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第一話 転移

月曜と木曜の朝、週二回の投稿となります。

「よくぞ参られた異世界の勇者たちよ」と、豪華な服を身にまとった如何いかにも王様的なオッサンが言った瞬間、その背後の壁で爆発が起きた。


 続いて起こった爆発に、王様らしきその人物が吹き飛ぶ。

 そんな王様の前にずらりと並んでいたフルプレートの重装な騎士たちも、背後からの爆風を受けて四~五メートル吹っ飛ぶ。


 そのまま失神でもしたのか、ピクリとも動かない。


 王様は消えた。もしかしたら天井に突き刺さっているのかも知れないが、煙で見えない。

 遅れて襲ってきた爆風にオレを含め、一緒に転移してきたクラスメイトたちがぎ倒される。


 さらに爆発が起きて、阿鼻叫喚あびきょうかんな騒ぎになる。


 高一の二学期初日、遅刻ギリギリで滑り込んだ学校の教室の床に突然の魔法陣、そして転移? からの怒濤どとうの展開に思考がついていかない。


 周囲を見回しても、身をひそめられそうな遮蔽物しゃへいぶつどころか、脱出出来そうな扉すら見あたらない。


 王城の中なのか? 二階まで吹き抜けになった高い天井の豪華な広間のような部屋のなか、どうしたものだかと逡巡しゅんじゅんする。


 王道定番、お約束的な流れでは、異世界へと転移したら王族などに大歓迎され、転移者には転移特典でチートなスキルとかたぐまれなる才能、勇者のような職能しょくのうなどが与えられていて、「うぉー凄いぞ勇者さま」などとヨイショされて、戦いを決意する。みたいな流れだと思うのだが、それどころじゃない。


 海外旅行の飛行機に乗ったら、北極海上空で突然機体に穴が空いて、座っているシートごと機外に吸い出されました。みたいな唐突さ。


 転移十秒後には、まずはこの場を生き延びることが求められるサバイバル状態にあるのだ。


 広間では高位貴族や廷臣とおぼしき連中が叫び、怒鳴り合っていて、「魔王軍か?」とか「結界はどうなっておるのだ」等々、それっぽいワードが聞こえる。


 そんな人々の格好が如何いかにもな中世ヨーロッパお貴族風で、その身振りも大袈裟おおげさなために、妙に芝居がかって見えてしまうが、爆発に巻き込まれれば、タダでは済みそうにない。


 爆発の轟音、そして鼻をつく異臭の不快さに、一刻も早くこの場から逃げ出したいとあせりつつ、勝手の分からない初見しょけんの場所で、通学用の肩掛けカバンを胸にかかえ込んだまま、身体が固まる。


 さあどうする?


 そんな混乱のなかでさえ冷静に行動出来る人物はいるはずだ。


 左右に目を走らせると、壁沿いを身を低くして素早く動く影があった。

 その動きには躊躇ためらいがなく、おそらくだが、この広間からの脱出を意図して動いているように思えた。

 貴族のような豪華な服を着ているが、この場に不釣り合いな子供だ。背格好から小学校高学年か中一くらいではないかと思う。


 直感に従ってオレもまた身を低くして彼の後を追った。すると少年が壁際に立ち止まり、顔の高さで壁に当てた手を横にずらして何かを探すような仕草をしている。


 どうやら花が生けてある大きな花瓶を乗せた台座が邪魔なようだ。手で台座を押して横に動かそうとしているが、台座は微動だにしない。


 少年に追い着き、台座を肩で押す。頭が花瓶に当たり、花瓶が落ちて割れてしまうが、広間は爆発混乱中なので誰かに見咎みとがめられるようなことはない。


 気にせず台座を押し続けると、ようやく台座が一メートルほど横にズレた。

少年は壁に身を寄せて、手の平で壁を探る動作に戻った。


 と、ある部分でその動きが止まり、少年は頷くとその場所に指輪をめたこぶしを押し当てた。すると人ひとりが、やっと通れるくらいの幅で、床から高さ一メートルほどの壁が消えてなくなる。おそらく脱出口だ。

 少年は躊躇ちゅうちょすることなく、その中へと入っていく。


 広間ではまた爆発音、それに背中を押されるようにオレもその後を追った。


(c) 馬場 力

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