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07-23_母の遺志

07-23_


「さぁ、まずはお姉ちゃんから【ウィッチ・ザ・スターライト】!!『シューティングスター』!!」


箒に跨り、彗星と化した炎の魔女が天使達を次々に蹂躙していく。そして彗星が通り過ぎた後には『名も無き炎』へと通じる道が出来上がる。


「次は僕です・・・【ブルーゲイル・フィンリルナイト】!!『極光回廊(オーロラロード)』!!」


氷を纏いし、神狼の騎士がその手に振るった瞬間、『名も無き炎』への道を永久氷壁のトンネルが舗装する。


「行くぞ!アリエル!!」


「うん!!」


氷のトンネルを駆け抜けるアリエルと純。だがそこに殺到する天使達。


『やらせせせん…今度こそそそそ…全ての生きとし生ける者にににに………十字架の道行の死と永遠の命のののの安寧をををを……御父よ……あなたはなぜ…我を見捨てた………たたったた…』


氷華の姿で痙攣し、呻き声を上げる『名前ある者の神』。力なく開いた口からは涎が、虚ろな瞳には涙が溢れていた。


「…これ以上……俺の仲間を辱めるな!!!【竜神招来】!!『竜牙連撃(りゅうがれんげき)』!!!」


怒れる灼熱の竜神の拳が、偽りの救世主(メシア)を天使ごと屠る。何度復活しようとも殴り蹴り穿ち貫き灰燼と帰す。


「良し!到着だ!アリエル!頼んだぞ!」


「うん!任せて!!」


篝、蒼太、龍堂の奮闘の甲斐あり、ナナシの元へと辿り着くアリエルと純。

その体は焼けただれ、末端の一部は黒く炭化していた。その痛々しい姿に目を背けたくなるのを必死で堪える二人。

はぁ~っと息を吐く音。目を瞑り、深呼吸をし、全集中力を回復魔法と気功に向けるアリエル。


だが、最大の脅威である『名無しのフレイム』を放置するほど、『名前ある者の神』は甘くはない。殺到する天使達。その攻勢は激しく、僅かにだが氷のトンネルに穴を開け、侵入を許す。


「チッ!甘く見んなよ!!俺だって最強のヒーローの一人!アイツの…龍毅の前で無様を晒せるかよ!!【シヴァ・トリムルティ】!!『マハー・シヴァ・シャクティ』!!」


荒れ狂う破壊神の四本の腕が偽りの天使達を打ち払う。だがこの戦いは純に予想以上の精神的負荷を掛ける。

生半可な攻撃では倒れない天使。周囲には自分達を守る為に作られた氷のトンネル。治療で動けないアリエル。攻撃が弱すぎれば天使は倒せず、強すぎればトンネルが崩壊し外から無数の天使が殺到する。そうなれば一番最初に襲われるのはアリエルだ。


自分のミス一つで仲間の命が危険に晒される。極限状態の中、擦り切れそうな精神を必死で鼓舞し、ひたすら天使を屠り続ける純。


「アリエル、フレイムの方はどうだ!?」


「ゴメン、まだダメ!もうちょっと頑張って!!」


「あぁ!クソ!!やってやんよ!!何百匹でも何千匹でも!!全部纏めて相手してやんよ!!

雷電のおっちゃん!!力を貸してくれ!!【シヴァ・トリムルティ・フォームパルジャニャ】!!」


破壊神の四本の腕が雷を帯びる。これはライトニング・ゼロ_火響雷電から受け継いだ純の新しいフォーム。神速にして電光石火の拳が襲い掛かる天使達を悉く打ち滅ぼす。


一方ナナシの方は芳しくない。治療を急ぐアリエル。だが傷は余りにも深い。

火傷についてはおおむね治療したが、炭化してしまった末端については欠損再生が必要だった。

欠損再生は上位治癒魔法。それを気功と合わせて行うとなると、必要な魔力、気力、集中力は計り知れない。それ故、自然と治療に要する時間も伸びる。すなわちヒーロー達の絶望的な持久戦が更に延長される事を意味する。


ヒーロー達が超変身を行って、既に数時間が経過。今まで保っていた均衡がとうとう崩れた。

今まで蒼太が維持していた氷のトンネルが度重なるヒーローと天使の戦いに耐えきれず、崩壊を始めた。


「拙い!!アリエル!そっちの方はどうだ!!」


「後もう少し!!後5分…いや3分堪えて!!」


「クソ!誰か!援軍頼む!!」


「ゴメン!敵が多すぎてお姉ちゃんは無理!!」


「僕も・・・力を使い過ぎたみたいです。自分の・・・周りで手一杯です。」


「俺がそっちに行く!!それまで何とか堪えろ!!」


多すぎる敵に苦戦を強いられるヒーロー達。アリエルと純の救援に向かう龍堂も無数の天使に道を遮られ、遅々として歩を進められない。


そして…とうとう最悪の事態が訪れた。


「テメェは…さっきアイの隣にいた…」


『はい、マスター火響氷華の精霊『アリス』です。』


純の眼前には金髪に碧眼、青いエプロンドレスを纏った可愛らしい少女。


「クソ!こっちはカラッ欠だってのに、今度は精霊の相手か…」


無数の天使を戦いながら、アリスを見据える純。警戒する純にアリスは不敵に微笑む。


『マスターからの伝言です。『良くぞ、ここまで持ち堪えた。後は私様に任せろ』との事です。』


言い終わるや否や、アリスはエプロンドレスのポケットから無数のトランプを取り出す。


『不思議の国の支配者にして、『銀鏡華』火響氷華の契約精霊アリスの名において命じる。

トランプ兵達よ。無粋な天使共の首を刎ねよ!!』


トランプは巨大化し、手足が生え、武器を手に取り、兵隊の姿に変貌する。

数には数。天使の数を上回るのトランプ兵達が、次々にその首を刎ねる。


「おい…こりゃどういうことだ。」


アリスの手によって作り出された安全地帯の中、純が彼女に問いかける。


『これはマスター…あなた達がアイと呼ぶ私の主、火響氷華の最後の遺志です。

マスターは二つの想いの中、葛藤しておりました。夫と息子、家族三人で僅かな時間でも安らかに平和に暮らしたいという想い。例え自分達両親がいなくなっても息子の生きる未来を残してやりたいという想い。前者の想いに付け込まれて出来た木偶人形があっちで、後者の想いで全霊力を託されたのが私です。』


涙と涎をまき散らしながら、天使達を量産する氷華『名前ある者の神』を指差しながら、どこか嘲るような表情で語るアリス。


『マスターはこう仰っておりました。『別れるのは嫌である。でも忘れられるほうがもっと嫌なのである。もし息子が死ねばそれは忘れられたのと同義。だから例え別れが辛くても、例え無様に泣く事になっても、あの子が生きる未来を守りたい。それがヒーロー火響氷華の生きざまである』っと。』


「アイ・・・」


「アイちゃん・・・」


氷華の言葉を代弁するアリスの瞳には、薄っすらと涙が滲んでいた。


『ははぁ、かっこつけては見ましたが、どうやらマスターに託された霊力も限界に近いようですね。では最後にマスターよりご子息への伝言です。一言一句間違えずにナナシ様にお伝えください。『龍毅、そしてナナシ。お主らは私様と雷ちゃんの自慢の息子なのである。余り構ってやれなかったのが残念であるが、立派に育った息子達の姿を見れて私様達は満足なのである。多くは言わん。どうか達者で暮らすのである。』・・・以上です。』


言葉を発するたびに、その姿が希薄になっていくアリス。すでに9割ほど透明になり、今にも消えてなくなりそうなアリスがにこやかにカテーシーをする。


「アイからの…母さんからの伝言…確かに受け取った。」


三人の背後から不意に声。アリエルの治療を終えたナナシがゆっくりと立ち上がる。


「フレイム君!!!」


「フレイム兄さん!!」


「フレイム!」


「ハハァ…ようやくのお目覚めかよ。」


ナナシの目覚めに疲弊したヒーロー達の目に光が戻る。そして・・・


「おはよう、ナナシ君。」


「すまない、どうやら寝坊したみたいだな。」


涙で瞳を潤ませるアリエルにいつも通りの少しズレた返事をするナナシ。皆の様子を確認したナナシが今度はアリスの方へと向き直る。


「アリス。君はこれから母さん達の元に赴くのか?」


『はい。私は未来永劫マスターと共にあると誓いましたから。』


「それは契約でか?」


『いえ、私の意思です。私もマスターも寂しがり屋ですから。』


「そうか。」


消えかけるアリスにナナシが不器用に微笑む。


「では自分からも手向けだ。成長した息子の姿、しかとその目に焼き付け、母さん達に語ってやってくれ。」


『承知しました。』


ナナシの不器用な笑いに応えるように笑みを深めるアリス。


【超変身フレイムフォーム】


灼熱の炎がナナシを包む。目も開けられないほどの眩い光。

それが晴れた瞬間、皆が目の当たりにしたものは・・・・・・

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