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北の門

その後も、市場の人達に声をかけられながら必要な物を買い出して行く。

予定よりも大幅に時間がかかってしまったが、漸く街と外を繋ぐ門にたどり着く。

街をグルリと囲む高い塀。東西南北にそれぞれ大きな門があり、門を通って東西南北のフィールドに行くことが出来る。

これからシェナが向かう『ネルの森』は北のフィールド。ここは北の門だ。

街とフィールドの出入り、通行を管理する門番がいる。

門の脇に管理人の宿舎用の小屋がある。

シェナは小屋の前で門番を呼ぶことにした。


「バードルさん!!居る?起きてる?寝てる?サボってる?」


扉の前で大声で呼ぶ。


「・・・・・・」


だが、返事が無い。

門番は基本的この小屋から離れる事は無い。


「また、酒飲んで寝てるのかな?おーい!!門番!!」

「ダァ!!うるせぇー!!」


もう少し大きな声を出すと、小屋の扉を壊す勢いで出て来た一人の男。

栗色のボサボサの髪に眼鏡をかけた不機嫌そうな顔。

そして、その若干顔色が悪い。


「こっちは二日酔いで頭ガンガンするんだから、静かに寝かせろ!!」

「なるほど、もう酒飲んで寝てた後だった訳か」


よれよれのシャツに無精ヒゲ。どう見ても無職者。これが、北の門番、バードル。

これでも、『龍の宿り木』のギルドメンバー。


「あー、怒鳴ったら頭イテー・・・・」


頭を押さえ頭痛を耐えるバードル。

相当参っている様子。


「自業自得。レイモンドさんは?」

「ああ?昼メシ買い出しに行っているぞ」

「じゃあ、手続きはレイモンドさんに頼むね。今のバードルさん目死んでるし、酒臭いし、仕事出来なさそうだし」

「おい。面と向かって言うセリフか」


呆れ顔でシレっと物言うシェナに怒りで口の端をヒクつかせるバードル。


「おう、シェナじゃねぇか」

「あ、こんにちは、レイモンドさん」


そうこうしているうちにもう1人の北の門番、レイモンドさんが街の方から食料品が入った紙袋を抱えて帰ってきた。

鳶色の短髪に鳶色の瞳。バードルとは反対で爽やかで頼り甲斐のある男性だ。


「どこか行くのか?」

「うん。『ネルの森』に。一晩森で過ごします」

「そっか、ちょっと待ってて。バードル、コレ中に持って行って」

「ッ、俺かよ」

「お前だよ。ほら」

「ッ、コッチは二日酔いなんだぞ」


不機嫌そうにするバードルに買ってきた食料品を押し付けるレイモンド。ブツブツ小言を言いながら食料品を小屋に持って行くバードルを見送る。


「バードルさん今日一段と不機嫌だね。なんかあったんですか?」

「ヤケ酒。昨日の晩、気になっていた女の子に手酷く振られたんだって」

「うん。普段から色んな女性に声を掛けまくっているバードルさんだから自業自得としか言えない」

「だね」

「聞こえてんぞ!!お前ら!」


食料品を小屋の中に置いて来たバードルがシェナとレイモンドの会話を聞いて怒る。


「さてと、シェナは確か今フリーだったね。許可証はある?」

「はい。採取許可証。それと、ギルドの証明証」


怒っているバードルを軽くスルーする2人。


シェナは鞄からギルドから貰った採取許可証の紙と小さな緑の石を抱える龍を象ったペンダント、シェナの『龍の宿り木』のギルド証明証を取り出す。


「はい。ちょっと待っててね」


レイモンドが許可証を受け取り、採取許可証を一読。ギルド許可証を右手首に着けている緑の石が付いたバングルに翳す。

すると、レイモンドのバングルと許可証の緑の石が共鳴するかの様に光出す。


「はい。ギルド『龍の宿り木』メンバー、シェナ・ミツキの門の通行と『ネルの森』の採取を許可します」

「ありがとうございます」

「一応言っておくけど、今シェナはフリー。基本的には自己責任だから、怪我とかには気をつけてね」

「はい」


シェナは許可証を受け取り、門の前に立つ。

レイモンドが門の仕掛けで扉を開けると、春の香りを微かに纏った風が、シェナの頬を撫でる。

目の前に映るのは白い雲が点々と浮かぶ晴天の空と若葉が色付く大地と簡単に整備された野道。

シェナは門をくぐり、深呼吸をする。

街とは違う春の野の微かな香りを胸いっぱいに吸い込む。


「ところで、シェナ『ネルの森』まで少し遠いけど大丈夫かい?」

「ん?大丈夫だよ。直ぐだから」


レイモンドの質問を返しながらその場で軽く屈伸運動するシェナ。

3回ほど屈伸運動を終え意識を集中させる。


「風よ」


魔法で風を作り、両脚に纏わせる。

それを見たレイモンドは納得した表情をする。


「なるほどね。行ってらっしゃい」

「はい。行ってきます」


シェナが脚に力を入れ、大地を踏み込み、


「ジャンプ」


地を蹴り大きく飛び跳ねた。

シェナの身体は高く飛び上がり5メートル程飛び上がったところで止まった。

シェナは脚に纏った風の魔法を板の様に伸ばし、瞬時に足場を作りシェナの体を支える。


「よし」


シェナは風の魔法で風を強化させ薄い風の路を作り出す。

そして風の路の上を氷の上を滑る様に走りだす。

普通に走るよりも何倍も速く走れる魔法だ。

空なら障害物も少なく魔力は消費するが飛行魔法よりも手軽で普通に歩いて移動するよりもこっちの方が早い。


「まさに、一っ飛び」

「あんな、無茶で器用な魔法で飛べるのはアイツだけだ」


レイモンドが笑い、バードルは呆れ顔でもう小さくなったシェナの後ろ姿を見おくった。

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