↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/108

第九十三話 廃鉱山ダンジョンへ その二

 乗合馬車は予約のお客さんが居る為、十時頃出発の予定とのことだったので、南側の城門の前で南方面へと帰る荷馬車を待ち受けることにして、屋台で買った果実水を飲んでいると、ユーシン達が歩いてくるのが見えた。


 ユーシンの左手には買い出しの荷物、そして右手に長さ一メートル二十センチくらいで、ロータスさんのハルバードよりも短いが斧の部分が大きく、槍の刃も太い武器を持っていた。


 今にも踊り出しそうなご機嫌ニコニコ顔だ。


 そんなユーシンから買い出しの荷物を受け取り、人目の無い裏通りでマジックバッグにささっと仕舞いながら聞いたところ、武器はロータスが貸してくれたハルバードの初代試作品らしい。


 持たせて貰ったが、柄まで金属製で、両手で持っても無茶苦茶重いし、餅つきで使う杵のように非常にバランスが悪い。


 両手で持って振りかぶってみたが、そのまま支えるのも厳しい。


 そこで振り下ろすのを止めて、見ていた王子にも渡そうとしたが、断られてしまった。


 ロータスさんによると、バランスを取る為に斧の刃に重量減の魔法を付与しようとしたのに魔法付与師が間違えて、斧の刃の部分に重量増の魔法を付与してしまったものだそうだ。


「試作したのは良いが、完全な失敗作として死蔵していたんだがな……」と苦笑していた。


 ユーシンはこの武器、ショートハルバード? が至極気に入ったようで、今回の冒険で使ってみたいとのことだったので、装備していた片手剣を預かりマジックバッグへと収納する。


 使いこなすには技術を要する武器とのことなので、訓練もせずに使えるものなのか疑問に思っていたけれど、ユーシンは片手で軽々と振り回していたので、問題なさそうに思える。


 それから皆で荷馬車を待っていると、良い感じの荷馬車が通りかかったので、南の街、もしくは途中まで乗せて貰えないかと聞いたところ、南の街の五キロほど手前までは行くとのことだ。


 おそらく父親な年上の人から「五人で銀貨二枚(二千円相当)でどうだ?」と聞かれた。


 王子を見るとオッケーサインを出してから、新冒険財布から銀貨を渡してきたので、了承して銀貨二枚を支払った。


 荷馬車の二人はやはり親子で土地持ちの自作農とのことだ。温室で作ったほうれん草なんかをこの街に売りに来たらしい。


 いつもよりちょっと高く売れたとホクホク顔だったけれど、ここ三カ月くらいは騎士団の領内巡回討伐が順延されていて、農場にもゴブリンが出るようになってしまっているらしい。


「一匹二匹ならば問題はないように思えるが、集団となると話は別だ。あいつらはあっという間に増えちまうからな……。お国のほうはゴタゴタしているみたいだが、早く平和になって欲しいもんだ」


 そんな話を王子が真剣な表情で聞いていた。



 カポカポと荷馬車はのんびり街道を進んだ。魔物の気配はまったくないし、風もない。


 冬の日向ぼっこのような心地よさだ。



 お昼にマジックバッグに仕舞ってあったBLTサンドイッチを皆に配った。荷馬車の二人もお昼持参だったので、荷馬車に乗ったまま食べる。


 その後、王子がストランドさんから貰った難易度Aランクの知恵の輪に挑戦したが、外れる気がしない。


 王子に渡すとニコリと笑った後、さくっと外していたので外れることは間違いないらしいのだけれど、どうにも手に余る。


 そんなことをしつつ農場へ向かう道まで荷馬車に乗せて貰って、その後は歩いた。


 街までは一時間くらいとのことだ。


 現在時刻は午後三時だから、日のあるうちに余裕を持って到着出来そうな感じだ。


 なので、新しくブーツを買ったストランドさんのペースに合わせてゆっくり目に歩く。


 ストランドさんはカバンを持つ手を頻繁に代えて、ちょっと重そうにしていたので声を掛けて、何本かの杖をマジックバッグに仕舞った。


 マーク君は途中でユーシンの頭の上にたたっと駆け上がり、眠り猫状態だ。


 そうして四時過ぎくらいに街道沿いの街に着いた。あまり大きな街ではないけれど、それなりに屋台が出ている。


 明日は早朝に出発したいので、屋台の肉串やサンドイッチ、肉饅頭などを購入した。


 シチューについてはユーシンからの提案で、マジックバッグに鍋ごと収納することになり、小さめの寸胴鍋を幾つか購入後、各種シチューを量り売りでの購入した。


 今回のダンジョンには泉などはない可能性が高いので、小樽に封入された保存水も買うことにする。値段は銀貨一枚(千円相当)である。


 一樽約五リットルとのことなので、一人あたり一日一リットルとして二週間分となると十四樽になる。


 一人一日一リットルはちょっと少な目だけど、冬場だし革水筒もあるのでおそらく問題ないだろうと考えて、王子とユーシンにそのことを話していると、


「私の水筒はマジックキャンティーンですし、マジックウェルのスクロールも持っていますから、それで大丈夫なんじゃないでしょうか?」とストランドさんに言われた。


 マジックキャンティーンは魔法が付与された水筒で、ストランドさんの持っているものは、二リットルくらいの大きさだけど、十倍の二十リットルくらい入るらしい。


 マジックウェルは魔法の井戸で、ストランドさんが持ってきたものは使い切りタイプで約百リットル容量の井戸が任意の場所に設置出来る。


 但しどちらも高額アイテムで、水筒は金貨一枚(十万円相当)、井戸は金貨二枚(二十万円相当)とのことである。


 お店の人から、保存水は少しだけ鼻にツンとくる臭いがするとの話を聞いて、取りあえず一樽を購入して、借りたコップに注いでみたところプールのようなカルキ臭がする。


 そのまま飲んでも無害だけれど、レモン果汁を加えると飲みやすくなる。料理に使う場合は一度沸騰させてから使うと、臭いは抑えられるとのことだ。


 そんな説明を聞きつつ、皆で保存水を回し飲んだが、皆「うへえ顔」だ。


 抑えられるということは、完全には消えないということなのだろう。


 それ程高いものではないけれど、マジックバッグに入れてしまうのだから革水筒、もしくは普通の樽を買って水を汲んだほうが良いのかも……と思っていると、王子に肩を叩かれた。


 王子は何か詠唱するように口をもにょもにょと動かした後、ピコーン杖を使った。


 ピコーン杖の光が強い。そしていつもなら七色に光るところ、今回は青一色、群青色だ。


 浄化はコップ一杯という話だったけれど、ピコーン一回で臭いは消えてしまったらしい。


 王子が樽の中の水の臭いを嗅いだ後、オッケーサインを出している。


 そこで一口飲んでみたところ、臭いがない。


「浄化の杖か、うん、それがあれば完璧だねえ」お店の人からそう言われて、王子が晴れやかに笑っている。


 保存水の臭い問題は早くも解決したようだ。


「ダイゴ、ナイス!」オレがそう言いながら、ユーシンと二人で王子に親指を立ててみせると、王子は交差させた両手の親指を立ててダブルグットサインをして笑顔である。



 パンは明日の朝、焼き立てのもの買うことにしていたのだが、ユーシンからパンは作れるよ。と言われた。


 パンの作り方が『冒険料理大全』に載っていたらしい。


 ロータスさんは野外だと発酵させるのが難しいようなことを言っているけれど、ユーシンは自信満々である。


 そこで一度キャンプで作ってみようとの話になり、準強力粉(きょうりきこ)とイーストを購入することにする。


 オーソドックスなパンを作るのに必要な材料はあとは塩と水だけらしい。


 それからも『冒険料理大全』で料理知識を仕入れたユーシンと、料理名人なロータスさんのお勧めの食材や調味料を購入した。


 乾燥パスタは、作るときに青銅製のダイスを使っているものは麺の表面がザラザラになってソースと良く絡むらしい。茹で上がりも早いのでキャンプならこっちがお勧めとのことである。


 冬場は収穫出来る野菜が少ないとのことで、キャベツとサツマイモ以外は、ダンジョン産のトマトやナス、カボチャなんかを購入した。


 温室栽培で話の出たほうれん草も売っていた。これは普通のほうれん草ではなくて、ちぢみほうれん草と言うらしい。葉っぱが、くしゃっと縮んでいて肉厚だ。


 お店の人によると、甘くてクセがなく美味とのことなので、これも購入する。


 その他、シチューの為の小袋入りのスパイスセット、ブーケガルニや、肉の臭みを取ってうま味を引き出すための香草、タイムやローズマリー、セージなども買った。


 ストランドさんから、マーク君はササミ肉が好物との話があり、チーズと共に購入した。これはちょっとお高めなダンジョン産のシチメンチョウだ。


 最後にロータスさんからの提案があって、かまど用の耐熱レンガとマジックバッグにギリギリ入る大きさの鉄網、さらに鉄板を購入してみた。


 そんな買い物を済ませてから宿を取り、宿の夕食、クリームシチューを食べた後、早めの就寝となったが、オレとユーシンは宿の裏で、一応日課な素振りをすることにする。


 王子もピコーン杖で素振りに参加した。


 王子は杖を横八の字で回したり、そこからスナップを利かせて打擲ちょうちゃくする動きを見せたりと流れるように動いている。


「ダイゴ、杖術みたいなものも訓練していたの?」と聞くと、首を横に振って笑っている。


 そこで試しに立ち合って貰うと隙がない。


 オレの打ち込みを最適な角度で杖で受け流し、逆にフェイントを使って、思わぬ方向から攻め込んできたりする。


 杖を両手で持ったり片手にしたりと変幻自在な動きだ。


 そんなオレ達を見て、ユーシンも参加したいと言ってきたけれど、ユーシンのショートハルバードは本身なので流石に危険過ぎる。


 木剣なら良いよ。と言ったのだが、そういうことではないらしい。


 オレ達に断られて、ちょっとふてくされていたけれど、その後ショートハルバードでスラッシュを繰り出していたので、早速、新しい武器に馴染んだようである。


乾燥パスタを成形するためのダイスにはテフロンダイスとブロンズダイスがあります。

ブロンズダイスのもののほうがちょっと高いです。

個人的にはペペロンチーノはつるつる麺になるテフロンダイス、重めのソースのものはソースが良く絡み、もっちりとした食感のブロンズダイスのパスタを使うことが多いです。

ハクブン達の居る異世界ではテフロンは発見されていないとは思うのですが、何か代わるものがあるんだと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。