ep11~結果~
先日はお休みして申し訳ありません! 今回は少し文章量を増やしております!
春期大会編11話です。
ZONEは毎週日曜日21時更新です。
審判がホイッスルで合図し、東堂高校のゴールキーパーが思いっきりボールを飛ばす。放物線を描いたボールは、こちらのディフェンスライン近くまで飛んできていた。
「樋浦! 桜井がそっちに行ったぞ!」
センターバックの氷上先輩が声を上げた時には、黒い影がヘディング体勢に入った樋浦先輩の前に迫っていた。
(……なっ!)
その影は樋浦先輩の目の前に身体を入れると、後ろから来たボールの軌道が分かっていたかのように、かかとでボールをトラップして樋浦先輩の頭上を抜き去った。
そしてゴールキーパーの道山先輩との一対一、カバーに入ろうとした氷上先輩がスライディングで止めようとした時には、桜井の蹴ったボールがネットを揺らしていた。
「……化け物だ」
今までの人生で「サッカーが上手い」人は何人か見てきた。うちのチームにだって奏真や風見キャプテンを始めとしたサッカーが上手い選手は何人もいると思う。
だが桜井劉輝、この男はただ単に「サッカーが上手い」という一言では表せないくらい飛び抜けている。恐らくZONEを発動した俺や神代でも歯が立たない……そんな気がした。
二対一という勝ち越しのゴールを許してしまった海聖高校はその後も桜井に二点を立て続けに決められ、四対一というスコアで試合が終了してしまった。
桜井がフィールドに立ってからずっと責められっぱなしで攻撃のチャンスこそ少なかったが、僕は結局点を取る事ができなかった。
高校に入学してからの初めての試合は、悔しさと呆気なさが残る完敗で終了した。
「まー泣くなって蹴也ー!」
「いや泣いてないし」
東堂高校との試合終了後、他の部員を蹴り落としてまで手に入れたチャンスを生かしきれなかったことの申し訳なさと、点を取れなかったことに対する自分への怒りで複雑な感情になっていた。
監督によるミーティングの解散後、沈んだ気分を落ち着かせるために早く家に帰ろうとしたが、着替え中に奏真に肩をがっしり掴まれてしまい、試合前に訪れた「ラーメン五代目」に連行されていた。
今回は「私も連れて行ってください!」と懇願されたため、この前のメンバーに紅葉が加わって、僕を入れた五人でラーメンを食べにきた。
「……これってどうやってオーダーするんですか?」
「……オーダー? ああ頼むってことね、店員さんを呼ぶんだよ」
「そうなんですか! 私ラーメン食べたことなかったので分からないんですよねぇ」
「えぇ! 食べたことないの!?」
「はい、いつも専属のシェフが料理を作ってくださるので、外食はめったに行かないんですよねぇ」
流石お嬢様、僕たちみたいな庶民派とは住む世界が違う。ただ僕たちが高級な料理を食べてみたいという風に、紅葉も僕たちがいつも食べているような料理を食べたいという思いは同じかもしれない。
「よし、皆頼んだか……てことで今日の反省会だな」
びくりと肩を震わせる。今日の反省会と言っても僕にとっては試合化を開始してから終わるまでの何から何までが反省点だ。
「チーム全体としてはやっぱり攻められなかったというのが一番だと思うな」
僕の隣に座っている千宙が話を続けた。
「海聖高校ってディフェンスは凄くいいんだよ。ただボールを持った時に上手く攻撃の形を作れないで、すぐに取られてまた守備」
「あーあるな、後半蹴也にボールあんまりいかなかったよな」
「それもそうかもしれないけど、奏真からのパスを無駄にしちゃった僕の責任でもある」
あのパスは自分が要求した通りの場所に飛び込んできてくれた。あの場面で僕がシュートを決めていたら試合の状況は変わっていたかもしれなかった。と自分で考えを巡らせていると、僕が喋って以来誰も喋らなくなったことに気がついた。
ふと顔を上げてみると、他の四人がぽかんとした表情で僕を見ていた。
「え……やっぱり怒ってるよね、ごめんシュート外して!」
「いや……全然悪くないっていうか、よくあのスペースが見えたよね」
あのスペース……とは僕が奏真からボールを受けた位置のことだろう。それよりも驚かれることは一切した覚えがない。
「私もびっくりしたんですけど、あの時奏真くんがボールを貰ってパスを出すまでの間、奏真君が蹴也君の方を一回も見ていなかったんですよ」
「そうなんだよ、俺も左サイドから見てたけど奏真が適当に蹴ったかと思ったよ」
奏真がこっちを見ていなかったとはノールックでパスを出したという事か。たまに海外のサッカーチームの噂を耳にすることがあるが、とても高い技術で日本のサッカー選手の間では一回も聞いたことがない。
「いや……一番驚いてんのは俺だよ」
一番うきうきしていた奏真が、突然人が変わったかのように真剣な表情で話し始めた。
「日本代表でプレーしてる時もそうだった、俺が自分にとって凄く良いと思ったところにパスを出しても取ってくれる人がいなかった。だから妥協として一般人が考えるようなサッカーをしてたんだ。でもあの時、蹴也はZONE状態に入ってた、そうだろ?」
「……あ、あぁ」
「だから少し試してみたくなったんだ。俺の思い通りに動いてくれる嗅覚を持っているのか。そしたら案の定パスを出した先には蹴也がいた。正直驚いたよ」
「実は僕も何であそこに走り込んだか分からないんだよね」
だが僕はフォワードの選手には何が必要かを知っている。ただボールを受けるだけだと意味がないんだ。
「……だけどフォワードっていうのは、点を取らなければフォワードじゃないんだ」
「お前、すげえな。やっぱサッカーやってよかったわー!」
「ああ、面白れぇよな!」
「僕もサッカーやっててよかったよ、お陰でこんな面白い人達に会えたんだから」
「私もサッカーやろうかなぁ」
「やめとけ」と四人が口を合わせると、僕たちは笑い合った。話を聞いてくれる友達がいると、自然と笑顔になれる。今なら虎太郎の気持ちが心に染みて理解できる。僕たちは丁度運ばれてきたラーメンを啜った。
お読みくださってありがとうございます。やっと東堂高校編が終わりましたね、ep10で「東堂高校」を「東堂学園」と間違ってしまっていました、申し訳ありません! それともう少しで総合評価が100に到達しようとしています! 読者の皆様、ありがとうございます!
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