第25話 映画
「はぁ、歌ったね」
「そうだな。こんな歌うのなんて……1週間ぶりくらいだ」
「そこは久しぶりにしといてよ」
残念ながら俺はこの前オールカラオケをしてる。
ただ、その日沢山歌ったわけではない。半分くらいはスマホをいじっていた。そのせいでスマホの充電がキレてしまっていたのだ。
「今日は楽しかった。一人カラオケよりも、もちろんこの前のカラオケよりも遥かに」
一人で行くカラオケも楽しかった。
だけど俺の歌を聞いてくれる人がいる。しかも、見るからに楽しんでくれている。
それに、気を使わなくてもいい間柄だ。
楽しくないわけがない。
「今日はありがとな」
「もう終わった気なの?」
「へ?」
終わった気なのって、どういう意味だ?
「まだ、12時、まだまだ時間はあるんだから」
そう、元気よく一葉は言い放った。
確かにまだ時間はあるけれど、まだまだ遊ぶ気なのだろうか。
だけど、
「望むところだ」
僕も同じ気持ちだ。
まだまだ遊んでいたい気分。せっかくなら今日一日を遊びつくしたいのだ。
「じゃあ、次どこ行く?」
「銭湯……は違うな」
「最低!」声を張り上げた。「というか、混浴できないし、混浴できたとしてもやだよ」
「だよな。土曜日に銭湯行ったから口直しにでもと思ったけど、違うよな」
男女が一緒に入る事が出来ない施設だからこそ、男女で来ても、一人出来てもほとんど同じことだ。
「てか、そこで、裸の写真撮られたんだよね」
「ごめん」
その件に関しては、本当に反省しております。
「まあ、責めてるわけじゃないし、それはいいとして、何もないなら、私の用事に付き合ってくれない?」
「用事?」
なんだ、それは。
そして、連れられた場所はというと、ショッピングモールだった。それも、土曜日に行ったところとほどんど同じだ。
俺はぎゅっとこぶしを握った。トラウマというほどではないが、ここで赤松と一緒に過ごした時間ずっと騙されていたんだな、なんて思うと少々怒りがわいてくるのだ。。
「で、行きたいのはどこなんだ」
「うーんとね」一瞬考え込むそぶりを見せ、「映画」
「映画?」
それはまさかだった。
そして、俺たちはあっという間にその映画館に到着した。
「で、何で映画なんだよ」
意外だった。
「見たい映画があるからこのタイミングで見ちゃおって思って」
「そ、そうなのか」
確かに、そういう訳ならば、タイミング的にちょうどいいという話ではあるが。
「どんな映画だ?」
正直、恋愛映画とか言われたら、一葉には悪いが断りたいところだ。
なにせ、恋愛なんてもう懲り懲りなのだ。
「これ」
そして見せてくれたのは、アニメ映画だ。
「これかあ」
見るかどうか迷っていた映画の一つだ。
人気であるラノベが原作のアニメであり、そのラノベの映画の第二段だ。
ストーリーとしては、死後に生前やっていたゲーム世界に転生した。しかも魔王として。魔王として対面するのは、勇者たちの非人道な行いだ。ゲームの中で良かれとしてやっていた事。それは魔王側からしてみたら、残虐な行為なのだ。
だからこそ、魔王はそれに対抗するために、勇者に対抗する。しかし、勇者も対抗する動きを見せる。
正義とは何なのか読者に見せつけて来るのだ。そう、ゲーム内では、魔王は悪だと書かれていた。しかし実際悪なのは、勇者なのだ。魔王だからそう思うのではない。魔王は何もしていないのに、勇者に一方的に攻められる。それこそ、魔族は悪という先入観で。
最終的にはいくつかの国は魔王軍を信用し、同盟関係を結ぶ。
しかしその中でも勇者たちは魔王の事を最後まで敵対視するのだ。
俺は小説版は四ではない。アニメから入った人間だ。だけど、すぐにはまって、24話を三日ほどで見てしまった経験がある。
今回の映画では、異世界人が勇者側で転生して、その人たちが魔王軍に宣戦布告を仕掛ける、というあらすじだったはずだ。
そう、俺も好きであり、人気な映画だが、
「まさか一葉がこれを選ぶとはな」
正直意外だった。もっと違う物を選ぶのかとばかり思っていたのだ。
「だって私もオタクだもん。このアニメ三クール全部見てるよ」
「流石だな。俺はまだ二クールまでしか見てねえ」
二クールまで見た所で一旦区切りをつけてしまったのだ。そのおかげで暫く見ていない。
「最後まで見てよ、もう! まあでも二クールまでの知識でも面白いからさ」
「それならよかった」
置いてかれる事はないのだろう。
「じゃあ、見るか」
「うんっ!!」
一葉は元気よくうなずいた。




