23話 ライトvsドラゴ1
「――槍よ世界の力を分け与えよ! 増幅強化!」
ドラゴは『巨塔の魔女』に『巨塔』の地下訓練場に転移させられた後、神話級武具、『終末の槍』の力によって自身と槍の攻撃能力を強化。
その力を以て『巨塔』地下訓練場の壁を破壊するため振るう。
ただの壁ならこんなことをせずとも破壊することが出来るのだが……。
「ッゥ!? 馬鹿な! 『終末の槍』をもってしても壁が破壊できないとは!?」
ドラゴは『巨塔』地下訓練場の壁を破壊できないことに驚愕してしまう。
正確には破壊できてもすぐに再生が始まってしまうのだ。
現在、『禁忌の魔女』エリーが『巨塔』に直接接触して魔力を過剰に注ぎ込んでいる。
お陰で通常以上に壁の再生速度、硬度が高くなっているお陰で神話級の武具で武装するドラゴを閉じ込めておくことが出来るのだ。
しかし、この状態も長くは続かない。
エリーが魔力を過剰に注いで硬度、再生速度を上げているからこそドラゴを閉じ込めておくことが出来るのだ。
彼女の魔力が途切れれば普段の『巨塔』と変わらなくなる。
そうなれば脱出は容易な上、エリーは魔力切れになり、ドラゴ達に狙われたら危険な状態におちいる可能性もある。
故に彼女の魔力が途切れる前に、ドラゴ達を拘束する必要があるのだ。
「早くここから脱出して、『巨塔の魔女』を殺害しなければならないというのに……。こんな足止めを食らうとは……」
ドラゴが悔しげにうめく。
彼の目的は『巨塔の魔女』を討ち、『プロジェクト・アーク』の座席を確保することだ。そのチャンスがつい先程までは目の前にぶら下がっていたのに、転移させられ、この場で閉じ込められて足止めを食らってしまっている。
折角掴みかけたチャンスを取り逃した悔しさにどうしても気持ち的に焦ってしまっていた。
だが、その焦りも長くは続かなかった。
「……扉が開いた?」
脱出しようと躍起になっていたドラゴの視線の先、壁が自動的に解放された。
その先には通路があり、目を凝らせば奥に階段があることが分かる。
本来であれば嬉々として部屋から脱出するため扉をくぐるのだが……。ドラゴはすぐに動かなかった。
なぜなら、その階段奥から複数の人数が降りてくるのを察知したからだ。
「…………」
『終末の槍』を手に警戒しながら、待ち構えていると――見知った顔が姿を現す。
「まさか本当にドラゴがいるなんてね……」
「!? ら、ライト……オマエ、生きていたのか!?」
ドラゴは瞳を限界まで広げ驚愕する。
数年前、偽ますたーとして殺害しようとした年齢のままのライトが姿を現したのだ。
驚愕するなというほうが難しい。
ライトの念のための護衛として、メイ、アオユキが背後から続く。
ドラゴがメイとアオユキの存在に気づき、警戒心を露わにするが、ライトは無視して彼が手にする槍を鑑定する。
「……ッ!?」
エリーから報告を受けていたが、ドラゴが手にしている槍――神話級武具、『終末の槍』は、武器としての力は強いが、力を使えば使うほど使用者の精神、魂を侵食。
凶暴化させて、敵味方関係なく暴走し、最終的には力に耐えきれなくなった使用者が爆発し周囲を破壊しつくす。
自爆兵器のような槍だった。
ライトはその内容を見て、説得するため声をあげる。
「ドラゴ、とりあえず今すぐその武器から手を離せ。まだ間に合う」
「? 何の話だ」
「その槍を鑑定して分かったが、それはただの槍じゃない。力を使えば使うほど使用者の精神と魂を浸食し最終的には暴走。使用者が耐えきれなくなったら爆発し、周囲を破壊する自爆兵器のような武器なんだ。だから、今ならまだ間に合うから、その槍を手放すんだ」
「馬鹿な。これは竜人帝国が危機に陥った際、使用する由緒ある伝説の武器だ。嘘をつくならもう少しマシな嘘をつけ。第一、オマエのようなヒューマンが鑑定を使って能力を把握したなど……。馬鹿も休み休みいえ」
ライトを下に見ているドラゴは、彼の説明に対して小馬鹿にしたように鼻で笑った。
その態度に苛立ち、ライトの背後にいるメイ、アオユキが殺気を強めた。
ライトは背後の殺気を手振りで押さえ、言葉を続ける。
「嘘じゃない。僕はオマエ達に裏切られ、殺されそうになった。転移陣で偶然逃げられた後、恩恵『無限ガチャ』のお陰で生き残ることが出来たんだ。鑑定できたのも、そのカードの力のお陰だよ」
ドラゴに『SR 鑑定』を見せる。
「このカードを使えば、その槍の鑑定ができる。僕の言葉が正しいと分かってもらえるはずだ。今、渡してやってもいい。自分で鑑定すれば真実が分かるだろう」
「なぜそんな怪しげなマジックアイテムを使わなければならない? 第一、仮にそのカードを使って『終末の槍』を鑑定して、詳細を把握したとして、それが正しいとする信用がどこにある」
ドラゴが胡散臭そうに瞳を細め、ライトを見据えた。
「この場に来られることから、ライト、オマエは『巨塔の魔女』と繋がっているな? だとしたらそのカードは魔女の所有物だろう? そんなマジックアイテムで鑑定した情報を鵜呑みにするほど俺はバカではない」
ドラゴが続ける。
「第一、『終末の槍』を手放したとして、ライトは俺をどうするつもりだ? 魔女を討つ手助けでもしてくれるのか? 恐らくオマエが『奈落』で無事だったのも『巨塔の魔女』のお陰だろう? この状況、身につけている装備の品質、背後にいる部下らしき人物達……魔女に命を助けられて、その配下についたから厚遇されているんだろう? そんなオマエが魔女を殺害しにきた俺の武装を解除させようとしているなど、罠を疑わない方がおかしいだろう」
「…………」
『巨塔の魔女』に助けられ云々は勘違いだが……では、ライト自身『武装解除したドラゴを黙って見過ごすか』と問われたら答えは『いいえ』だ。
自身を騙し、裏切って殺そうとした『種族の集い』元リーダーであるドラゴをみすみす逃すなど絶対にありえない。
そんな彼に対してドラゴは鼻で笑い、格下を見るような馬鹿にしきった視線を向けてくる。
「沈黙は肯定と取るぞ。ふん! 所詮はヒューマンの浅知恵だな!」
ドラゴがライトに向けて槍を構え直す。
「第一、俺にとって今更オマエなんかどうでもいいんだよ! さっさと死ね! 死んで魔女を討つ邪魔をするな!」
「……なら力尽くでその槍を取り上げて、その後その身に永遠の苦しみを与えてやるよ」
ライト自身、杖を構えドラゴと対峙する。
ライトは復讐を遂げるため、ドラゴの確保に。
ドラゴは自身の生存を懸けてライトに矛を向けるのだった。




