episode15
海聖高校編10話です
海聖高校から徒歩10分、少し高めな丘の上を歩く僕の鼓膜に、ザァ、ザァという音色と、シャア、シャアという雑草と花の揺れる音色が不規則に流れ込んでくる。
「どうだここ、すげぇ気持ちいだろ!」
僕より少し前に出て、自信満々な笑みを顔いっぱいに浮かべた奏真が、大きく手を開いて肩からぐるんと回して見せた。
そんなに自信たっぷりに言われたら、「全然?」とは絶対に言えない。だが、確かにこの河川敷は、丘の上から視界いっぱいに広がる緑の景色や、自然そのものが奏でるリズムが最高だった。
「ああ、良い場所だね。ていうか、何でこんな場所知ってんの?」
「この町は・・・海聖は俺の故郷なんだよ」
少し前を歩く奏真が丘を降り、草花の上に仰向けに寝っ転がった。
「蹴也もこっち来いよ」
こちらを見て小さく手招きする奏真の要望に応じて、彼と同じ様な態勢で仰向けになる。
「丘の上からの眺めも良いけど、下からの眺めも良いよな」
太陽からの日差しを直接目に入れないように、左腕を額の辺りにくっつけて影を作りながら上を見上げると、視界いっぱいに澄み切った青が広がっていた。
「うん。それより本題に映ろうよ」
「わーったよ。日本代表に入っている大物が何でこんな小さい町に居るのかって話だろ?」
いかにも自分が王様並みの凄い人物である的な口調に妙な苛立ちを覚えたが、無視して聞くことにした。
「さっき言ったように、海聖が俺の故郷だからだよ。それと・・・」
「それと・・・?」
奏真が息を呑んで、間を作ってから重い声で呟いた。
「腹を割って言うけど、現大人の日本代表のプレーレベルが低いからだよ」
何を言っているんだこの王様かぶれは。
日本代表といえば、日本全国各地から集められた凄足のサッカー選手達だけで形成された、プロフェッショナルな組織のはず。
ただ、今の僕の知識では、サッカーから遠ざかった二年のブランクがあるので、正直なところ現在のサッカーの情勢が掴めていないのは確かだ。ただ、
「プレーのレベルが低いとしても、日本代表という肩書を背負ってサッカーできるなら光栄な事ではないのか?」
「いや、確かに光栄なんだけど、あいつらのサッカーは俺のやりたいサッカーと全然違うんだよ」
奏真を見るといつの間にか起き上がっていて、空ではなく、水面に映るきらきらと輝く歪んだ太陽を真剣な眼差しで見つめていた。
「あいつらのサッカーは、何もかも教科書通りで本当につまらないんだよ」
「マニュアル・・・」
「そう。だから誰もが予想できる範囲の想定内のプレーしかできないってわけ」
奏真の言い分はなんとなくわかる。サッカーというスポーツは試合中フィールド内のどの場所でも、毎分毎秒何があるか分からない。それが、サッカーの醍醐味とでも言えるだろう。つまり、一番面白い部分だ。
「何も変化がないサッカーなんて何も面白くないだろ。だから代表を辞退して、何か新鮮な良い刺激を求めて里帰りしたってわけ」
「へぇー、こっちに帰ってきてその成果はあったの?」
「ああ、お前を見つけた」
全く。意味不明なセリフを吐くのが好きなようだ。
そんなこと言われても自分は特に面白い人物でもないし、人を寄せ付けるほどの魅力を持った人物でもない。
「僕のどこが奏真の刺激になるんだよ」
奏真は、水面に映る太陽から一切眼を離さずに答えた。
「蹴也、ZONEって知ってるか?」
今回初めてZONEというキーワードが出てきました←出てくるまでに何話かかってるんだ
書き始めてから15話。最初のころと比べて発想がほんとに豊かになりましたね。
成長を感じてますね。
ブックマークも評価も増えて、本当に嬉しいなと浸っております。
できれば感想などで読者さんの声も聞きたいなと思っています!
ZONEを読んでいただいてる読者の皆さん、心の底から感謝です。
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@hokutoshiro1010




