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第七十九話 オーガキング討伐行 その五

今回はマルタンがオーガキングと戦います。

なので閑話の方に「その五」として、「第七十二話 西のダンジョンその八」の抜粋とハクブンの大ロボ「マルタン」の作画を挿絵にしてみました。

相変わらずペイント基調で大した絵ではないのですが、ご参考までに……

 今日は六十九階層までの移動してクランマスターのライガさん達、黎明れいめい暁光ぎょうこうの攻略メンバーと合流の予定だ。


 ワームホールは入り口が五十七階層。出口が六十九階層となる。


 五十八階層と五十七階層はオーガが出現するが、かなり危険な相手らしく、回避優先での移動となる。


 ワームホールの時間経過は六時間と昨日よりもさらに長い。


 しかし五十七階層から六十九階層までダンジョンを進むとなると、オーガやハイオーガのグループと戦いながらとなるので、一日や二日ではたどり着けないから、それでもやっぱりワームホールはお得で便利なもののようだ。



 無事に五十七階層のワームホールの入り口に到着し、六十九階層まで移動すると、ハクシンさんの他、五名の黎明のメンバーが居た。


 ワームホールの出口の安全確保をしてくれていたらしい。


 六十九階層は夜のステージだ。しかしそんなことよりも一瞬の移動なのに、いきなり空腹感に襲われた衝撃が大きい。


 混乱したユーシンがワームホールを戻ろうとしているのを慌ててハクシンさんが首根っこを掴んで止めている。


 王子に時間を聞いたところ親指を曲げて四本立てた。四時だ。


 十時頃に入ったから六時間。お昼を食べそびれてしまった感じになる。


 七十階層への入り口のある広場までは十五分くらいとのことで、すぐに移動を開始した。



 広場にはライガさんや黎明の攻略メンバー八名が居た。


 クランマスターのライガさんとは初対面だ。


 確かAランクの冒険者という話だった。


 イメージ的にはバリバリの武闘派、ライオンの獣人系の人だと思い込んでいたのだけれど、背は高めだけれど、痩せひょろっとした感じの人だった。


 聞けば魔法戦士らしい。


 得意なのは水魔法と雷撃魔法で刺突武器であるレイピアと短剣の二刀流を使うとのことである。



 遅いお昼となったバインミーを食べながら、ライガさんとハクシンさんから現在の情報を教えて貰った。


 オーガキングの取り巻きは現在一匹。


 上位オーガ、オーガソルジャーが一匹、リスポーンしているとのことだ。


 取り巻きを全部倒すと、一匹は一時間くらいでリスポーンをしてしまうらしく、オーガキングだけとの戦いとは行かないようだ。



 ケイトさんによると、オーガソルジャーが一匹ならば、シニフィエとベルさんのバフ魔法の重ね掛けをしたサイエンさん達で充分に対応可能とのことだ。


 そこでサイエンさん達はケイトさんとマルタンがオーガキングと戦っている間、オーガソルジャーを押さえ込む役目となった。


 オレと王子とユーシンはオーガキングの転移魔法の収納のために、シニフィエの魔法で不可視状態での待機となる。



「あまり人数が多いとオーガキングを警戒させてしまうから、六十九階層で待機していてくれ。遅くとも一時間後には戦いが終わっているだろうから、一時間経ったら降りてきてくれ」


 ケイトさんがライガさんやハクシンさん達、黎明の暁光のメンバーとそんな話をした後、七十階層へと侵入した。



 七十階層は夕暮れステージだった。


 広場でオレがマルタンのパーツをマジックバッグから取り出し、ケイトさんが組み立てた。


 マルタンの左手は木球に戻っていて、サイエンさんがバスタードソードを背負っているように、背中に丸太が装備されている。


 ケイトさんに理由を聞くと、「格好良いから」とのことだった。


「バフ切れまでの二十五分の短期決戦だ。転移されないように一気に叩く。そんな戦いをするからな」


 ケイトさんの言葉に皆で頷き合う。



 ベルさんとシニフィエにパワーの重ね掛けバフ魔法を掛けて貰った後、オレと王子とユーシンの三人にはシニフィエから気配遮断と、不可視の魔法を掛けて貰った。


 相手を攻撃したり、喋ったりしなければ一時間程度は効果が持続するとのことだ。


 そんな魔法を掛けて貰うと王子とユーシンの姿どころか気配までも感じられなくなっていた。


「オーガキングに対する位置取りはこっちで指示する。決して喋るなよ」


 シニフィエから重ねて注意があった。


 そうして皆で、オーガキングとオーガソルジャーのいるコロッセウムへと向かった。



 コロッセウムの中心部にはオーガキングと取り巻きのオーガソルジャーが居た。


 オーガキングは半裸で赤黒い肌。口からは太く尖った牙が二本生えていて、頭の横にはねじ曲がった金色の角が二本ある。


 東のダンジョンの二階層で遭遇した時は、周りに比較対象となる木々があったから、その大きさに圧倒されたけれど、このコロッセウムだと小さく感じられた。


 隣に居るオーガソルジャーはオーガキングよりも小さいが、オーガキングが身長五メートルなのだから、オーガソルジャーも身長三メートルくらいはあるはずだ。


 両者は共に大剣を右手に持っているけれど、特に警戒している様子はない。


 ハイオークの雄叫びのようなものもなく、リラックスしている感じだ。


 オレ達はケイトさんに操られたマルタンを先頭にオーガキング達へと近づいて行った。


 サイエンさん達はオーガソルジャーへと右に回り込みながら接敵した。


 オウルさんがフォートレスを発動して、オーガソルジャーの攻撃を止めた。


 そこにサイエンさんの黒剣の攻撃。これは避けられてしまったけれど、続いてジョウンさんの矢、そしてベルさんのファイヤーボールの攻撃が当たった。


 大きなダメージにはなっていないようだけれど、危なげなく戦う四人の様子にほっとする。



 そしてマルタンと戦うオーガキングは同じ位の身長だけれど、ボディビルダーのように筋肉が盛り上がっていて、横幅がある。


 しかし、オーガキングは自分と同じくらい大きな敵と戦ったことはないようで、距離を取って、探るような目付きでマルタンを見ている。



 先制攻撃はマルタンだった。


「丸太のマルタン! マルタンパンチだ」


 ケイトさんに指示に、マルタンが腕をぐるりと回して、オーガキングを攻撃する。


 オーガキングは後ろに下がり、マルタンのパンチを避けた。


 しかし初見の相手ということで警戒をしているのか、反撃はなかった。


 間合いを取って様子を見ている。



「丸太のマルタン! マルタンパンチだ」


 今度のパンチは下から振り回すような攻撃だ。オーガキングは難なく避けた。



「丸太のマルタン! マルタンキックだ」


 マルタンのキックも空振りに終わった。



「丸太のマルタン! ドリルパンチだ」


 ケイトさんの指示に、マルタンの右手のドリルが回転し始める。


 苦し紛れの大技、必殺技だ。


 回転するドリルを警戒したオーガキングに距離を取られてしまった。



 オーガキングはケイトさんの言葉が分かるようだ。ケイトさんの指示を聞くと、その言葉に反応している。


 これはかなり不利なんじゃないかと思う。


 そもそも人型ロボットというアイデアそのものが大失敗だったような気がしてきた。



 オーガキングの大剣の攻撃に対して、ケイトさんが「マルタンガード」の指示を出す。


 マルタンは腕を上げてガードするが、右手のドリルがばっさりと切り落とされてしまった。


 オーガキングが、ニヤリと嗤ったような気がした。



 オーガキングは大剣を肩に担いで、マルタンに近づいて来る。


 ゆっくりとではあるが、警戒してのゆっくりではない。


 どうやらマルタンを雑魚キャラ認定したらしい。


 オーガキングがマルタンを見るその目は、マルタンをさげすんでいるように見えた。



「丸太のマルタン! マルタンパンチだ」


 ケイトさんの指示に、オーガキングがすかさず右手を頭の前にガードするように動く。


 しかしここで思わぬことが起きた。


 マルタンが繰り出したのはマルタンキック、しかもいきなり急接近しての膝蹴りだったのだ。


 オーガキングのお腹に膝蹴りがクリーンヒットし、さらに左手の木球の振り下ろし攻撃がオーガキングの頭に決まる。


 今度は指示なし攻撃だ。


 ケイトさんは悪そうに、にやりと笑い、対してオーガキングの顔には驚愕の表情が浮かんでいる。


「丸太のマルタン! ロケットドリルだ」


 マルタンの右手のドリルは、いつの間にか復活していた。


 元々、バラバラ状態のものを魔力の糸でくっつけているだけなので、またくっつけだということなんだろうと気付く。


 ドリルが唸りを上げて高速回転し始めたところで、間合いを取るべく後ろへと飛ぼうとしたオーガキングが転んだ。


 転び方からして、オーガキングの足首にケイトさんが魔力の糸を絡ませていたらしい。


 そこに「丸太のマルタン! マルタンプレスだ」とケイトさんの指示が飛んだ。



 同時にシニフィエからの指示がオレ達にあり、オーガキングの転移魔法をクツシタンに収納するため、三方から取り囲むような形で位置取りをする。



「丸太のマルタン! マルタンロックだ」


 マルタンはプレス攻撃の後のケイトさんの指示に、膝と肘を曲げてオーガキングをがっしり押さえ込む。


 オーガキングの顔に焦りが見えた。



「今だ!」


 シニフィエからの指示で、オレ達はオーガキングに近づき、オーガキングが発動し始めた転移魔法をクツシタンへと収納する。


 オーガキングに向かって翳した右手から、大きな魔力がクツシタンへと流れ込む。


 クツシタンが眩しく光る。


 その光りが、オレをも光らせているようだ。その眩しさに目を瞑り収納を続けた。


 五分とも十分とも思える時間が経ち、脈動するようなエネルギーの奔流が更に増した。


 右手に大きな穴でもあいたような痛みを歯を食いしばって耐える。


 そのまま気が遠くなって、どこか人ごとのように感じられてきた。



 気がつくと自分の身体を見下ろすような形で空中に居た。


 ふと気配を感じて目を上げると王子とユーシンも近くに居るような感じだ。



 三人で眼下の自分達を見下ろす。


 オレと王子とユーシンの身体がクツシタン同様に光り、収納は続いている。


 マルタンに押さえ込まれたオーガキングは、一回り以上身体が小さくなっている。


 このまま討伐出来そうな感じに少しほっとする。



 シニフィエの声がした。


「転移魔法の収納に続いて、オーガキングの存在そのものを魔力に変換して収納しているらしいな」


 ――でも、そんなことって可能なの?


 オレがそう思うと、


「転移魔法は自分の身体に掛ける魔法だから、その繋がりが続いたようだ。放出魔素や魔石どころではない魔力の収納になるぞ」


 声が続いた。



 オーガキングは更に小さくなっている。


 瀕死状態なのか、ぴくりとも動かない。


 ケイトさんがそれを見て、サイエンさん達の助太刀に向かった。


 サイエンさん、ベルさん、オウルさん、ジョウンさんの四人は、全員無事で怪我もないようだ。


 オーガソルジャーには数本の矢が刺さり、手足からも出血している。


 ジョウンさんの麻痺の矢での攻撃、そしてベルさんのデバフが効いているのか、オーガソルジャーの動きに精彩がない。


 ケイトさんの参戦に気を取られたオーガソルジャーの大きな隙に、サイエンさんがオレに教えてくれた肩担ぎからの切り下ろし攻撃を敢行した。


 オーガソルジャーの首元に攻撃が決まると、オーガソルジャーは手にしていた大剣を落とした。


 このまま無事に討伐出来そうだと安心する。



 そこにドクンと大きな衝撃を感じた。


「レベルアップだな」


 シニフィエの声だ。


 その声を最後にぷつりと意識が途絶えた。


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