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看護師が異世界の令嬢に転生しスキルを使って無双する話だったハズなのに!?  作者: VANRI


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化け物退治

 二人から化け物の詳細を聞かされる。

化け物は夜間に現れる。唸り声をあげて近寄ってくるので、声が聞こえると外にいる者はすぐに屋内へ逃げるようにしているとのこと。

 だが、家畜などは家に入れることが出来ないので、そのまま外に放した状態なので食べられてしまうと。

柵に思考を凝らしても無駄に終わったと言われる。


「どんな見た目なのかわかっているんですか?」

女性が途端に怯えた顔を見せる。

「見た人の話だと、毛むくじゃらで身体が大きいと……

みんな化け物の声が聞こえると怖くなり、電気を消して隠れるのであまり見たことがないんです」


 女性の声が涙声に変わる。

「毎日ではないんですが、こうやって怯えながら生活することに疲れてしまって……この街を離れる者も出てきているのです。

今のところ人間を襲った例はないですが、いつか殺されるんじゃないかと……」


「そうですか……。数日かかるかもしれませんが私たちに出来ることをやってみますね」

精一杯の笑顔を見せ安心させようと試みる。


 二人は何度も頭を下げながらお礼を言いつつ部屋を出て行った。


 足音が聞こえなくなるとミアが口を開いた。

「化け物って今まで出会ったことないですね…

ドラゴンぐらいしか」


 トニーもそれに合わせて話し出す。

「ドラゴンは、こちらから手を出さなければ何もしてこない。ここの街を襲う化け物はどうなんだろうな……」


 アーシュが考えながら言う。

「あの二人の言い分だけ鵜呑みに出来ないか……。

客観的に見る必要がありそうだな」


「うん……とりあえず、毎日時間ごとに交代して見張っておく必要がありそうね」


 アーシュが笑顔になる。

「じゃあ昼間は自由に過ごそうか!」


「は? いきなり何を言い出すかと思えば……」

トニーが呆れ顔を見せる。


「だって! 俺たち国を出てからゆっくりすることなかっただろ!?

 昼間はすることないから、好きなことして過ごそうよ!」

「そうね……それもいいかもね」

アーシュに同意すると、アーシュはますます笑顔になる。

 確かに息抜きも必要だ。昼間に出たという情報はないし、たまにはいいだろう。


「よし! 決まりな!

じゃ今日は頑張って見張りやろうな!」




 

 その夜、落ち着かずなかなか寝付くことが出来なかったが、いつの間にか寝てしまった。


 窓際に目をやると見張りはトニーの番らしく、暗闇の中で窓の外を見ていた。他の皆はよく眠れている様子。


 身体を起こすと、それにトニーが気付き目と目があう。

続いて小声で話しかけられる。

「どうした? 眠れないのか?」

「ううん、寝てたみたい。今起きただけ」


 皆を起こさないよう、静かにトニーのそばへ近寄る。

 窓からは夜の闇の中、森の木が風に揺れ葉が散っていくのが見える。近くの家々も電気が消えているので眠りについているのだろう。

 こんな静かな夜に唸り声でも聞こえたならどんなに恐ろしいか。子供がいる家庭は尚更恐怖を感じるだろう。


「目が覚めたから見張り変わろうか?」

小声で言ったが、

「大丈夫。まだ寝てていいよ」

と、外に目線をやったまま聞こえるか聞こえないかの声で返された。


 隣の椅子へ腰を下ろす。

「覚えてる? こうやって夜に一緒に外を眺めたこと」

「ああ……ゼインの国に行く前の夜だったよな」

「そう。すごく不安で眠れなくてバルコニーに出てたの……」

「通りかかったらお前が星を数えてて……」

と、フッと笑われる。


「もう! それは忘れていいから!」

恥ずかしさのあまりトニーを軽く叩いてしまう。


 しばし静かになるがトニーがゆっくり口を開く。

「行かせたくなかったよ」

「え?」


トニーは森から目を離さず続ける。

「行かせないで済む方法を沢山考えてた。

だけどいい考えが浮かばなくて自分に苛々してた。

それで城内を歩いてたらお前がいた」

「そっか……」


「お前と話して『行きたくない』って一言も言わなかったから強いなって思ったんだ」

「でも本当は行きたくなかったんだよ」


 トニーが目線をこちらに向けたので視線がぶつかる。

「知ってたよ。敢えて言わなかったんだろ?

言われた側が困るから」


 何も言えず下を向く。

「強いよ、お前は」と、頭に手を乗せられる。


 トニーを見上げる。

「手を繋いで」

と左手を出す。

「え……何でいきなり、……」

と言いつつも、頭に乗せた手で私の左手をとってくれる。

照れ隠しなのか、また森の方へ目線を向けている。


「あれから色々あったけど、こうやってまたこの手を握れた。

……良かった。お互い無事だったから出来ることよね」

そっとトニーに寄りかかり目を閉じる。


 トニーの匂いと共に体温が伝わってきて落ち着くのを感じる。

 一緒にいると安心感がある。いつも気にかけてくれているのがわかる。そばにいるのが心地良い。

 もしかしたらメアリーは、この人のことが好きだったのかもしれない。

 なぜかそう思った。




 太陽の光で目を覚ました時、ベッドにいた。

あのまま眠ってしまったのだろう。

 

 最後に見張りを終えたアーシュは眠そうな様子を見せず、トニーとどこかへ出かけて行ったとミアに教えてもらった。





 せっかく時間ができたので、私は御者に馬車を走らせてもらいミアとこの街を探索することにした。




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