背後に注意
不意のはたきに、胸ぐらを掴んだ手が緩まりその隙に、シェナはジョニーの手から逃れる。
「全く、服伸びた」
多少着崩れた首元を治しながら愚痴るシェナ。
「・・・ケッ、可愛くない女だぜ」
はたかれた額をさすり、立ち上がりながら悪態付くジョニー。
「投げ飛ばされて腹にニーキック入れた相手に可愛さ求めるのってどうなの?」
「うっせ!」
呆れ顔のシェナに睨むジョニー。
だが、先程よりは幾分か柔らかいモノになっている。
それを見てた周りの大人達は小さく安堵する。
一触即発の雰囲気が緩和された。
「ジョニー」
あ、ハゲもとい、バズがジョニーに駆け寄ってきた。
チラリとシェナを見るが、どこか複雑そうな顔をしている。
「?何?ハゲ」
「ハゲ言うな、俺はスキンヘッドだ」
「と言うか、お前俺にもハゲって言っていたな。俺はモヒカンだ」
ビシッと決め顔のバズとジョニーだが、
「訂正するところ、名前よりも頭部なの?」
ズレた回答に呆れるシェナ。
「うるせ!!っ、それよりも、お前、ジョニーにヒザ蹴り落とす寸前に魔法で打撃を軽減させたろ?」
「!!、何!?」
バズの指摘にジョニーが驚愕したように目を見開く。
「・・・、起きてたんだ」
「お前がコイツをぶん投げた時にな。お前はコイツにトドメさす寸前に風の魔法を発動させて身体に纏わせたな。何故だ」
「何で分かるの。さっきまで寝てたくせに」
「話を逸らすな」
バズの鋭い視線に気まずそうに視線を逸らすシェナ。
「別に、そのままの状態でニーキック入れたら、確実に、このハゲの口から何か飛び出るでしょ」
ニーキックで腹を圧迫することでジョニーの胃の内容物なり、下手したら肋骨を折り血反吐を吐き出されかねない。
「そうなったら、絶対私に被害を被るから、それを避けたかっただけ」
「だから、咄嗟に魔法で打撃軽減させたのか?」
先程の事が蒸し返したのか、何処か不機嫌そうと言う風なジョニー。
「悪い?」
「・・・・・いや。俺だって、人前で吐くのは勘弁だ。タダでさえガキに投げ飛ばされてんだ。これ以上面目を潰したくねぇ」
そう言ってジョニーは誤魔化すように頭をかく。
「意外に常識人だね。そんな頭で」
「うるせぇ」
「お前、一言多いな。マジで」
いつの間にか、シェナ達の間で勝負前の険悪な雰囲気が薄らいでいた。
「なぁ、お前なんで「おーい。シェナ」
バズが何か聞いて来たが間伸びした声にかき消された。
振り向くと、ディーノさんが満面の笑みで中身が詰まった小袋片手に駆け寄ってくる。
多分中身は私に賭けて勝った賭け金だろう。
「何?もう仲直りしたの?」
「何、人の喧嘩を賭け事にしてるんですか。事の発端者」
ヘラりと笑うディーノをシェナが白い目で睨む。
シェナからは見えなかったが、バズとジョニーも納得がいかないと言う顔をしていた。
「いや~。なんかいい勝負になりそうだから、つい一儲けしようと」
「やっぱり、ディーノさん、一発殴られてください」
侘びも入れず笑うディーノにそう言って真顔で拳を握り構えるシェナ。
「おい。俺にも殴らせろ」
「そういや、コイツへのカリまだ返してなかったな」
シェナに便乗するかのように、ジョニーとバズもゴキゴキと手を鳴らす。
「わ、ちょっと、タンマ!!暴力反対!!」
シェナ達の本気を悟ったのか、笑って誤魔化しながら半歩下がるディーノ。
その時、ディーノの背中が誰かが打つかってしまった。
「あ、ごめんね。大丈夫か、な・・・」
咄嗟に振り返り打つかった相手に謝ろうとしたディーノ。
「あ」
だが、打つかった相手を視界に捉えた途端、表情が凍りつき、明らかに顔色が変わっていく。
シェナからはディーノの体で打つかった相手の顔は見えなかったが、打つかったのは女性だった。
だが、ディーノの顔色の変化で打つかった相手が予想が出来、
「あ」
と、声を上げるシェナ。
「何やっているの。ディーノ」
聞き慣れた少し高めの女性の声に、ディーノの身体がびくりと震える。
ちょっと体をずらし、声の主を見ると、予想通りの女性。
三角の獣耳にフサフサの尻尾。背中に大舘を背負ったオレンジ色の髪とオレンジ色の瞳を持つ、
「アーシアさん」
狐の獣人のアーシアさんがディーノさんに冷ややかな視線。
心なしか、受付嬢のマリリの時よりもブリザード。
シェナ達も含めて、周りの人達がアーシアの威圧で凍りつく。
「や、やぁ、ハニー」
「はぁい、ダーリン」
引きっつた笑みのディーノに対し、真顔無表情で返すアーシア。
「で?何か私に言うことは?」
「ッ、すみませんでしたぁぁ!!」
アーシアさんの冷たい視線に次の瞬間、物凄い勢いでアーシアさんに土下座するディーノさん。
「・・・・ねぇ、さっき面目潰したくないって、言っていたよね。大丈夫。アンタ以上に面目潰れた男が目の前にいるから」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
呆れるシェナの言葉にジョニーもバズも顔を見合わせて何も言えなかった。
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