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ZONE  作者: 北斗 白
春季大会編
36/46

ep14~VS時雨~

ZONEは毎週日曜日21時更新です

 緑で囲まれたフィールドに、爽涼とした春風が通り過ぎる。空を見上げると、蒼く澄み渡った空を背景に、もくもくとした積乱雲が流れていた。

 

 (今日が春季大会本番……昨日のミーティングでメンバーは発表されなかったけど……)


 昨日は今日の試合に備えて、試合ゲーム形式を中心とした練習が行われた。そして四本くらい試合を行った後、練習が早く終わって全体のミーティングをした。

 僕自身昨日のプレーはいつもと変わらず、特によく目立ったところもなく、悪目立ちする事もない……といった平々凡々な活躍だったが、少しでも試合に出れるチャンスがあるのならば可能性を信じたい。

 それに……今日の相手は僕にとって特別だ。

 

 「おーい蹴也ー! 何一人でたそがれてんのー! ベンチは向こうだってー!」

 「おっけー!」


 声がした方に目を向けると、僕から少し離れたところで奏真が手を振っていた。

 今日の相手は時雨高校。僕をサッカーから遠ざける事となったきっかけをつくった人物……久留沢先輩がいる。

 奏真が呼びかけた方のベンチには、海聖高校のサッカー部員たちが各々スパイクやレガースなどをはめてウォーミングアップの準備をしていた。僕は駆け足でベンチへと向かい、皆に混じって準備を始めた。


 「みんな揃ったわね、それじゃあスタメンを発表します」


 ごくり……と固唾をのむ。向こう側のベンチに目を向けると、「10」という背番号を背負った久留沢先輩が腕を伸ばしたりしてストレッチを始めていた。

 

 (……やっぱりまだサッカーやってたんだ)


 奏真から先日情報を聞いたばかりだったが、目的の人が本当にいることに安心した。やっと戦え……

 

 「フォワード、銀島ぎんじま卓也たくや

 

 (……え?)


 銀島卓也……は僕の名前……ではないよな……。ということは、僕は……メンバーから外れた。


 「それ以外の部員はビブスを着ておいて。いつでも出られるように準備しておくこと」

 

 「はい!」と口を揃えた部員たちが一斉に散り散りになる。その中、僕はその場から一歩も動けずにいた。


 「どうしたの風谷君? まさか自分がスタメン確実だと思っていた?」

 

 ぎりっと奥歯をきつく噛み締める。監督が言いたいことは言われなくてもわかる。


 「ここにいるのは敵であろうと味方であろうとライバルなの。私がチームに欲しいのは一人の戦士。言いたいことはそれだけよ。さあ、ビブスを着てウォーミングアップしてきなさい」

 「……はい」


 多分、自分では気づいていなかったかもしれないが僕は心の何処かで浮かれていた。東堂高校戦でスタメンに選ばれたあの日から。今日の時雨高校との試合も、「自分は絶対に選ばれる」という自信がどこかにあって、僕が久留沢先輩と勝負できるという想像に駆られていた。

 監督は「私が欲しいのは一人の戦士」と言った。裏を返せば戦わない人間は求めていないという事だ。

 また、大事な事を忘れるところだった。奏真を始めとした虎太郎や千宙とのサッカーが楽しすぎて平和ボケしていたようだ。


 「大丈夫か蹴也……?」

 「ああ、大丈夫。それより……俺絶対に試合出るから、負けんなよ?」

 「あ、お、おう。任せとけ!」


 多分、監督は俺にメッセージをくれたのだろう。おかげで目が覚めた。この試合にスタメンで出場しなくとも、絶対に勝たなければいけないという目的は変わっていない。

 

 (待ってろよ久留沢……恨んではいないが今すぐ叩き潰してやるよ)


 俺は準備を済ませて近くに転がっていたボールでリフティングを始めた。

 心の中では、とっくに甘い考えは消え去って、めらめらと煌めく闘志が渦巻いていた。

お読みくださってありがとうございます。ようやく春季大会本編が始まりました。一回戦目で敗退……優勝……まあ、教えませんが、今後に期待してください!


北斗白のTwitterはこちら→@hokutoshiro1010

お知らせなどは活動報告をご覧ください。


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