63.想いに蓋を
ご無沙汰です…申し訳ありませんです。
き…緊張するやん……。
手汗…大丈夫だろうか?…とか、どの位置に手を、固定したらいいの?…握る強さはコレくらい?…とか。
考える内に。自然と俯いていた私を
クィッ
手を引き寄せた感覚がして、目の前にフッ…と影が射した。
『何観る?映画。どんなのが好きだっけ?』
覗き込む牧くんの顔が…近い近い近い近い近い近い近い!!しかもっ…け、敬語抜けてるしぃ〜!
思わず仰け反りながら
「え…っと、あんまり恋愛ベタベタよりは…アクションとか違ったヤツのが」
『へぇ〜意外…恋愛モノとか好きそうなのに?』
どんな印象だよ…てか、こんだけ長い付き合いなのに…お互い知らないこと多いのね?
「恋愛モノも観るけど、途中で先が見えちゃうと…感情移入できないから。そういう牧くんは、どんなのが好きなの?」
『俺?サスペンス、ホラー系かな。あとエグいヤツ。…女子には不人気(笑)』
握った手と、笑う顔と…敬語が抜けて、一人称が変わってて。
普段…と言っても仕事場だけど、違う一面がしかも私だけに向けられてることに…
照れるよね。
「そっかぁ。ホラー系は苦手かなぁ〜私。エグい?のは大丈夫なんだけど…」
『クスクス…そういや昨日も、ビクついてたもんね?夜のオフィス』
あれはねーーっ!ほんっとに、声が出なかったんだからっ!誰かさんのおかげで!
なんて言わないけども。
『驚かせてごめんね?…恐い思いさせたし』
「恐い思い?したっけね?ビックリはしたけど」
そ?って顔をして、ホッとする牧くん。
なんでそんな顔してんの?
「ね?牧くん…私もぉ、イタズラしないから…手…解放しても大丈夫だと思うんだけど?」
『アナタはね、すーぐフラフラしちゃうし、人にぶつかるし、何より危なかっしいの。今日は俺が買うんだから、大人しく言うこと聞きなさいな』
「買うってっ、人聞きの悪いっ!付き合うって言ってよね!」
えぃ!
反対の空いてる手で、牧くんを叩いたら
『あははは。悪りぃ悪りぃ(笑)付き合ってよ。ね?』
と、叩いていた手も掴まれて、二進も三進もいかなくなった。
両手を掴まれて、それを顔のところまで持ち上げ背の低い私に…小さな子供にするように背を屈めて首をかしげる。
「…っ、わかったから。片手だけ離して」
『ハイハイ(笑)捕獲ね。じゃ、映画館行って観るもの決めよ?』
ジワリと温かくなっていた片手は、牧くんの手が離れた瞬間…少し…ほんの少しだけよっ?寂しい気がした。
そしてまだ繋がってるもう片方の手に、ホッと安心したり。
『最近、ちゃんと食べてる?』
「んー?食べてるよ。牧くんは、相変わらず自炊なの?」
そう…女子力高い牧くんは、料理男子だ。SNSとかでも作った料理の写真をあげていたりもする。
『まぁ、もっぱら野郎どもにふるまってばかりで張り合いないですけどねー』
「振る舞う人がいれば、それだけでも張り合いあるって…あっ!」
あの風景!
「うちのオフィスから見た風景じゃん!もう〜どんだけ仕事人間なのーーーっ」
『…まあ?あなたがそう見るなら、それでもいいけどね。ていうか、その突拍子もない話の展開についていけるの俺ぐらいだから(笑)』
私の頭の上で、ポンッと牧くんの手が跳ねた。
あ、またやっちまった。思いつきを口に出してしまって、脈絡のない話になってしまう悪いクセ。
「ごめんー。牧くんのスマホ待ち受け、ちょっと思いついちゃって。ついつい口に出しちゃった。いっつもお手数おかけしておりますです」ペコリ
『ふふっ、他でもないアナタだからね?そうじゃなきゃ、んな面倒なことしないから』
さ、映画館着きましたよ。
へ、へぇ…?
なんか今、サラリとタラシ込まれたような…。
久しぶりの映画は、いろんなジャンルの作品が増えていて
「悩むなぁ〜、いろいろあんのねぇ?」
『おっ♪コレも続編があるのかぁ〜』
上映予定の映画予告のパネルと
「なんかのぞき穴?みたいなのがあるよ?」
『どれ?なんだろ…』
パネルに穴が空いてて、覗けるようになっていた。
それをお互い覗いたり、飲み物を買ったりして時間を潰した。
「本当にコレでいいの?」
『いいですよ。観たいんでしょ?彼の映画(笑)』
コクン
頷いた私を満足そうに見遣って笑う。
大好きな俳優が出ている映画(アクション系)の上映が始まっていて、すぐに飛びついた。
さすがに手は繋いでないけど、肩が触れる距離間に…やっぱりフタをした想いが
こじ開けて出てこようとする
やめて…
出てこなくていいから…
あんな想いは
もうしたくない
お願いだから…
鳴りを潜めて…
そんな想いを込めて、ギュッと一人…拳を握った。
覚えておられますか?私はトンと忘れておりましたーー。ので、一から読み直して書きました←ヲイ




