けてくれて、私が居間に入ると ・・・


「えっ! みんな、いったいどうしたんだ?」


 居間には私の家族が集合していた。


 つまり、そこには、コカだけでなく、コカの両親であるハルノ宮夫婦、コカの姉と弟、そして、北宮家の三人、また、島根に嫁いだサヤカとその夫までいた。


 驚く私を見た妃のコチミは事情を説明してくれた。


「みんな、皇帝庁からの連絡でここに来たそうですわよ。陛下が御病気と聞いて、駆け付けたのですよ。上様は、いたって、お健やかですのにね。今、皇帝庁長官がこちらに向かっています。女官長に連絡してもらいました。まあ、長官の説明を聞かなくても、およその察しはついていますけどね」


「察しはついているって、どういうこと?」


 私がそのように聞くと、コチミは、急に険しい表情になって私に言った。


「戦争ですわ」


「戦争だって!?」


 丁度その時、居間のドアが開き、皇帝庁長官が入ってきた。


=続く=


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