41.必要とされるのは、仕事だけでしょうか。
まだ飲み会も続きます。ちょっぴりせつない?
結婚式を三ヶ月後、部署異動をあと一ヶ月後に控えたある日。
「ちょっと片野くん…いいかな?」と、清瀬主任(当時)が慌ただしい朝の業務中に彼を呼び出した。
普段あまり見られないツーショット光景に、周りの社員も、
「どうしたんだろ?」と不思議そうにして、連れ立って出てオフィスを出て行った二人を見送るしかなかった。
あたしにも全く分からないまま。
その日、いや…その後二度と彼がオフィスに戻ってくることはなかった。
ただ清瀬主任から
「片野くんは、ちょっと出勤出来なくなったから」とだけ聞かされ、理由は明かされなかった。
当時すでに周りの社員には、あたしたちの婚約を公にしていたので、当然皆あたしに聞いてくる…。が、あたしも思い当たることはなく。
彼が出勤しなくなって、二日後の夜に、やっと連絡が取れた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『そういえば妹さんの旦那さんの店はどうよ?』と、お茶割に飽きたからと新たに注文した梅酎ハイを飲んで、顔をすぼめながらヨーコ所長が聞いてきた。
丁度、厚焼き玉子を頬張ってハフハフ〜してたあたしは「はんふぉふぁひゃってふみたふぃてふ…はふはふ」と、まぁよくやるコントみたいな返事を返した。
ら、『なんて言ってんですか…なんとかやってるみたい?ですか?』
おっ!さすが牧くん!と(相変わらずハフハフしながら)、ビシッと指さし、正解!を伝える。
『はいはい。だいたい分かりますからね』と、牧くんが、ジュース飲みなさいって、グラスを渡してくれる。
『…まるで親子だね…。んでも、ぜひ!そこの店にも行きたいねっ』と、ヨーコが言った。
妹の旦那は居酒屋をしている。雇われ店長だが、なかなかいい店を任されている。
今度はそこにしよう!と、ヨーコは行く気満々。
ちなみに今いる居酒屋は、妹と旦那がバイトしていた店。出会いの場所という訳だ。
現在、妹は薬剤師という飲食とは全く関係のない仕事に就いている。
いまどき女子は、手に職を持っていないと!
という母の教えもあり、我々姉妹は、今や立派に(過ぎるほど…)自活できている。
『妹さんの旦那さんって、私と同い年でしたかね?』と、テーブルの空いた皿を下げながら牧くんが聞いてきた。
女子力、高っ!
と、胸の中で思いつつ。
「そーよー。牧くんも料理上手ならやればいいんじゃ?」ほんとは、今の仕事向いてないって言ってたじゃーん?
まっ…あたしに言わせれば、仕事なんて“向いてる向いてない”でするもんではない。
「やりたいか!やりたくないかだーっ!」
バッキャローッ!!と、テーブル返し、星○徹なみに。
ちっ…またつまらんもん斬ってしまったぜっ…。
てな感じで、一刀両断。
『好きでしてるものを職業にはしたくないし、起業とか絶対できない』
サラリー結構。とさ。
「若いのに〜。なんでそんなに冷めてんの?」牧くんならやれるよ〜?って、言ったら。
『付いていきますから、あなたが起業してください』いい右腕になりますよ。と、ミモザサラダ取り分けながら牧くんは言った。
だから、どんだけ女子力見せ付けてんのっ。
『ダメよ〜。チーフは、あたしの右腕なの〜。嫁には行かされんっ』と、ヨーコますます酔っ払ってきたな…。
誰が嫁の話してんですか…。と、牧くんがヨーコの梅酎ハイお代わり頼みながら呆れた。
『だから〜チーフを右腕に据えたままにするなら、やっぱり牧くんが嫁にもらってくれるしかないの〜』って、またかい…。
『私が今の部署へ異動する時には、止めなかったのに…』って牧くんふて腐れ…。
『だって牧くんは、そっちで頑張ってきた方がいいって思ったし』あそこを変えるには、牧くんしかいないって!
買い被りすぎです…。なんで私一人なんですか。
と、ボソッとあたしの方を見ながら牧くん。
確かにね、牧くんの部署異動の話が出るの前に、二人で冗談で話した時は…
「あっちは、ワンマン女史がいるからね〜。なかなか太刀打ちできないと思うから大変よね」
でも、異動かかるなら牧くんしかいないんじゃない?って話になった。
そしたら、牧くんが…
『あそこに戻るなら、あなたと一緒じゃないと戻りませんよ』って。
仕事のパートナーとして…と言われたのは分かってても嬉しかった。
認めてくれてるって、ことだよね?
「ありがとう。私も牧くんとならやれそうな気がするよ」って。
結局、あちらからほんとは、牧くんとあたしの二人に異動依頼があったらしいが、ヨーコの大反対に合い、牧くんだけの異動になったとか…。
必要とされてるのは、ありがたいけどさ。
あたしが必要とされるのって、仕事だけ?なのかな〜って…。
ちょっぴり淋しい気持ちになったのは、内緒。
ミモザサラダ…タマゴの鮮やかさがミモザの花のよう。可憐な雰囲気の花で好きです。




