episode12
海聖高校編です
「以上で以下の日程を終了します。何も用事のない生徒は気をつけて帰るように」
校舎の鐘が鳴り、クラスの生徒たちが帰宅を始める。
今日は登校初日で、主な日程は入学式とHRだけだったので、思っていたよりも早く学校から帰れる。
(さあ、僕も帰るか。)
HRで配布された教科書等を詰めた鞄を持ち、教室後方にあるドアの方へ歩き出す。
「ねぇ、風谷、サッカー部見に行こうぜ」
少し進んだところで突然何者かに名前を呼ばれる。
声のした方に身体を反転させながら振り向くと、ジャニーズにいそうな貫録を持つ美男子が、誰からにも好かれそうな笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「あの、誰ですか」
「え!? ついさっき自己紹介したばかりじゃん! しかも席だって君の後ろの後ろなんだけど!?」
自己紹介。先程のHRでやった気がしなくもないが、教室の暖かい空気によって発生する少し強めの睡魔という怪物にやられて、自分の意識が遥か遠い上の空に飛び立ってしまっていた。
「あー、ごめん。聞いてなかったんだ。多分、寝てた」
窓側を見ながら意識が飛んで行った方に人差し指を向ける。
「しょうがないな。俺は雨宮奏真、気軽に奏真って呼んでよ。よろしく」
奏馬が手を伸ばしてきたので、軽く握手を交わす。
「よろしく。それじゃあ奏真、どうして僕がサッカーするってわかるの?」
「そりゃ今朝のボレー見たら誰だってわかるでしょ。どう見てもあれは素人が蹴るフォームじゃねえよ」
どうやら奏真はあの時、通学路にいたらしい。と、ここで「ん、ちょっと待てよ」と疑問が浮かび上がる。
「僕のボレーの瞬間を見ていたなら、ずっとボールを眼で追っていたという事?」
「うん、そうだよ?」
「ということは、奏真が高辻さんを助けることもできたってこと?」
奏真は胸の辺りで腕を組み、けろりとしたで答える。
「そういうことになるね」
僕はがくりと肩を落とす。
奏真が高辻を助けていれば、屋上での決断をあれだけ悩むことなく、静かに学生生活を過ごすこともできたかもしれないのに。という甘い考えを頭の中で走らせる。
「いやいやどうしたんだよ! 何も落ち込むことないだろ! あ、そんなことよりも早くサッカー見に行こうぜ。もうそろそろ練習も始まるみたいだし」
窓側にある時計に指を向けた奏真は、「ほら」と合図し、手元にある鞄を背負い直した。
僕にとっての今朝の重大な出来事を「そんなこと」でまとめる奏真に、イケメンだが軽そうな男いう偏見を覚える。
「そうだね、じゃあ行こうか」
少し強制染みてる気がしなくもないが、少々の時間くらいなら問題ないだろう。
僕は自分の荷物を持って、奏真の隣を歩き、グラウンドへと向かった。
この前episode11を投稿した時に、一日で100pvを超えるという物凄いことが起こりました!
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