第93話 勉強会
「恭介君、勉強しなきゃ」
その翌日。家で一葉が言った。
「突然どうしたんだ?」
今は理子に対する太鼓作戦、それと一葉のお母さんに対する話し合いもしなくてはならない。
後者は今数回のメールのやり取りを通じて何とかなりそうな所まで来ているのだが。
「一葉は勉強できるから別にいいんじゃないか?」
「でも、せっかくだから高得点取りたいじゃん」
「まあ、確かにそうだな」
四十点取って赤点を回避したらいい、なんて甘い考えだ。
「それに私、恭介君と一緒に大学に行きたいし、こういう時に勉強しないと」
「……確かにそうだな」
今は、勉強をしなければならない。
「とりあえず理子に対しては」
「後回し」
その言葉に俺は頷いた。
今はテスト二週間前。
テスト範囲を全て網羅する気持ちで勉強をしなければ。
「という訳で、恭介君に必死で教えていくからついて来てね」
「ん、一葉が教えてくれるのか」
「当たり前じゃん」
蟻型尾。とふと思う。
俺は勉強が出来ないわけではない。だけど、勉強は人並みだ。テストも55点が平均くらいで、高得点は夢のまた夢だ。
学期末テストでそれなのだから、模試でも成績は振るわない。
「じゃあ、一葉先生、お世話になります」
俺は頭を下げる。それを見て一葉は自慢げな表情を浮かべていた。
そして、一葉は「出かけるよ」と言った。
「出かける?」
「うん。だって、家だったら集中できないでしょ」
そう言った一葉は勉強用具を持ち、そのまま家を出た、
一葉が連れてきた場所は、ハンバーガー系のファストフード店だ。
「どうしてここなんだ」
「だって、ポテトつまみながら勉強できるって最高じゃん。おやつないとね」
確かにそうだ。
ポテトは塩味があり、勉強のつまみとして最大級に適している、
「じゃあ、頼もう」
俺が言うと、鈴美はいいねと言って頼んだ。
そして、コーラとポテトが到着した。
僕はコーラを軽く飲み、そして、ポテトをつまむ。
「美味しい」
僕は呟いた。
「美味しいよね」
「うん。麻薬だ」
ポテトは食べ始めたら止まらない。
しかし、三口目を食べた所で、一葉からストップが入った。
「とりあえず、勉強しよっか」
その目は少し怖かった。
とりあえず、時間のかかる数学から始めた。数学は正直苦手意識がある。
算数なら得意なのに、数学になってしまうと途端に訳が分からなくなってしまう。
「そう言えば一葉って、全国模試とか」
「私は、偏差値六十くらいかな」
「六十」
偏差値の概念は良く知らないが、そこそこ高そうなのはよくわかる。
「なるほど」
ちなみに俺は五十は越えていない。全国から見たら、平均よりも勉強が出来ない生徒というやつだ。
「はあ……分かんねえ」
勉強を始めて三十分。俺は早速行きつまりを感じた。
どうといていいのかも分からないし、問題分が日本語とは到底思えなかった。
「どうなってんだよ」
俺は息を吐いた。
「困ってるの?」
そう、一葉が口を開く。
「おう。早速一葉の出番だ」
「うん。任せて」一葉は満面の笑みで言った後、「ここはね……」
そう、説明をし始める。
結論から言って、一葉の説明は非常に分かりやすかった。
概念の説明からは言ってくれるので、俺の躓きポイントがすぐに理解できたのだ。
「一葉、屋tぅパすげえな」
「私はそこまで凄くないよ。恭介君の理解力が高いからだよ」
「ありがとう」
そう言ってくれて正直嬉しい所だ。
俺の中で一葉の評価がうなぎのぼりだ。
勿論元から高いのだけれど。
そして、俺たちはそのまま勉強を続けていく。
俺は元々勉強は嫌いな人間だ。
しかし、今感じるのは楽しいという事だ。
それは絶一葉と一緒にやっているからだろう。一葉と一緒に勉強しているからこそ、楽しいのだ。
そう、一葉と一緒にしているという事が大事なのだ。
「疲れた」
流石に疲れ切ってしまった。
「お疲れ」
テーブルにうつ伏せになる俺を一葉は優しく撫でてくれる。
「ありがとう」
俺は一葉にそう、お礼を言った。
「えへへ、恭介君のさ。疲れてる顔大好き」
「何だよ」
俺が言うと、一葉は笑って見せた。
「お代わりポテト頼む?」
「お願いします」
俺は頭を下げると、
「分かった」
そう言って一葉はポテトを頼んだ。
そして、ポテトが届いた。
俺は、わくわくとする。
ポテトが美味しいのは自然の摂理だ。
一口つまむと、早速塩味が感じられて美味しい。
せっかく、ハンバーガーショップに来ているのだから、バーガーも食べたくなってしまうところ。
ただ、それを一葉に言うと、否定された。理由はハンバーガーを食べるには両手を使うから、それだと勉強の邪魔になってしまうからだそうだ。
その理論で言えば今は休憩時間だから、いい気がするが。
そして、三十分休んだところで、無情にも一葉が手を叩いた。
「休憩終わり!」
そして、そう一葉が言った。
「人の心…」
「私を甘く見ないでよ」
どうやら、情に訴えるのは無理らしい。
「じゃあ、勉強の続き」
「分かりました」
俺はそう言って、世界史の教科書を開こうとした瞬間だった。
近くから、知った声が聴こえた。
これは、デジャブか?
これは、あそこにいるのは――




