第八十話 オーガキング討伐行 その六
後でシニフィエに聞いたところ、レベルアップと言っても冒険者ギルドのギルド長、フラドさんが言っていた「一瞬後にはパリッと新品」とならなかったのは、オレ達が吸収した魔素があまりにも大きかったことが原因とのことだ。
オレが気を失う前に、シニフィエはオーガキングの転移魔法の収納に続いて、オーガキングの存在そのものを魔力に変換してクツシタンに収納しているらしいと言っていた。
けれど、オーガキングは転移魔法の発動に際して、自分の魔力だけではなくダンジョンの魔力を利用していたようで、クツシタンやオレ達に流れ込んで来たのはダンジョンの巨大な魔力だったらしい。
気を失ったというよりも昏倒した。と言ったほうが正確な状態だったようで、オレと王子、そしてユーシンが気付いたのは、オーガキング討伐から半日後のことだった。
安全地帯となった七十階層にはハクシンさんやライガさん、カトーさんやユータスさん達黎明の暁光メンバーも居て、オーガキングのお宝の搬出作業をしていた。
オレ達の状態について、シニフィエからは問題はないと言われていたようだが、オレ達の目覚めたことで、ケイトさんやサイエンさん達、ハクシンさん達もほっと一安心といった感じだ。
「身体の調子はどうだ? 問題ないか?」
ケイトさんに聞かれたが、少し頭がぼおっとしているけれど、特に問題はなさそうだ。
王子は眠そうにしていて、ユーシンはお腹が減ったとのことである。
確かにお腹が減った
マジックバッグから肉串を取り出して、王子とユーシンへと配り、三人でぱくつきながら、ケイトさんからその後の経緯を説明して貰った。
オーガキングとオーガソルジャーは、オレ達が気絶した直後に討伐が完了したらしい。
オーガキングのドロップアイテムは魔剣二本と宝玉二つ、その他に宝箱が三つ出現したとのことである。
オーガキングの魔石は、クツシタンへの収納によって割れてしまったらしい。
ケイトさんに三つの破片を見せて貰った。
炭のように真っ黒な魔石は、魔力ゼロの出涸らし状態とのことである。
なので入手した魔石は、サイエンさん達が討伐したオーガソルジャーの魔石一個だけとなった。
そして、クツシタンはオーガキングの転移魔法とオーガキング自身、そしてダンジョンの魔力の収納によって、全身が灰色っぽいピンク色の満タン状態になっていた。
そんなクツシタンを見て、ユーシンは「ありゃー」と言って、少し困ったような顔をしている。
確かに、呆気ないほどあっさりと帰還のための魔力が貯まってしまった。
レベルアップは嬉しいけれど、素直には喜べない。
王子もまたどこか寂しげにクツシタンを見ていた。
そんな話をした後、マジックバッグに残りのお宝を収納した。
七十階層からの帰路は、ダンジョンの魔力の一部がオレ達によって収納されてしまったことも影響したらしく、魔物の出現率が減少していたようだ。
また、黎明の攻略メンバーが先行して魔物の討伐を行ってくれたので、問題もなく四日で帰還することが出来た。
魔物相手にレベルアップの成果を試してはみたかったのだが、どうも力の加減が難しくて、うまく使い熟せていないような感じだ。
オレ達三人は基本的な能力値が大幅に上がった。
今なら三人とも泥岩どころか普通の石ころでさえも握りつぶせそうだし、オレは大太刀を軽々と振り回せようになった。
その他、オレは素早さと第六感、シックスセンスと言うのか、人やものの気配、魔力やその他、目には見えないものをはっきりと感じる力がついたようだ。
ユーシンはパワーが格段に上がった。
お試しということで、ダンジョンの立木をずぼっと引っこ抜いていたから、相当なものだと思う。
あと、オレに対してジャンケン無敗状態が続いている。
どうやらちょっとだけ先のことが判るようになったらしい。
シニフィエによると、そうしたスキルは存在しないから、おそらくギフトとのことだ。
王子は魔力量が増大し、一度に飛ばせる魔力の矢が五本になったし、矢の輝きも増している。
あと、シニフィエとのリンクが強化されたらしい。
それが関係しているのか、ユーシンのジャンケン連勝記録を止めたのは王子だった。
王子がユーシンとジャンケンをすると、二人ともジャンケンポンのポンが出ない。
ユーシンは百面相で次々に何を出すか変更しようとするし、それに対して王子も同じく難しい顔をして、睨めっこ状態になる。
王子のこのスキルは、予測でも予知でもなく何か別のものらしいのだが、相手の心を読んでいるのか、自分が出すグーチョキパーを鑑定しているのか、シニフィエにも王子自身にもよく分からないとのことだった。
そしてサイエンさん達もレベルアップした。
オレ達と違い、普通のレベルアップのようだけれど、オーガソルジャーとオーガキングという格上の魔物相手となったため、かなりの能力値の上昇となったとのことだ。
「実績さえ伴えば、Cランク昇格も可能なんじゃないか?」
カトーさんにそう言われて、すごく嬉しそうにしていた。
宝箱の金貨はおよそ千枚。一億円相当だったようだ。
黎明との山分けとなるので五百枚、オレ達とサイエンさん達は九人だから、一人当たりで五十五枚とちょっと。五百五十万円相当になる。
魔剣や宝玉については鑑定をした後に、どう配分をするのか決めるとのことだ。
こっちが高額査定となれば、現在はケイトさんから貸して貰っている状態な大太刀を購入出来るかも知れないので、ちょっと期待している。
黎明の暁光の東のダンジョン、オーガキング討伐の遠征は終了となるが、干し柿の件もあるので、お祭り終了まではこの街に滞在するとのことだ。
魔王国のシニフィエの分霊を介して月岡君へ連絡し、ドラゴンの魔石相当の魔力が貯まったことを報告したところ、出来るだけ早くこっちに来て欲しいとのことだったので、オレと王子、ユーシンとケイトさん、そしてシニフィエの五人で魔王国へと向かうことになった。
出発は二日後、ザイデルさんに依頼している王子のための「破邪のお守り」、トリプルチャームのネックレスの受け取ってからとなる。
馬車を乗り継いでその後は船旅、一カ月ちょっと掛かるとのことだ。
色々とお世話になったサイエンさん、オウルさん、ベルさん、ジョウンさんの四人とは、この街でお別れとなる。
帰還すれば二度とは会えない。
そしてそれは王子とユーシンもそうだ。
サイエンさん達との出発の前日のお別れ会は、どうにも悲しくて仕方がなかった。
そして出発の日の朝、西のダンジョン前で渋柿収集にやって来たトマス君とジョイナス君、タイレン君、エリザさんの四人にもオレ達が魔王国へ行くことを話してお別れをした。
四人には詳しい話はしなかったけれど、オレ達のどこか沈んだ様子に干し柿を差し出して、
「それじゃあ、またね。元気でね」
トマス君からは、笑顔でそう声を掛けられた。
「元気がない時は空元気を出すものよ」
エリザさんからは、そう言われた。
オレは無理に笑顔を作り「うん、またね」と答えた。
そうして魔王国への旅、帰還への旅へと出発した。




