episode16
海聖高校編10話です。
「ZONE?」
初めて耳にした単語を何気なく聞き返す。
「やっぱり、知らないよな」
「ZONEってなに? 教えてくれよ」
僕も起き上がって奏真と同じ体勢になった瞬間、丘の上をそよ風が通ると同時に、先に起き上がっていた奏真が口を開いた。
「なぁ、蹴也、今までサッカーをやってきた中で、いつも以上に急に視界が広がったり、相手の次の動き、いや、その次の次の動きまで予測できたことってあるか?」
「いや、そんなあり得ないこと・・・」
(サッカーなんて辞めちまえ!)
僕の心の奥で眠っていた、あまり思い出したくない記憶が体内の神経を伝い、体中全体に鋭い電撃が走る。
「・・・ある」
「やっぱりな、朝の蹴也を見て疑っていたんだ。日本代表の俺より早く反応するんだもん、そりゃびびるわ」
「まあ、今朝の話は置いといて、そのZONEってやらが僕の中にあるから何なの?」
水面に映る歪む太陽が僕らを照らし、水の流れる音色が一つの間を作る。
「さっきも言った通り、俺は教科書通りのサッカーは嫌いなんだ。だからこそ現実離れしたサッカーをやりたいんだよ」
「ということは、ZONEが使える僕とサッカーをすれば、奏真にとって新しいサッカーができるってこと?」
「そして、今まで見たことがない新しい景色が見える」
水面を見つめる奏真の眼差しが輝く。
この人の思考は一体どのくらいの未来まで見えているのだろう。他の人とは違う雰囲気を僕の肌が感じ取り、不意にそんな事を考えさせられる。
「蹴也、もちろん俺とサッカーしてくれるよな」
「当たり前だよ。さっき監督にサッカー部志望って言っちゃったし、ここまで来てサッカーやらないってなれば、どっかのお嬢様が今にでも飛んできて一日以上説教されて高校生活どころじゃないからね」
自分が冗談で言った事だが、話をしている最中に本当にそんなことが起こりそうな気がして少し気が縮む。
「そんなお嬢様なんているわけないだろ、ったく。頭の中まで現実離れしてんな、おまえ」
苦笑いを浮かべ、信じていなさそうな奏真に、心の中で「そんなお嬢様がおられるのですよ」と呟きながら言葉を返す。
「あははは、とりあえず色々と話を聞けて良かったよ。明日も学校あるからそろそろ帰ろうか」
河川敷に来てから一時間以上時間が経過してしまっていた。
ここに来るまでは早く帰るつもりだったため、大幅に予定が崩れてしまった事に少し肩が落ちる。
「何言ってんの、ボール蹴ろうぜ」
けろっとした顔で言った奏真が、大きめのリュックから白色の生地に赤い柄が入ったサッカーボールを取り出した。
「いや、何言ってんのはこっちのセリフだから」
今月から新学期が始まって忙しい季節になりましたね!
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