自己防衛
シェナに盛大にお腹の虫の声を聞かれ男は、気の毒な程赤面して固まってしまった。
「・・・・・えっと、大丈夫?」
とりあえず、赤面して固まっている男に声をかける。
シェナは男に話しかけるが、男はシェナを警戒しているのか今自分が置かれている状況に困惑しているのか、何も話さなかった。
もしかして、言葉通じない?
それはちょっと困るな、と思っていたら、
「・・・・・・・エルフ?」
あ、喋った。
「・・・・・・・、エルフ、なのか?」
少し掠れた声で男はシェナに問いかける。
男の濃いブラウン色の眼はまだ少し困惑しているようだった。
ああ、なるほど。
エルフという種族は遥か西のエルフの国から出る事自体少ない。
だが、強い魔力と多彩な魔術を操るエルフ族は細長い瞳孔の眼と尖った耳を持つ種族として有名だ。
いつも、大抵は青いターバンを頭に巻いて自身の尖った耳を覆っていたシェナは今、自分の尖った耳と細長い瞳孔の青い瞳を、エルフの特徴を男に見られている状態だ。
「何?エルフがそんなに珍しい?・・・・・まあ、私はハーフだけどね」
そう言いながら、出来上がった薬湯を小皿に移し替える。
意識が戻ったのなら、そのまま飲んで貰おうと思った、その時、
ガッ!!
「ッ、うわっ!!?」
シェナの身体が強い力により後ろに引き倒される。
手に持っていた小皿が地面に落ち、薬湯が少し溢れた。
シェナは咄嗟に、体を捻り地面に頭を強打するのを防いだが、倒された次の瞬間、腰と首に強い圧力がシェナに襲い、結局、頭を地に着ける事となった。
「ッ、ぐっ・・・・あ、うっ!!」
シェナはさっきまで寝ていた男な引き倒されたのだ。
倒された身体の上に馬乗りのように乗られ、怪我をした左肩を庇うように右手で首を押さえつけられた。
本当に一瞬の出来事だった。
眼前に、険しいく、どこか焦りを感じる男の顔があった。
小柄なシェナと長身の男の体では体格差は大人と子供並みにある。
男の右手はシェナの細い首を簡単に覆い、その右手にはシェナが呼吸と言葉を出せるギリギリの力加減で力が込められている。
「ッツ、何っ!?」
反射的に身を守ろうと、男の手を掴み抵抗する。
だが、シェナの首を押さえつける手に力を入れシェナの器官を圧迫する。
「ッ、かは、ッッ!!」
「答えろ。此処はどこだ」
「っ、ハァ?」
「答えろ、此処は、どこだ!!」
怒鳴りつける様にシェナを見下ろす男の眼は険しく、心なしか深いブラウン色の瞳が深紅色に燃えているかの様に見えた。
「ッ、早く、答えろ!!!」
「ぁ、ぐぅ!」
だが、やはり、どこか焦っている男は話さない更にシェナの首に力を込める。
器官が更に狭まり呼吸がし難くなる。
(ッ、首締めらているのに、喋れる訳、無いでしょ!!!)
これ以上はマズイと感じた、シェナは、
「ッ!、落ち、つけ!!!」
ゴスッ!!
治療した男の左脇腹に拳を叩き込んだ。
「ッ!?ぐっ、が、ッ、あぁ!?」
治療をしたと言え傷は傷。
左脇腹に抉るような痛みに、男は盛大に顔を歪ませた。シェナの首を押さえつける男の手の力が弱まる。
シェナはその隙に組み敷かれた身体を捻る。それと同時に右脚を大きく振り被り、そのまま男の首に踵を引っ掛け、
「うりゃあ!!!」
「ッツ!?」
身体を右反転させその勢いで男を張っ倒し、そのままの勢いでシェナが男の上を取った。
そして、左手で男の頭を押さえ、さっき地面に落とした小皿に残った薬湯を右手で素早くすくい上げ、球体にする。
そしてそのままの勢いで、その薬湯を、
「ンンぐ!?」
「飲め!!」
男の口に叩き込んだ。
少々乱暴なやり方だが、今度はシェナが男に馬乗りになり、薬湯を入れた男の口を右手で手塞ぐ。
「んん!!!」
深いブラウン色の眼がシェナを睨み上げるが、シェナの細長い瞳孔の青い瞳が負けじと睨み返す。
口に入れられた液体に顔を顰めながら、フー、フー、と鼻息を荒い男の姿は、まさに手負いの獣。
「・・・・・・・」
「、・・・・・・」
長年の勘で、ここで怖気付けば、反撃される事は目に見えていた。
しばらく、シェナと男の睨み合いが続いた。
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