第二十一話 武器店めぐり
オレとユーシンはギルドと同じ南地区にある武器店に向かった。
武器店は表通りではなくて、一本道を入った裏通りのほうに数軒が固まってあった。
大きな店ではなくて、個人がやっているようなお店ばかりだ。
そんな店の一つに入ると、当然品揃えも少なくて、何種類かの剣が店のカウンターの奥に数点ずつ飾られているだけだった。槍は売っていない。剣専門の店らしい。
その他にはナイフや包丁なんかも売っていた。
ユーシンが欲しがっている訓練用の木剣も売っていたが、ユーシンが店員の若い男の人に値段を聞いたところ大銀貨五枚(五万円相当)とのことだ。
確かに頑丈そうな金属の鍔、――ユーシン曰く、ガード――が付いていて、刃の部分に相当する長さが五十センチくらいあり、良く出来たもののような気がするけど、訓練用だよ? 一体誰が買うのか? と思えてしまう。
ユーシンにとっては、買えない金額ではないのだろうけれど、さすがに考え込んでいる。
本物の剣のほうは金貨レベルだった。次々にあれは幾らですか? と聞くオレに、苦笑しながら店員さんが教えてくれたものの中には、金貨八枚(八十万円相当)なんて高級品まであった。
ロングソードと言うものなのか、両刃の直剣で、刃渡りが一メートルくらいありそうだ。
それよりも刃が半分くらいの短いタイプもあった。名前について聞いたところ、短い方がショートソードで、長い方はロングソードであっているらしい。
こっちは新人四人組の男の子が持っていたものと同じっぽい。値段は金貨三枚(三十万円相当)だ。
片刃のナイフがそのまま大きくなったような剣はファルシオン、刃の長さは両者の中間くらいの長さ、七十センチくらいだが、幅広の刃なので重そうだ。
柄の長さからして片手で使うものみたいだけど、オレには絶対に無理そうだ。値段は金貨五枚(五十万円相当)とのことである。
持ち手のところに指をガードする覆いのようなものが付いた片刃の曲刀がカットラス、刃の長さはファルシオンよりも短くて、ショートソードと同じ五、六十センチくらいで、海賊なんかが持っていそうな剣だ。値段はファルシオンと同じ金貨五枚(五十万円相当)だ。
オレも、王子の持っているような短剣は無理にしても、ナイフくらいは欲しいとは思うのだけれど、刃が七、八センチしかないものでも大銀貨三枚(三万円相当)だった。
カッターナイフくらいは持っていれば、便利だったのだろうけど、ペンケースにはデザインナイフしか入れてなかった。そのデザインナイフだって、こっちに来てから初めて使ったようなものだし、仕方が無いことなんだろう。
そこで、中古の武器は売っていないんですか? と店員の人に聞くと、オレ達が首からぶら下げている冒険カードに目を落としてから、買い取りはしているけれど、販売はしていないよ。と言った。
命に関わるものだから、鍛冶屋に出してキチンと整備をしてとなると、中古と言っても研ぎ減りした新古品のようになり、商売としてのうま味がないからね。と言うことだ。
そして、あまりお薦めは出来ないけれど訓練用の木剣ならば、まあ大丈夫か、と言いつつ、中古品を主に扱っている店が南の城壁近くにある。ということだったので、店の場所を教えて貰い、お礼を言って店を出た。
教えて貰った中古の武器店は、そこそこの大きさで一軒だけだった。
剣や槍などが、台の上に置いてあって品数は多いのだが、どうも買い取ったままで売っているらしく、錆びていたりと状態の悪いものが多い。
店員さんによると、自由に手に取って見て良いということだったので、鞘から抜いて良く見ると、刃の部分も潰れていたり欠けていたりしている。
なかには鞘から抜けそうにないものまであった。
ユーシンのお目当ての訓練用の木の剣は、先程の店の新品よりも長さが十センチほど短く欠けたものが売っていて、大銀貨二枚と銀貨五枚(二万五千円相当)とのことだった。金属製の鍔、ガードなしだから高いように思える。
ユーシンもちょっと考え込んでいて、これを買うならばちょっと刃が曲がっていて、鞘に根元までキチンと入らないけれど、本物のショートソード、大銀貨八枚と銀貨六枚(八万六千円相当)のほうが良さそうだ。などと言っている。
流石にそれはどうかと思ったので、明日ギルド長との面談の約束があるので、相談してみない? と提案した。
ユーシンは買う気まんまんだったようで、その後もほかの剣を手にとっていたが、結局もう少し考えてみることにしたようだ。
それから二人で避難所へと帰ると、王子はまだ帰ってきていなかった。
食事の時間になっても帰って来なかったので、炊き出し処のおばちゃんに事情を話したところ、王子の分のスープを貰うことが出来た。
今日のスープは赤。トマトスープ風で、例のもきゅもきゅとした歯ごたえのある硬貨を丸めたようなパスタ入りだ。
おばちゃんの一人が、チーズをおろし金で擦ってトッピングしてくれて、ユーシンはちゃっかりお替わりの分も貰っていた。
マジックバッグがあるから、王子を待って三人一緒に食べたいところだが、木の椀を返却する必要がある。
王子の分はマジックバッグに「収納」のキーワード付きで収納し、ユーシンと二人でスープを食べた。
食事を食べ終えておばちゃん達に、食事のお礼と「今日も美味しかったです」と言って木の椀を返し、ユーシンと今日見た武器についての話をした。
オレは「高いね」とちょっと諦め口調で言う。新品の木剣ならば一応買えるだけのお金を持っているユーシンも「うん、思っていたよりも高い。でも」と考え込んでいる。
ユーシンにどんな武器を使っていくつもりなのか? と聞いたところ、片手剣のショートソードと盾の組み合わせで考えているようだ。
ユーシンの記憶では、叔父さんもそのスタイルの冒険者だったらしい。
魔物との戦いで一番重要なのは防御なんだ。なんて話をしてくれたと言うことだ。
確かに、こっちの世界にどんな魔物が居るのかはまだ分からないけれど、攻撃一辺倒ということにはならないだろう。
自分が怪我をしてしまえば、戦力にならなくなってしまう。
ヒーリングポーションみたいなものがあって、飲めばすぐに怪我が治ってしまうのならば、何とかなってしまいそうな気もするが、もしそうしたものがあっても、魔物との戦いの最中に飲むような余裕があるのか? ちょっと疑問だ。
オレ達が三人だけのパーティーであるならば、誰かが常にフォロー出来るかどうか分からない。
如何に怪我をせずに相手を倒せるか? が、おそらく一番重要なことののような気がする。
そんな話をユーシンとしていると、王子が疲れた顔をして帰ってきた。
そしてユーシンに、前に買ったのと同じような本を一冊差し出している。どうやら勉強用の本らしい。ユーシンは大喜びでお礼を言っている。
しかし、自分のための魔法解説書のようなものはなかったようだ。オレが、何か手掛かりになりそうな本はあった? と聞くと、渋い顔をして首を振って「なかった」カードを見せてきた。
この街には図書館みたいなものはないのかな? と聞いたのだが、オレの「図書館」という言葉が分からないみたいだ。本を無料で貸し出す公共の施設なんだけど、と言ってみたものの、ちょっと困惑しつつも首を横に振っている。
そんな疲れた王子様へと、オレはマジックバッグに入れておいた今日のスープを取り出す。入れた時同様にほかほかだ。
「ダイゴちゃん、冷めないうちに食べちゃっておくれね」と、おばちゃんの口真似をして渡すと王子が笑顔になった。
そして王子の魔法習得のための本についても、ギルド長に聞いてみようと話すと、王子も頷いていた。




