少し遅めのお昼ごはん
吊るしていた小鍋を火からおろし、平べったい岩の上に小鍋ごと置く。
平皿に串焼きの肉。深皿にはナイフでスライスしたパン。森で採った果実。
目の前のご馳走に思わず顔がほころぶ。
「我の糧になる尊き命よ 命を生み出し天と大地よ 天地の恵みに感謝します」
両手を胸の前で合わせて、食材への感謝の祈りを捧げる。
「・・・・いただきます」
手に持ったフォークを直接小鍋の中に入る。まだ熱々で鍋の中でクツクツと煮え立っている。川魚の切り身を刺して持ち上げると、加熱され白く色付いたサーマ。薄い金色の花油が滴り落ち薄い湯気を纏っている。
数回吐息で冷まして口の中へ。
「ッ、あちゅ!はふ、はふ!!」
まだ熱かった。
だが、口に入れた瞬間ニンニクの香りが口一杯に広がった。
サラサラとした花油に包まれたサーマは口の中でホロホロと崩れてしまった。
だけど、弱火でじっくり煮たため身はホクホクしてる。
味付けは塩とニンニクだけ。だが、それが素材の味を最大限に引き出している。
サーマの味は淡白であっさりしている。
だが、細身ながら引き締まり程よく脂が乗った身にニンニクの食欲を誘う香りと、不意に感じるピリックの刺激的な辛味。そして、それらを全部包み込む質のいい花油のコクのある風味。
一緒に煮たコル茸は基本無味。だが、どんな料理に使えどんな味にも馴染む。特に油と相性がよく油が馴染んだコル茸は一口食べるとコリコリと歯切れのいい音が楽しい。
鍋の温度が落ち着いてきたら、今度鍋の中の花油をパンに浸して食べる。
市場で買ったパン。楕円形のパンをナイフで三等分にすると、微かに良質な小麦粉のいい匂いがした。
皮はバリッと固いが中はキメが細かい柔らかな白い生地。
三等分にしたパンの一つを鍋の中の花油に浸す。
白い生地が黄金色の花油が染み込み黄金色になっていく。
三分の一ほど染み込んだところで花油が滴る前にパンを口に運ぶ。
バリッと固い皮に歯を立てるともっちりとコシのあるパン。
噛み締めるとニンニクの香りと花油がジュワリと染み出す。サラサラとしていて油っこくない。
味付けさた油をパンに染み込ませて食べる。美味しいが、太りやすい食べ合わせ。
ちょっと罪悪感がく食べ方だ。
パンを2切れ花油に浸して食べていると少し鍋が冷めてきたので、小鍋を竃にかけ温め直す。
その間に『ポイズンパイソンの串焼き』を食べる。
まだホカホカと熱い串焼き。
香ばしく焼けたお肉と香草の香り。アヒージョとはまた違う食欲をそそる匂いだ。
ハフハフと串から直接がぶりつく。一口大に切り分けた肉を噛むと弾力がある歯ごたえ。
ポイズンパイソンの肉は全体的に赤身で筋肉質。少し固めな鶏肉に似た肉質だが、噛み締め、肉を噛み切る度に肉汁が口の中で溢れる。
塩と香草の味付けも合っている。
サラッとした肉汁が口の中で溢れ、喉の奥へ流れていく。
蛇型の魔獣なのにこんなに美味しくて食べ応えがある。
でも、まだ少しクセが気になるかも。
この肉にはシンプルな塩味よりも、濃いめの甘辛いタレの方が合うだろうな。
そんな事を考えながら、森で採れた丸く赤いクルスの実の果実を手に取る。
張りのある赤い皮に齧り付く。
シャクッ!!
爽快な歯ごたえ。薄い皮の下から甘酸っぱい果汁が口の中でほとばしる。
クルスの実は基本的どこでも自生している木の果実で街の中でも栽培、収穫できるし、市場でも普通に買えるが、自然の中で自分の手で採れたクルスの実は何度食べてもちょっとだけ特別に感じるから不思議だ。
瑞々しくてフルーティー。
シャック、シャック、とした歯ごたえ。飲み物の代わりに一口食べるごとに喉を潤し、『アヒージョ』と『串焼き』で油っこくなった口の中を洗い流してくれる。
「うん。美味しい」
森の木漏れ日。川のせせらぎの音。
ソロモン槍のメンバーだった頃は雑用係として仕事に追われていた。だからクエスト中でこんなにゆっくりした昼食をとるのは本当に久しぶり。
なんだか穏やかな気持ちになる。
だけど、
「うん、お酒飲みたい」
色んな料理を作って食べているシェナは酒は結構イケる口。
今回の料理。アツアツのアヒージョと串焼き。
キンキンに冷えた麦酒や果汁酒がとっても進みそうだ。
そんな事を考えながらまた串焼きを頬ばる。
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