第七十三話 西のダンジョン その八
クランの食堂では、サイエンさん達と疲れた顔のケイトさんが談笑していた。
そこでまずはゴーストのクツシタンへの収納が可能だったことと、ゴーストを生み出す親玉格を発見し、同じくクツシタンに収納したことを報告をした後、皆で食事となった。
肉祭りは昨日で終わりだったようで、今日はシチューがメインのバイキング形式だ。
ベルさんが仕入れた情報によると、もしもゴーストそのものを収納出来るような魔道具があったとしたら、実体のある魔物の放出魔素とは異なり、その分ダンジョンのリソースが不足してしまうことになるから、リスポーンしない可能性が高いらしい。
ゴミとして回収したペットボトルを原料となるペレットに加工して、再びペットボトルにするリサイクルのようなことをダンジョンは行っているのに、ペットボトルをゴミとして出さずに、別な形で利用する感じになるみたいだ。
そして親玉ゴーストについては、ゴーストの生産? に問題が発生したために、ダンジョンが急遽製造装置を設置したような感じじゃない? と言われた。
つまりゴーストの親玉も収納してしまったことで、第一階層は東のダンジョンの第一階層と同じように、ゴーストの出現がない、より安全な場所になるかも知れないとのことらしい。
尤も、親玉ゴーストは再度出現する可能性がある。とのことである。
「結構重要な話だから、レポートにまとめてクランに報告だな」
サイエンさんにそう言われたが、オレには無理そうだ。ちょっと困ったぞと思っていると、王子が笑顔で引き受けてくれた。
干し柿の販促会議に出席したケイトさんによると、干し柿は「迷空の踏破者」が魔道具での試作に成功したらしい。
近々ダンジョン都市でお祭りがあるので、そこで売り出す予定になったとのことである。
そしてオーガキング討伐計画については大筋で決定したらしい。
出発は三日後、討伐組はオレ達とサイエンさん達で、七十階層まではカトーさんとユータスさんが道案内として同行してくれるとのことである。
往路は、四カ所のワームホールを使って四日の予定で、往復八日から九日。
そのための食料品などの輸送と、討伐後のお宝の搬出にオレのマジックバッグを利用したほうが良いだろうとのことで、クランと守秘契約をして貰いたいたいと、ケイトさんからの申し出があった。
書類はもう用意されていたので内容を聞いてからサインした。
オーガキングには取り巻きとしてオーガの上位種が五匹程度居て、リスポーンには二、三日掛かるとのことだ。
そこでユーシンの叔父さん、ハクシンさんがクランメンバーを率いて、今も七十階層にいるクランマスターのライガさんと合流、オレ達が到着する前日に、取り巻きの討伐をしてくれる段取りとなる。
オーガキングが転移魔法を使う程には追い込まずに逃げるような形になるけれど、何度も戦っているので、そのあたりは問題なく加減出来るらしい。
オレ達はオーガキングを討伐するケイトさんのサポート役として、サイエンさん達はオーガキングの陽動、オレ達三人はクツシタンへの転移魔法の収納を担当し、可能ならばオーガキング討伐後の放出魔素の収納をする予定となる。
しかしオーガキングは身長五メートルもある。
オウルさんがフォートレスで止められるとしても片足だけだろう。
そこでふと思い付いて、ケイトさんのオーガキング討伐計画では、人型の巨大ロボみたいなものを作って、魔力の糸で操るのかと聞いてみたところ、
「巨大ロボ? なんだそれは?」
と興味津々と言った感じで聞いてきたので、オレが知っている巨大ロボについて説明をした。
人が乗って操縦したり、魔道具のようなもので遠隔操作したり、命令したりする。
巨大ロボは意のままに動いて、敵を撃破する。
なんて話をすると、
「ちょっと絵を描いてみろ」と言われた。
巨大ロボか……
上手く描ける自信がない。
正直よく分からないのけれど、そんなオレよりもケイトさんのほうがよく分からないはずだ。
そこで巨大ロボの想像図を描いてみることにする。
上半身は逆三角な感じの台形にして、腕はぐるぐる回るようにした、
そして顔だ。
今回はV字型の一本眉毛にへの字口の強面にしてみたところ、出来上がった巨大ロボはかなり強そうに見える。
うん、悪くはない。
ついでに大きさの比較対象の棒人間を描けば完成だ。
オレの描いた絵を見て、王子とユーシンがすごく嬉しそうにしている。
「ちょっと大きすぎないか? ダンジョンだぞ」
ケイトさんにそう言われて、棒人間を消して大きく描き直す。
巨大ロボは身長四、五メートルくらいの大きめロボになった。
「手はないのか? これはドリルなのか?」などと聞かれて、
「手は描くのが難しいし、ドリルのほうが強いです。何しろ飛びますからね。左手は鉄球です。こっちも強いですよ」
と説明をすると、
「ロマンがあるな……計画変更だ」
そう言って、にんまりと笑った後、
「設計図を作るからこの紙をくれ」と言って、オレの描いた大きめロボの絵を手にして自室へと帰っていった。
* * * * * * *
翌日、サイエンさん達はザイデルさんの店で魔法を付与して貰うとのことで、午前中は別行動となった。
オレ達はケイトさんから、まずは木材を購入をしたいとの要望があり材木屋に行った。
ダンジョン都市にある材木屋には四角く加工された木材が積まれていたけれど、こっちは新しいダンジョンの建設ブームもあって、すべて売約済みとのことだ。
近くの森で切り出している丸太は街道沿いの製材所にあるということなので、場所を教えて貰って製材所に行き、無事丸太を購入した。
丸太はマジックバッグに入るサイズに限定されるので、直径二十センチくらい、長さ二メートルの細めのものを全部で三十本購入。
結構な数量に制作する大きめロボもどきのサイズを聞くと、オーガキングと同じ五メートルくらいで考えているようだ。
「荷馬車の手配はどうしますか?」
ケイトさんがお店の人にそう聞かれて、
「こっちで適当に運ぶから良いよ」と、誤魔化した後、
ケイトさんが魔力の糸でひょういひょいと持ち上げ、オレは両手でマジックバッグを広げているところに持ってくる。そんな感じで次々に丸太を収納した。
それからまた街へと戻るとお昼近い。
急いでクランへと帰り、サイエンさん達と合流した。
オウルさんの盾、ジョウンさんの弓と弦には魔法が付与されて、ベルさんの杖の魔石も一段と大きくなっていた。
三人はにこにこと笑顔が止まらない。
そんな三人を見て微笑んでいるサイエンさんも、鎧への付与を考えていたらしいのだが、どうせだったら新しい鎧での魔法付与にしようと考えを改めたようで、取りあえずは貯金しておくとの話だった。
それから皆でお昼を食べようという話になり、オウルさんとベルさんお勧めのパスタ屋に行くことになった。
二人のお勧めは、お店の名物となっている「カルボナーラ・スパゲッティー」だ。
値段は銀貨二枚(二千円相当)とちょっとお高いけれど、絶対にお勧めとのことで、全員で頼んだ。
食べるときにスプーンも使おうをしたら、ケイトさんに「ハクブンはお子様か?」と言われた。
詳しく聞いてみると、パスタを食べるのに大人はフォークだけ、スプーンも使うのは上手く食べられないお子様とのことだったので、慌てて止めた。
カルボナーラ・スパゲッティーは太めの生パスタ、ゴロッとした角切りのベーコンとマッシュルーム入りで濃厚且つクリーミー、黒胡椒がぴりりと効いていて、とても美味しい。
王子とユーシンも大満足の笑顔だった。
アトラスのパスタマシンで生パスタ、ベーコンも手作りしてカルボナーラを作ったりしていたのですが、その後厭きて、パスタマシンでうどんなんかを作っていました。確かそんなレシピ本が出版されてます。
ついでに書いておくと、ペペロンチーノの追加具材でお勧めなのがアンチョビとキャベツです。キャベツは包丁ではなく手で千切ったほうが素敵ですが、炒めすぎると、しんなりし過ぎてしまうので注意、芯の部分は薄切りにして、ちょっと早めに炒めると良いと思います。
個人的には赤唐辛子を焦げるまで炒めると香ばしさが増すように思えるのですが、このあたりはお好みで……
あとはタコとほうれん草もお勧めです。
こっちもタコは火を入れすぎると縮むので注意です。




