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怒らせれはいけない人

「因みにあのベルトはロベルトさんやエマさんの質問に嘘を吐いたり、答えなかったり、エマさんが気に入らない答えを言うと、」

「・・・・・言うと?」

「キュ!!と締まります」

「は?」

「まあ、ユージーンは頭だったからそこまで疑われていなかったんだろうけど、もし、嘘を吐いていたら」

「いたら?」

「今、ユージーンの額に一本線の傷が入っていただろうね。因みにあのベルトは身体のどんな所にも装着可能でよくエマさんが尋問や拷問に使っているの」


そう言うシェナだがユージーンはいまいち腑に落ちなかった。


「・・・・・・・色々と、聞きたい事があるが、エマさんって一体、今何歳なんだ?前職が拷問技師と言っていたがとても前職がある年齢には見えなかったぞ?」


ギルドで身の回りの世話をしてもらったが、若いが落ち着いた印象のある女性だった。

歳も自分と近いとユージーンは勝手に思っていた。

それに、俄かな知識ではあるが拷問技師になるにはそれなりの経験と知識と技術が必要だった筈。

そんな思わず出た素朴なユージーンの疑問にスッと真顔になるシェナ。


「その質問、エマさんのいる時にしない方がいいよ?下手したら額に一本線の傷だけじゃ済まないから」

「・・・・・へ?」

「前に酒に酔った酔っ払いの男が居たんだけど、その男がエマさんにしつこく絡んで、エマさんの歳の事を弄った事があったんだ。

そしたら満面の笑顔のエマさんがその男を地下室に連行した事があったの」

「・・・・・・・・」

「そしたら、しばらくして、地下室から女口調の野太い声が上まで響いて、」

「や、まて、何があった、知りたくないが、何があった!!」


顔を青くしながら言っていることに矛盾があるがユージーンの気持ちもわかる。


あの時、たまたま居合せてしまい、地下室から野太い声で、


『いやああああ!!やめてぇええええ!!!』


と響いて来たオネエ言葉の悲鳴に、一瞬トラウマになりかけた。


「大丈夫だよ、エマさん元とは言えプロの拷問技師だったから、ちゃんと生かしてはいるよ。一応」

「生かしては、いると言う言葉が恐ろしく感じるんだが」

「大丈夫、その男も今では元気に生活は出来て、」


歩きながらそんな話をしていると、横道から大柄な影が躍り出ててきた。


「っと、」

「あら、ごめんなさい」

「!!!」


いきなり躍り出てきた大柄の人物が打つかる寸前で止まりユージーンに謝る。

その人物を見て目を見開きユージーンの動きが固まる。

高身長の身体に煌びやかな金髪、茶色の瞳を彩る様な派手目のメイク。

肩を大きく出したワンピースから覗くのは豊満な胸の谷間と細い肩、では無く厚い胸板と逞しい筋肉隆々の丸太のような肩。

そして、女口調の猫撫で声の低い声色。


「ん!?」


目の前の視界と聴覚に思考に混乱するユージーン。


「あ、ボリーさん」


知っている顔馴染みにシェナが立ち止まる。


「ん?あら?やっだあ!!シェナちゃんじゃない!!」

「久しぶり」

「本当よ!!最近ちっとも会いに来てくれなかったから、寂しかったわよ。たまにはお店に遊びに来てよぉ。って、あら?あらぁ?」


ボリーが固まっているユージーンを見て何やら意味深な笑みを浮かべる。


「なぁに?シェナ、しばらく会えないと思ったら、いい人が出来たからなの?

いゃっだぁ!!そう言うことは早く言ってもらわないと、私も野暮な事言わないのに、あ、それとも、お付き合い仕立てな感じ!?あ、もしかして、その抱いている赤ちゃん、彼の子!?」


キャッキャッと野太い声で、はしゃぐボリーにシェナはため息を吐く。


「違うよ。仕事だよ」

「あらぁ、そうなの?でも、なかなかいい男じゃない、うん!!ウチの店に来たらすぐにでも売れっ子になりそうね。売れそうな体と顔だわぁ。・・・・・美味しそうな子」

「は?え?店?売れっ子?」


ボリーの言葉に更に困惑し、舐め回すような視線にユージーンは引き気味に思わず一歩後退りる。


「・・・ボリーさん、この人多分ノーマルだから無理な勧誘は出来るだけ控えてください」

「多分では無く俺はノーマルだ」


呆れ顔でユージーンを庇うと間髪入れずに真顔でユージーンが即答。


「もう、分かっているわよ!!昔の私じゃないんだから。無茶苦茶な事は言わないわよ」


厳つい体付きで拗ねたような女らいし仕草をするボリー。

その時、一瞬、ユージーンは見た。

下されたボリーの前髪の隙間から額に刻まれた横一線の傷が見えた。


「!?」

「あら、いけない、私ったらお買い物に行く途中だったわん。じゃあね、シェナちゃん。今度お店に遊びに来てね?そこの色男さんも」

「っ、あ、えっと」

「そのうちにね、お化け屋敷」

「やっだあ!もう、そんな可愛い事言って、化けて出ちゃうわよ?それじゃ、まったねー」


野太い声で笑いながらボリーさんは賑わう街の中へ歩いて行った。


「相変わらず、賑やかな人だったな」

「あ、えっと、彼?いや、彼女?は、一体?」


困惑した表情のユージーンにシェナは少し考えて、


「んーー・・・・・・エマさんを怒らせて更に激怒させたヒトの末路?」

「・・・・・・・」

「さっき話をしていたでしょう?エマさんの歳を弄って地下室に連行された人。

アレ、ボリーさん。

簡単に言うと、キュッと締められて、パチンと切り取られたみたい」


そう言うと、ユージーンは青褪めた顔で固まっていた。


「ユージーン。エマさん怒らせると恐いから気をつけてね」

「あ、ああ、肝に銘じる」


重い口調でそう言ったユージーン。

その時の顔は、心なしか事情聴取の時よりも真剣な顔をしていた。

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