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最終話_エピローグ_続く旅路

「このスカタン!!なんでべへモスを粉々に粉砕した!!怒らないから理由を説明しなさ~~い!!」


「アリエル。もう既に怒ってるじゃないか。」


あたしはアリエル。あの戦いからちょうど二年の月日が経った。

あの後、グランシアの復興を手伝ったり、旅でお世話になった人達に挨拶回りをしたり、まぁ色々あって、今のあたしとナナシ君はハンターとして、ガードナー王国を中心に活動している。

今回はガードナー王の依頼で災害指定モンスターべへモスの討伐に来たんだけど、ナナシ君はいつもの調子で素材も残さずモンスターを塵芥に…これは流石に怒ってもいいと思った。


「う~む。前情報ではこの世界で最強クラスのタフネスと頑丈さを持つモンスターと聞いていたからな。出力3割くらいでちょうどいいと思ったのだが。」


「3割って…前も言ったでしょう!ナナシ君は人外なんだから、この世界じゃ1割以上力を出したらダメだって!!」


「いや、流石に世界最強を名乗るほどのモンスターなのだから、1割では倒しきれないと…」


「そう言って倒しきれなかった事があった?ねぇ!!」


「いや…」


「だったら素直に言う事聞きなさい!!ただでさえあの戦いで規格外の力を手に入れたんだから!!」


あたしは相変わらずナナシ君の御守り担当。

ここで何故、ナナシ君が未だにアナシスにいるかについて説明しておこう。

あの『名前ある者の神』との戦いを経て、ナナシ君は正式に『タイラントドラゴン』の契約者となった。どうやら今までは龍毅君を経由して仮契約という形だったから、7~8割程度の力しか出せていなかったらしい。

それだけでも驚きなんだけど、今現在は10割の力、つまりただでさえ規格外だった力が2~3割上昇したという事になる。


それで一番困ったのが力の調整。このまま地球に帰ったら地球の頑丈な施設でも破壊しかねない。

そこでヒーロー連合総帥龍堂さんが出した結論は、アナシスでの再修業、力の調整の練習。

アナシスは地球の30倍のスピードで時が流れるから、ナナシ君が今持っている有給80日(ついこの間法改正で増えたらしい)を丸々使えば80ヶ月分(6年ちょっと)になる。『名前ある者の神』が消えた影響か、地球の邪神の勢力も格段に落ちたので、有給を消化するいい機会だとか。

そして何よりアナシスのモンスターや建物は地球に比べて脆いから練習相手としてはうってつけ。まぁ、二年経っても結果は散々なんだけど。


どうもナナシ君は精霊と人間の間の存在になったらしく、人としての常識がいまいち理解できないらしい。そのせいか、金銭や民衆の安心とかそういった事に疎く、素材を残す為の力調整に必要性を見いだせないらしい。まぁ、頭では理解しているみたいだし、この件については本人に努力してもらうしかないかな。


それから今のナナシ君は年を取るのが極端に遅い。あたしは二十歳。今ではあたしとナナシ君の見た目年齢はほぼ同じ。これは地球にいる知り合いに対しても言える事。こちらでは二年経っているけど、地球では一ヶ月も立っていない。つまり、あたしとの年齢差がドンドン縮まっているという事になる。あたしだけ老けるのは少し気にいらないけど、悪い話ばかりじゃなかった。


「ところでナナシ君。地球からなんか連絡あった?」


「あぁ、いつもの業務連絡だけだ。光太郎さんからのメールは無いぞ。」


「そっか~、ちょっと残念。純さんからは?」


「そっちも無しだ。まぁ、()に前回送ったのは3日前だからな。返信はあと20日くらい先だと思う。」


「じゃあ、篝さんから蒼太君へのメールも無し?」


「蒼太君については直接篝さんと遣り取りしているそうだ。」


なんとあの後、あたしは光太郎さんとお付き合いする事になった。最初は成人していない子供とお付き合いは出来ないと断られていたんだけど、時間の流れの差のおかげで年齢差が縮まり、結果的に光太郎さんの守備範囲に入る事が出来たわけだ。

今のあたしはナナシ君の面倒を見つつ、地球のお勉強中。二年後くらいを目途に異世界移住を予定。今では日本語もペラペラだ。


一方、ナナシ君と純さんの方にも進展があった。

あの戦いの後、暫くしてナナシ君と純さんの間でいつもの決闘が行われた。

その決闘は純さんがナナシ君に勝ったらなんでも言う事を聞くというモノで、なんとその勝負で純さんが初めてナナシ君に勝利した。


あれはまさに激闘だった。両者一歩も引かない攻防。大気圏ギリギリの上空で行われる超変身同士の戦いに周囲は戦々恐々。結果としてはナナシ君が力を使い慣れていなかったのに加え、純さんが雷電さんから新たな力を授かっていた事が勝負の明暗を分けた。


そして純さんの勝利のご褒美はナナシ君と正式にお付き合いする事。

どうやらその時にナナシ君も純さんが極端な照れ屋だという事に気付き、その申し出を快く了承した。二人とも基本的には真面目なので性格的には相性が良く、ナナシ君のちょっと常識が足りない部分を純さんがうまくカバーする事もあって、中々にいいカップルになっている。


この時、篝さんが色々騒いだけど、ナナシ君が神崎家に養子縁組する事で事なきを得た。

どうやら篝さんにとってはナナシ君のお姉ちゃんでいる事が重要だったらしい。

今のナナシ君は名無しの呪いに縛られていないから、役所の手続きさえ済ませてしまえば戸籍を手に入れる事が出来た。流石に戸籍無しじゃ、今後色々な場面で面倒だろうというヒーロー連合からの計らいでこうなった。


その時、神崎家の両親が篝さんを筆頭とするヒーロー連合の猛者達に脅迫されていた事を、蒼太君が楽しそうに語っていたのが中々に印象的だった。

純さんは純さんで、「愉快な親戚が出来るかもな」っと苦笑いを浮かべていたっけ。


ちなみに今のナナシ君の戸籍上の名前は『神崎七志』。もっとも普段は『火響七志』を名乗っているけど。


さて、実はアナシスに来たヒーローはあたし達だけではない。蒼太君もまたアナシスに移住してきた。もっともあたし達はいずれ地球へ行くけど、蒼太君の方はアナシスに永住する予定らしい。理由は勿論ドキュンちゃん(ドラゴンクイーンナイトメア)。

あの戦いの後、10000を超す邪神や怪人を独力で粉砕。地球に一時的な平和をもたらすとともにその功を上層部に認めさせる事で客員ヒーローの座を獲得。非常事態以外はアナシスで暮らす権利をつかみ取った。


今の蒼太君はドキュンちゃんと一緒にドワーフと森の民の合同集落で暮らしている。

対外的にはちょっと魔法が得意な新婚夫婦という事になっているけど、地球最強のヒーローとアナシス最強種の黒龍が名乗るにはかなり無理があると思う。


ちなみに今地球では、ナナシ君と蒼太君が抜けた穴を埋める為、篝さん、純さんを始めとする最強の10人や、エレメンタルズなどの後輩ヒーローが頑張ってくれているらしい。

あたし達が地球に戻るのは、地球時間で一ヶ月後くらいなので、もう少しだけご迷惑を掛けるけど、頑張って貰いたい。


さて、あたし達の近況についてはこのくらいにして、話を戻そう。


「ところでナナシ君。粉砕したべへモスの件だけど、井戸亜さんに相談したらどうにかなるかな?」


「どうだろうか?そもそも何故、そんなに素材に拘る?」


「それはこの前も説明したでしょう。この世界じゃ霊力探知によるターゲット消滅の確認なんてできないから、モンスターの討伐部位が必要になるって。」


「そうだったな。すまない、うっかりしていた。」


「うっかりで災害指定モンスターを粉砕しないでくれるかな…まぁ、過ぎてしまった事は仕方ないか。粉砕部位の再生とかできないか聞いてみようか。あの人なら出来そうだし。」


「だな。世界間スマホで連絡してみよう。」


項垂れるあたしを後目にナナシ君が懐からスマホを取り出し、通話を始める。

これはヒーロー連合の研究室が開発したもので、あたし達が地球との遣り取りを不自由なく行えるのはコイツのおかげ。もっとも試作機なので使用感とかのモニターもするよう、井戸亜さんに依頼されているわけだけど。

勿論その見返りとして、あたし達がアナシスにいる間のサポートはお願いしている。今回がまさに井戸亜さんを頼るタイミングだったわけだ。

ナナシ君と井戸亜さんの電話の遣り取りを待つ事30秒。いつも通り用件しか言わない二人の通話が終了する。


「どうやら粉砕したモンスターの再生は不可能らしい。」


「う~ん…やっぱそうだよね。」


「だが、モンスター素材なら赤坂のところに行けば手に入るらしい。」


「えっと…自国を荒らしたモンスターの討伐証明の為に、他国に行くって事?しかも大陸を超えて。」


「そうなるな。」


「…はぁ~、それじゃ本末転倒じゃない。」


紙一重の馬鹿(いとあさん)の発想に地面に埋まりそうなくらい項垂れるあたし。

だがそのトンでも提案を全く気にしないのが常識がやや不足した我らがヒーロー。


「では、行こうか。目的地はコル村、コルト山脈に生息するべへモス。今度こそ討伐部位を入手するぞ。」


「アッ!ちょっと!ナナシ君。いきなり走り出さないでよ!!もうあんなところに!コラ~~~~!!人の話を聞け~~~~~~ッ!!!」


こうして非常識なヒーローの御守役ことあたし、アリエルの旅路はまだまだ続く。

きっとこれから先も、かつての名も無きヒーローは周囲を振り回しながら人助けの旅を続けるのだろう。そしてその被害を真っ先に受けるのはあたしなのだろう。


その事を嬉しくも誇らしくも思ってしまうのは、あたしがこの人に完全に毒されてしまったからだろうな。


あたしもいつか、なれるかな。あなたがあたしにしてくれた様に。誰かを救うヒーローに。



名も無きヒーローの異世界世直し道中~完

これを持ちまして、『名も無きヒーローの異世界世直し道中』完結となります。

ここまで筆者の拙作に付き合って頂いた読者の皆様。誠にありがとうございました。



ここからは筆者の自己満足です。お暇がありましたらご覧下さい。

本作品は筆者の執筆活動の中でも特に産みの苦しみが強かったものです。

あらすじには書いてましたが、最初から見切り発進な上に全体のプロットも登場キャラクターもラスボスも全く作ってない状態から始めたわけですから、当然ですよねww

じゃあ、何故そんなヒドイ状態で初めてしまったのかと言えば、自分が最初に作ったキャラクター、『名無しのフレイム』をどうしても書いてみたかったからです。

少し不愛想だけど、強くて、不器用な優しさがある。そんなキャラクターを目指していたのですけど、どうもそれを発揮する為の環境を整える事が出来ずに、常に四苦八苦していたと思います。やっぱり主人公だけでなく、ヒロインや仲間や敵キャラの作り込みもとても重要だと、改めて痛感させられました。

それから、やはり勉強不足だったと思います。改めて見直してみると、読みにくい箇所や表現がくどい箇所が散見されていて、特に最初の方は読むに耐えない箇所が多く見られました。


そんな状態ですが、それでも何とか完走出来た事で大きな達成感を得る事が出来ましたし、それは筆者の中で一つの糧になったと思います。

もし、この作品を読んで、「あ、これくらいなら俺にも書けるや」と思った方がいらっしゃれば是非とも挑戦して見て下さい。書いてみなければ面白い作品は生まれませんので。


まぁ、偉そうな事を言っちゃいましたが、実は一番面白い作品を書きたいと思っているのは筆者自身だったりもします。

キャラクターや世界感を作るのは好きなんですけど、どうにも力量不足でそれらを十全に活かせていないのが悔しくてなりません。

今作で言えば、もっと篝様と純ちゃんを活躍させたかった。路線変更してしまった蒼太のネガティブをもっと活かしたかった。ヒーローズドーンにももっと活躍の場を与えたかった。アリエルをもっと苦労人にしたかったww。やりたかった事は山ほどあります。


でも、そんな筆者の未熟な部分に目を瞑ってここまで見て下さった方がいる事が筆者は何より嬉しく思います。


さて、長々となりましたが、これを持ちまして『名も無きヒーローの異世界世直し道中』完結とさせていただきます。ここまでお付き合いいただいた読者の皆様。

この場を借りて厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

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