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事情聴取再開

「では、早速事情聴取を始めましょう」


ロベルトさんの言葉に、私は滑り落ちた席に座り直した。


ちなみに、子ドラゴンは私から離れなかったため、私の肩に乗っている。

お兄さん、ユージーンもエマさんに促され、空いている席に腰掛ける。

エマさんは人数分のお茶を用意して、ユージーンの後ろに控える。

ユージーンはちょっと居心地が悪そうだったけど、これは仕方がない。


「・・・・彼女達も同席するのか」

「ええ、シェナは当事者ですし、エマには貴方の監視役も兼ねています」

「・・・・・そうか」


ロベルトさんの言葉に少し顔を曇らせるユージーン。


「・・・・出来れば、あまり知られるのは避けたい」

「そうですか。では、エマお願いします」

「はい」


ユージーンの曇らせた表情を見て、ロベルトさんがエマさんに目配せする。


エマさんはロベルトさんに答えると、徐に、左手首に着けている青い石が三つ付いたシルバーのブレスレットに触れる。

その瞬間、部屋の空気が変わった。

まるで、部屋全体を薄い布で覆われた。そんな感じだ。


「っ!!」


部屋の空気の変化にいち早く感知したユージーンは咄嗟に身構える。


「大丈夫です。エマにこの部屋に結界を張ってもらいました。これで、この部屋の外部に声も気配も漏れることはありません」


ロベルトさんの静かな口調でユージーンを宥める。


「エマ、シェナ。龍の宿り木サブリーダーとして、命じます。今から此処で話すことは他言無用。分りましたね」

「はい」

「はい」


頷く、私とエマさん。


「ユージーン。此処に居る二人は信用の置ける人物です。大丈夫です」


優しい口調だが、ロベルトさんの雰囲気が拒否する事を許さないと無言の圧がユージーンにかかる。


「・・・・・・、分かった」


ユージーンは意を決したかのようにロベルトさんの水色の眼を見据えた。


「はい。では、早速、こちらから質問する形で事情聴取を始めます」


ユージーンの事情聴取が始まった。


「まず、改めて、貴方の名前と職業を教えてください」

「・・・・・、ユージーン・ハンレス。アーガルジア王国王宮騎士団第7部隊副隊長だ」


ユージーンの言葉にシェナがピクッと反応する。


この国の名、アーガルジア王国。世界屈指の国土を持つ大国。

ユージーンがその国家を束ねる国王の騎士団の副隊長とは。

道理で、気絶したユージーンを運ぶ時、筋肉質で重いと思った。


それから、ロベルトさんがいくつか質問をして、ユージーンはその質問を答えるを繰り返していた。

そして、


「貴方は、いえ、エンシェント・ドラゴンはどこから来たのですか?」


その質問にユージーンの表情が硬くなる。


「国立ベルディア保護区」


その言葉を聞いて、ロベルトさんとエマさんは表情硬くし、シェナは聞き慣れない言葉に小首をかしげる。


「ベルディア保護区?」

「シェナは、あまり聴き慣れないかもしれないわね」

「国立ベルディア保護区とは、希少性の高い魔獣や絶滅危惧種の魔獣を保護する場で、アーガルシア王国所有の島です」

「島!?」

「ええ、王都にある広大な湖に浮かぶ島で、常に結界魔法で守られ、一般の者はまず近づく事は出来ません。入れるのは国王陛下に許されたごく一部の人間だけです」

「ふぇ、」


ロベルトさんの説明で変な声出た。

しかし、王都の中にそんな場所があったとは。


「・・・・ん?じゃあ、あのエンシェント・ドラゴンも国が保護していたドラゴンだったの?」

「そうなりますね」

「ああー・・・」


シェナは、思わず、硬い表情のユージーンを見る。

確か、保護魔獣の乱獲は重罪。軽くて50年以上の禁固刑。悪くて拷問の後死刑だったはず。


「何故、貴方とエンシェント・ドラゴンがネルの森に?」

「・・・・・・・・・・・」


少し黙っていたユージーンが厳しい表情で語り出した。


「言い訳に聞こえるかも、知れないが、今から言う事は全て、真実だ」


その時のユージーンの眼に迷いは見えなかった。


「2ヶ月、俺が所属する第7部隊にある男が入って来た。男の名はオーガスタ・バウ。だが、この名は偽名だ」

「・・・・・どう言う事ですか?」

「オーガスタの本当の名は、シュナイダー。シュナイダー・J・ルドガー・アーガルジア。この国の第3皇太子殿下だ」

「!?」

「!?、はあ!?」


ユージーンの告白にエマさんは眼を見開き、シェナが声を上げた。


「、疑われても、仕方がないと思っている」

「・・・・確かに突拍子の無い話ね」

「でも、シュナイダー殿下が、なんでこの国の王子が、騎士団に?」


シェナら素朴な疑問を口に出す。


「いいえ、シェナ。王族の者が武道を極める為に自ら武兵へ入団する事は珍しいですが、少なくは無いんです。ですが、その様子だと、ちょっと事情が異なるようですね」


ロベルトさんの言葉と視線にユージーンは、申し訳無さそうに視線を伏せる。


「・・・あぁ。シュナイダー殿下は、その、魔法や武道の腕は問題無いのだが、・・・自尊心が少し強いところがあり、宮廷でも度々問題を起こして、正直言って、素行があまり良くない」

「第3王子、ですか」

「・・・・お噂は予々耳にする事はありましたが、」

「国を守る一介の兵にそう言われるのって、第3王子ってどれだけ素行が悪いの?」


あまり、王都の噂に詳しくないが、ロベルトさんやエマさんの様子からして、第3王子の噂はどうや真実らしい。


「・・・・・否定は、しない。2ヶ月前殿下がある問題を起こし流石に国王陛下もお怒りになり、心身共に鍛え直す為に王宮騎士団第7部隊に身分を隠しオーガスタと偽名を付け、入隊させられた。まあ、当の本人は不満顔だったがな」

「よく、王子が納得しましたね」

「国王陛下の直々の勅命だったそうだ。この事を知っているのは第7隊隊長と副隊長の俺だけだった。国王陛下の命という事で、無碍にする事が出来なかった。・・・・・だが、殿下、いや、オーガスタが隊に入隊しても何かと横柄な態度で隊内の規律を乱すことが多く、」


ユージーンの頭が段々と目の前の机へと項垂れていく。

よく見ると、机の下でそっと胃の腑を摩っているのが見えた。


「オーガスタは武道の腕も魔法の力も有り、勘も働いた。だが、隊長の言葉には一応従うが、副隊長の俺の事は下に見て言うことを聞かない。遅刻、サボり、ケンカは当たり前。事情を知らされていない他の部下とのトラブルも絶えなかった。だが、気に入ら無い事があれば、暴れて手が付けられなかった。

しかし、身分を隠しているとは言え、この国の王子。そして国王陛下の命。無碍にするとこが出来ず、隊長も俺もオーガスタを持て余していたんだ・・・」


なんだか、事情聴取がユージーンの愚痴こぼしになりつつあるように聞こえるが、ロベルトさんは敢えて、止める事はしなかった。


「・・・・・どこにでも、厄介な部下はいるもんですね」

「・・・・・」


思わずボソリと呟いたシェナにエマさんが無言で、


ペチン

「アテ」


軽く頭を叩いた。


そんなシェナを見て、ちょっと気恥ずかしそうに苦笑するユージーンとちょっとわざとらしく咳をするロベルトさん。


「・・・済まない。話しが脱線した」

「いいえ、・・・・それで、オーガスタ、第3王子がエンシェント・ドラゴンとどう言った関係があると?」

「・・・・・。半年前、ベルディア保護区で保護していたSSS級のドラゴンの番が卵を産んだと報告を受けた」


ユージーンのその言葉に、ロベルトさんとエマさんの目付きが変わり、ピンと張った空気をシェナは感じた。


「その報告を受けた国王陛下が、オーガスタの妹君であるエミリア姫と共にベルディア保護区を視察に行く事になり、その視察の護衛を我が第7騎士団が承う事になった」

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