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半端エルフの悪あがき


ズシン!!


と、ジョニーの身体が地面に叩きつけられる音が辺りに響いた。

辺りが一気に静かになる。

大柄なジョニーを投げ飛ばした張本人の小柄なシェナとの間は約1メートルは離れていた。


「ッ、グッ・・・ハッ!」


地面の上で大の字に倒れるジョニーが、喉の奥で止まっていた息を吐き出した。


「クッ、」


背中後頭部の痛みに顔を歪めるが、直ぐに立ち上がり戦闘態勢をとするジョニーの腹に、


「うりゃ!」


ドス!!


「ぐはぁ!!」


トドメとばかりの思いっきりヒザ蹴り。

しかも助走をつけたジャンプからの落下ニー・キックをかますシェナ。

いきなりの腹部のダメージの痛みに再び地に倒れるジョニー。


「う、が、あ、あぁ・・・・」


背中と後頭部の痛みに加えて腹部の痛みに呻くジョニー。

小柄なシェナでも、全体重、落下に加わる力、それを腹部に一点集中で落とされれば、いくら屈強な体つきのジョニーでもかなりのダメージを受けたようだ。


「私の勝ち」


ギャラリーが騒然とする中、悶絶し呻くジョニーの腹の上でシェナがジョニーを見下ろし目を細めて笑う。



勝敗が決まりギャラリーが騒然となる。

ジョニーに賭けていた男達も唖然としている。

ジョニーの体格差や戦闘経験で勝利を確信していただけにこの勝敗は驚くものがあった。


シェナは周りを気にせずに直ぐジョニーの上から退く。


「・・・・『ヒール』」

「え?」


倒れているジョニーの隣に膝をつき、回復魔法をかける。

身体が暖かくなり、身体中の痛みが消えていくのに目を見開くジョニー。


「痛いところある?」

「・・・いや、無い」

「そう、なら良かった」

「、待て」

「ん?」


ジョニーか立ち上がろうとしたシェナを引き止める。


「何?」

「何故、回復魔法をかけた」

「はい?」

「負けた俺への情けか?」


上半身だけ地面から起き上がり、静かな怒りを感じる睨みでシェナを睨む。

だが、シェナは興味無しと、肩をすくめる。


「怪我したままでいたかったなら、もう一度、投げ飛ばして腹にニーキック入れてやろか?」


そう言って立ち上がり、ジョニーを見下ろす。

何か言いたげに睨む、ジョニー。


「・・・どう?半端エルフに負けて。悔しい?」

「っ、!!何だと!?」


シェナの言葉にジョニーが再び激情し、シェナに摑みかかる。

だが、今度はシェナは避けない。

そのままジョニーに胸ぐらを掴まれ引っ張られ前のめりになる。

それを見た周りの大人が止めに入ろうとするが、シェナが無言で手と目で制する。

シェナの制止に戸惑いながらも止まる大人たち。

それを見て、シェナは正面を向く。

至近距離でシェナを睨むジョニーと真っ直ぐにジョニーを見るシェナ。


「悔しいよね。だって、私がそうだったもん」

「あ?」

「まだ、力が未熟だった頃、弱くて周りの人達に守られてた。でも強い奴にボロボロにされて、物凄く悔しい思いもした。その頃、魔力も本当に弱くて、周りに迷惑もかけてしまって、そんな弱い自分が嫌だった。」

「・・・・」

「魔力が並なのも本当。だから、魔法よりも自分が出来る体術を鍛えた。身を守れるように努力した。ただそれだけ。負けたく無いから強くなった。ただそれだけ。ふざけた気持ちなんて微塵も無い」


胸ぐらを掴まれても真っ直ぐジョニーの目を見るシェナの瞳。


「だから、因縁は付けてもいいけど、イキナリ殴りかかって来るのはやめて。周りの人にも迷惑かけるから」

「・・・・半端エルフだと言ったことは否定しないのか」


未だに胸ぐらを掴んだままだか、少し力を緩める。


「自分が半端なエルフなのは本当のことだから否定しない。だけど、出来無いことで行き詰まってヤケになって自分を決め付けるよりも、今、自分が出来る事を考えて、強くなって生きる。ただそれだけだよ」


ふと、シェナの脳裏に笑っている母、ルリコの姿が浮かんで消えた。


「随分と生意気な事を言いやがりやがって」


ふん、と皮肉そうに笑うジョニー。


「生意気で結構。これはただの私なりの、半端エルフの悪あがきよ」


そう言って、目を細め、笑うシェナ。

だが、すぐ真顔になり、


「で、いつまで人の胸ぐら掴んでいるつもりよ。

このハゲ」


バシッ


「イテェ!!」


ジョニーの額をはたくシェナ。

ジョニーのはたかれた額が微かに赤くなる。


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