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失恋し、裏切られた俺の家に、転校してきた幼馴染が毎日ゲームをしにやって来るようになった  作者: 有原優


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第19話 訝しむ幼馴染

るのだから。その翌日のことだ。一葉と一緒に登校しようとしたところ、メールが1件来ていた。

 一葉からではない。それは赤松くんからだった。


『今日、学校でよろしくな!』


 と、書かれていた。それを見て、少しだけ嬉しくなった。味方が一人、一人だけだけど増えたのを感じると、正直嬉しくてたまらないのだ。



 そして、俺はいつもの所で、一葉と会う――その少し前の道に理子と出会った。


「何の用だよ」


 俺は訊いた。なぜここにわざわざ来たのか。

 あいかわらず俺に固執し過ぎだろうが。


「大したことはないわ。ただ、昨日また友達を作ったようね」


 ビクッとした。その事をもうすでに知っているということなのか。


「それで何が言いたいんだ」


 わざわざ待ち伏せなんてマネをして、言う言葉がそれだけなはずがない。


 きっと、何か嫌味たらしいことを言うだろう。言うに決まっている。言わないとおかしな話だ。


 そうでないと、わざわざここに来る必要がない。



 「決まってるじゃない。調子に乗らないでよ」


 そう、俺の額に指をあてる。


「それにあんた、今でもあたしの事好きでしょ」

「なにかと思ったら、挑発かよ。それがどうしたんだよ」

「動揺しないのね」

「むしろ何を当たり前の事を言っているんだ。いや、ここは否定した方がよかったか」


 俺は理子の事は嫌いだが、完全に振り切れてる訳ではない。今も、あれが夢だったのではないかと、思ってしまう。付き合っていた時、確かに理子の事が好きだったのだから。


「そんなこと知らないわよ。あんたが決める事でしょ」

「何を怒りっぽくなっているんだ。今の俺が思いのほか平然としてるからという事か」

「うるさい」


 理子は癇癪を起したように言った。


「なら、ここに来るなよ」

「大丈夫よ」息を強く吐きながら言う。「あなたはきっと絶望に沈むわ」


 そして、去って行った。


 今のは宣戦布告という事でいいのだろうか。

 にもしても、なんてレベルの低い宣戦布告なのだろうか。

 稚拙と言わなければならないだろう。


 だけど、安心した。

 理子の言説があのレベルで。どうやら、あまり考えすぎなくてもいいのだろう。


 それに先程の口論は俺が完全勝利した。そんな感じがするのだ。


 と、いけないいけない。今は一葉を待たせてしまっている。早く一葉の元に行かなければならない。俺はすぐに駆けだした。


「お待たせ」

「あ、やっと来た。遅いよ」

「ごめん、朝の用意に時間がかかっちゃって」

「ふうん、まあ行こ」


 そして、一葉は俺の手を引っ張った。


 学校に着くと、


「浮気相手と登校してるわ」

「最低」


 なんて声が聴こえた。

 こんなのもはや日常茶飯事だ。



 そんな中、「よっ」と、声をかけてくれた人がいた。赤松君だ。


「おはよう」と、俺も声をかけた、


「それが例の信用できる人?」なんて言って、一葉は赤松君の顔を見た。

 

 俺が頷くと、「そうなんだ」と、興味がなさそうに言った。


「恭介君、席に着こうよ」


 そう、一葉が俺の手を引きながら言った。

 それを聞くと、本当に興味がないんだな、なんて思う。


「あ、おい」赤松君が言った。


「私、貴方には興味ないので」


 冷たくあしらうように言った。その言葉には強い敵意のようなものが込められていた。これはどういうことなのだろうか。


「なあ、一葉」

「いいじゃん」


 唇を尖らせながら、席に着いた。


「私あの人あまり信用できない」

「そんな馬鹿な事を言うなよ。悪いやつな訳ねえだろ」

「こういうのはまず疑わないと」


 あーあ、と俺は頭を軽く書く。一葉は疑心暗鬼になっている。そのせいで、周りの人たちを皆疑ってしまっているのだ。それこそ、必要以上に


「大丈夫だから」


 そう言って俺は一葉の頭を撫でた。


「怪しいよ。このタイミングだし」

「大丈夫だ。俺を信用しろ」



 そう言ってもう一度一葉の頭を撫でる。

 一葉は尚も不満そうに俺の顔を見て来る。


「イチャイチャすんな」


 と、赤松君にキレ気味に言われた。

 なんだか最近そんなつもりないのに、いちゃついているなんて、言われることが多い。それはどうしてだろうか。


「すまん」


 俺はひとまず謝罪をした。


「イチャイチャなんかしてないもん」


 一葉はそう、無邪気に言い放った。

 そして、一度目の休憩時間にトイレに行った。すると、「俺もついてきていい?」と、赤松君が言った。俺は「いいよ」と、その言葉に頷いて、


 一緒にトイレに行くこととなった。



「柳さんになんて言われたんだよ」


 開口一番事件の事を聞いてくる。それを早速聞いてくるあたり、よほど興味があると見える。

 俺は、


「そうだな」と頷いた。


「急に振られたんだ。その後あっという間に俺が浮気したと勘違いされているんだ。今日も言われてただろ、浮気相手と登校してるだなんて」


 俺はもう、他人の世界、他人の言葉として無視を続けているが、いつまでそれを続けられるのかもわからない。いつしか怒りで俺が逆上してしまうかもしれない。それに、一葉が切れないかも心配だけど、今のところはまあ、善かに反といったところだ。


「だけど、一葉は浮気相手なんかじゃないし、むしろ先に振ったのはあいつだ。そもそも一葉とは付き合ってないからな」

「え、あれで付き合ってないのかい??」


 驚きの表情を全身で表す赤松君。それは一種のあおりのようにも見えて来る。


「悪かったな」

 ただの幼馴染で。


「いやいや、悪くなんかねえよ。男女の友情は成立する派だぜ」

「珍しいな」

「珍しくないさ。友情が成立しなかったらこの世は面白くない」


 といって彼は笑った。


「面白くない、か」


 確かにそれも一興という話だろう。



 そして、俺たちはそのままトイレを終えた。


「いつも放課後二人で帰ってるだろ。今日俺もそれに就いて来てもいいか?」

「どうして?」

「どうしてって、一緒に遊びたいからだよ」

「たぶんなあ、一葉、あいつが許してくれねえと思う。あいつ俺と二人きりで遊ぶことに固執してるし」

 

 それにもう一つ。

 一葉は赤松君の事を信用できないと言っていた。


 だからこそ、一緒に居たとしても気まずい空気になるに決まっている。

 正直昨日の鏡花と一葉との対面の際も気まずかった。それが、もう一度続くと考えたらいやすぎる。


 「仕方ないなあ」


 彼はため息をついた。

 それも深く。


「まあ、仕方がねえか」


 なんて言って髪の毛を軽く整え、


 スマホを取り出した。


「じゃあ、今度メール送るからちょうどいい日を押しててくれ」

「二人で遊ぶ気か」

「決まってんだろ」

 そして豪快に笑う彼。


 まあ、それでもいいのかもな、なんて思った。


 そして、教室に戻ると、すぐにメールが来た。


『土曜日空いてるか?』


 土曜日、空いている。

 それに、一葉と常に一緒に遊ぶわけにもいかない。嫌という訳ではないが、それでも毎日一緒だと飽きてしまうかもしれない。

 

『分かった、土曜日一緒に遊ぼう』


 俺はそう返信をした。一葉の許可とかを取っている訳ではない。だけど、俺は別に彼女に束縛されている訳でもない。



「なにしてるの?」


 一葉が俺のスマホを覗こうとする。


「いや、別に何でもないよ」


 俺は慌ててスマホの電源を切った。


「なんか怪しいなあ」

「怪しくなんかねえよ」


 勿論怪しいと思われるのも当然であろう。実際隠し事なんて言う物をしているのだから。



 そして、帰り道に一葉が一言。


「あの人は信用したらだめだよ」


といった。しつこいななんて思う。

あの後も休み時間に談笑していたのを見たから嫉妬でもしているのだろうか。


赤松君とは、ゲームやアニメの話で盛り上がった。

彼は意外にもオタクみたいで、サブカル系趣味に精通しているらしい。


だから、俺を撮られた感じで嫌なのだろう。


「大丈夫だよ。彼は大丈夫」


勿論土曜日警戒は必要だろう。

だけど、それは必要ないと思っている。彼の目を見ればわかるのだ。


「一葉、俺を信用しろ」

「そういう話じゃない」


一葉は怒るように言った。


「もう!」


そして、息を吐く。


「とりあえず、今日もゲームしよ」

「おう」


そして、俺たちは家へと帰った。



そして、一葉が帰った後の夜。俺は理子の愚痴を赤松君にメールで送った。


『それは柳さんクズ過ぎるな』

『最低だろ』

『ああ、俺にできる事があったらいつでも言ってくれ。俺に出来る事なら何でもするから』

『ありがとう』


俺はお礼を言う。

感謝だ。


土曜日に赤松君と遊ぶ。それは少し怖いが、わくわくとしている自分もいる。

きっと楽しい物になるだろうと、思い、俺はベッドに寝転がり、そのまま眠りに落ちた。

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