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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
34/38

34 セイロン沖海戦 .2

 ーー第一航空艦隊旗艦 『赤城』ーー


 アッヅ環礁でイギリス艦隊が動き出した頃、重巡『利根』から発艦した偵察機が、イギリス艦隊に合流しようとしている重巡『ドーセットシャー』、『コーンウォール』を発見した。


「長官。如何致しますか?」

 報告を聞いた源田参謀が、塚原長官に尋ねる。


「ふむ...源田参謀。君はどう思う?」

「私としては、アッヅ方面にいる敵艦隊に合流されると厄介です。直ちに叩くべきでしょう。」

「そうだな...よし、直ちに出撃可能な攻撃機を発艦させろ!!」

「了解ッ!!」

 塚原長官の号令の下、出撃準備の完了していた『蒼龍』、『飛龍』の艦爆隊を中心とした攻撃隊が発艦した。


 機動部隊から発艦した攻撃隊は、すぐに巡洋艦を発見した。


「全機突撃ッ!!」

 攻撃隊長の江草少佐の号令の下、一斉に九九艦爆が急降下を開始する。『ドーセットシャー』と『コーンウォール』の二隻は対空砲で迎え撃つが、艦爆隊は怯むことなく二隻へと向かっていった。


「高度七〇〇...六〇〇...五〇〇...ヨーイ、撃てェッ!!」

 先頭を進む江草少佐機が二五〇キロ爆弾を投下する。後続の艦爆隊も次々に爆弾を投下する。


 投下された爆弾は次々と二隻に命中し、急速に沈み始めた。

「江草少佐ッ!! 敵巡洋艦が沈み始めていますッ!!」

 江草機の後部銃座に乗る偵察員がそう叫ぶ。


「ようし。すぐに『赤城』に打電しろッ!!」

「了解ッ!!」

 報告を聞いた江草少佐はすぐに打電させ、機動部隊へと帰還していった。





 ーー戦艦『ウォースパイト』艦橋ーー


「『ドーセットシャー』と『コーンウォール』がやられたか...」

「はい...」

 『ウォースパイト』の艦橋で参謀からの報告にソマーヴィルは呟く。


「やはりアッヅ環礁へ引き返すべきか...」

「しかし、ジャップの機動部隊は見過ごせません。」

「それは分かっている。しかし、敵は我々よりはるかに優勢だ。まともに当たればひとたまりもない。」

「しかし何もせずに引き返すというのはッ!!」

 参謀の一人がソマーヴィルに詰め寄る。


「...通信参謀。空母『フォーミダブル』と『インドミタブル』に索敵機の発艦を命じろ。」

「ソマーヴィル提督。」

「敵を発見次第、雷撃機による夜襲をかけさせる。流石の奴らも艦載機の夜襲は考えつかんだろう。」

 そう言ってソマーヴィル提督はニヤリと笑う。しかしこの時、空母『扶桑』から発艦した偵察機が、イギリス東洋艦隊を発見していた。





 ーー第三航空戦隊 『扶桑』ーー


「角田司令、索敵機より入電。『敵機動部隊発見セリ。戦艦一、空母二、巡洋艦二、駆逐艦六』とのことです。」

「そうか。敵艦隊か。」

 アッヅ環礁攻撃に向かっていた第三航空戦隊の旗艦『扶桑』で角田司令が呟く。その顔は、獲物を見つけた獰猛な狩人のような笑みを浮かべていた。


「攻撃隊の準備はどうなっている?」

「すでに敵艦隊発見に備え、飛行甲板上に待機させていた攻撃隊が発艦準備を行っております。」

「よし、準備が完了次第ただちに出撃させろ。」

「了解ッ!!」

 角田の指令の下、『扶桑』、『山城』の二隻から零戦十二機、九九式艦爆二十四機、九七艦攻三十二機が第一次攻撃隊として発艦した。角田は敵艦隊目掛け飛行していく攻撃隊の様子を、じっと見つめていた。





「レーダーに感ありッ!!敵攻撃隊ですッ!!」

「何だとッ!?」

 戦艦『ウォースパイト』のレーダー手からの報告に、ソマーヴィル提督は驚いた。


「奴らに別動隊がいたというのか?」

「提督、直ちに迎撃機を上げさせましょうッ!!」

「分かっている。戦闘機隊は全部上げさせろッ!!一機たりとも艦隊に寄せ付けるなッ!!」

 ソマーヴィルの命令により、一斉にフルマー戦闘機が発艦する。それと同時に各艦は対空戦闘の準備を行う。


「護衛の艦艇は無視しろッ!!戦艦と空母だけを狙えッ!!」

 空母『扶桑』から発艦した攻撃隊長が攻撃隊に指示を出す。護衛の零戦隊も上昇していくフルマー戦闘機に気づき、フルマー戦闘機へと向かっていった。


 攻撃隊はその隙に敵艦隊に向かって真っすぐに突っ込む。しかし、イギリス艦隊も対空砲で攻撃隊に立ち向かう。


「撃て撃てッ!!一機たりとも近づけさせるなッ!!」

 空母『フォーミダブル』の高角砲員がそう叫ぶ。『フォーミダブル』の上空には九九艦爆三機が飛行甲板目掛けて急降下していく。高角砲や四十ミリポンポン砲が一斉に九九艦爆に向かって放たれるが、九九式艦爆は怯むことなく突っ込んでいき、二五〇キロ爆弾を投下する。


 投下された爆弾は『フォーミダブル』の飛行甲板に命中したものの、分厚い装甲甲板によって阻まれ、飛行甲板は無傷であった。


「馬鹿め。そんなものが効くかッ!!」

 攻撃の様子を見ていた高角砲員の少尉が飛び去って行く九九艦爆に向かってそう叫ぶ。


「少尉ッ!!右舷より九七艦攻ケイト接近ッ!!」

「何ッ!!」

 部下の叫びに少尉は驚く。見ると、すでに九七艦攻は水面スレスレの低空飛行で『フォーミダブル』に雷撃を敢行しようとしているところだった。

 

 『フォーミダブル』の高角砲や対空機銃は大慌てで雷撃を阻止しようと発砲を行うが、急降下爆撃に気を取られていたため、発砲は散発的だった。


 そして輪形陣を突破した九七艦攻四機は『フォーミダブル』に向けて魚雷を投下した。


 四機の放った魚雷は『フォーミダブル』に命中し、急速に行き足が衰え始めた。その様子を見た別の艦攻隊が左舷側から突入し、三本の魚雷を命中させた。計七本の魚雷を受けた『フォーミダブル』は大きく傾き始め、総員退艦が命じられた。


 そしてその魔の手は、『ウォースパイト』にも迫っていた。『ウォースパイト』に殺到した攻撃隊は両舷から挟み込むように雷撃を敢行し、左舷に四本、右舷に二本の魚雷が命中した。もともと旧式戦艦である『ウォースパイト』は七本の魚雷には耐えきれず、各部で浸水を起こし始めた。


「そんな馬鹿な...」

 ソマーヴィルは燃え上がる『ウォースパイト』の艦橋でそう呟いた。すでに『フォーミダブル』は海中に没し、『インドミタブル』も大きく傾斜し始めていた。


「提督、もはや『ウォースパイト』はもう長くは持ちません...」

 『ウォースパイト』の艦長が悲痛な面持ちでソマーヴィルに伝える。


「そうか...艦長。このあたりが潮時だろう...」

「分かりました...総員...退艦用意...」

 ソマーヴィルの言葉に艦長は絞り出すようにそう自沈の命令を下した。『ウォースパイト』から退艦したソマーヴィルは巡洋艦『エメラルド』に移乗し、沈みゆく『ウォースパイト』の姿を見つめ続けたという。





 ーー第三航空戦隊 『扶桑』艦橋ーー


「司令、攻撃隊より入電です。敵戦艦並びに敵空母二隻の撃沈を確認したそうです。」

 攻撃隊からの電文を受け取った参謀が、角田司令にそう報告した。


「そうか...攻撃隊を収容させ次第、アッヅ環礁へ再度針路をとらせろ。」

「分かりました。」

 報告を聞いた角田はすぐにそう命じ、アッヅ環礁へ針路をとらせた。そして、角田はイギリス艦隊が沈んだ方角へ向き、静かにイギリス艦隊に哀悼の意を込め、敬礼を行ったのであった。

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