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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
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33/38

33. セイロン沖海戦 .1

 緋村達が横須賀基地で試作機を見ていたころ、機動部隊はセイロン島攻撃のためインド洋に向かっていた。


 セレベス島から出港した第一機動艦隊は四月上旬にはセイロン島付近にまで接近した。


「塚原長官、コロンボ攻撃隊の発艦準備が完了しました。」

 航空参謀の源田中佐がそう報告する。


「うむ、直ちに発艦させよ。」

「攻撃隊発艦せよッ!!」

 源田中佐の号令とともに攻撃隊が発艦する。


「南遣艦隊の角田少将の部隊はどうなっている?」

「すでにアッヅ環礁に向かって、針路をとっているとのことです。」

 塚原長官の問いに草鹿参謀長が答える。


 角田少将率いる第三航空戦隊は、アッヅ環礁攻撃のため南遣艦隊から分離し、護衛艦艇共にアッヅ環礁攻撃に向かった。


「とりあえずこちらはコロンボ、トリンコマリーへの攻撃は我々が行い、第三航空戦隊にはアッヅを任せるとしよう。」

「そうですな。」

 塚原長官の言葉に草鹿参謀長が頷いた。





ーーセイロン島 コロンボ上空ーー


「獲物はあまりおらんようやな...」

 コロンボ攻撃隊隊長の淵田中佐は、九七艦攻のコックピット越しにコロンボ港を確認する。

 

 コロンボ港には戦艦や巡洋艦のような大型艦は無く、駆逐艦や輸送船が停泊しているだけであった。その駆逐艦などの艦艇も、先に攻撃を行った雷撃隊により、すでにほとんどが撃沈されていた。


「しゃーない。とりあえず港湾施設や残った艦艇を叩くか。」

「淵田中佐ッ!!後方よりハリケーン戦闘機接近ッ!!」

「何ッ!!」

 淵田中佐が攻撃指示を出そうとしたとき、後部銃座の水木一飛曹がそう叫ぶ。


 後方を振り向くと、二機のホーカー・ハリケーン戦闘機が接近していた。


 攻撃隊はハリケーンを近づけさせぬよう密集体形を組んで後部機銃で迎え撃つ。しかしハリケーンはそれに怯むこと無く攻撃隊に向かう。


「(クソ、やられるかッ!?)」

 淵田中佐がそう覚悟したとき、突如二機のハリケーンが突然機体から火を噴いて落ちていった。淵田中佐は落ちていくハリケーンの様子を見ていると、三機の零戦が上昇していく様子が見えた。


「護衛の零戦隊か...感謝やな。」

 淵田中佐は飛び去っていく零戦の姿を見つめながらそう呟いた。攻撃隊を守った零戦は、すでに淵田中佐の乗る機体からは見えなくなっていた。





「よしッ!!一機撃墜だッ!!」

 空母『瑞鶴』戦闘機隊所属の土方歳郎大尉は、零戦のコクピットの中でそう叫んだ。土方の指揮する小隊は、攻撃隊に近づいていたハリケーン二機を発見した際、すぐにそれを撃墜した。


 土方はそれを確認した後、また別の敵機を探すべく高度を上げた。

「(攻撃隊はどうなった?)」

 土方はある程度まで高度を上げた後、攻撃隊の様子を確認した。攻撃隊はすでに爆撃コースに入り、攻撃を行おうとしているところであった。


 やがて攻撃目標を確認した攻撃隊は、次々と爆弾を投下していった。九七式艦攻から投下された五百キロ爆弾や六十キロ爆弾は次々と爆発し、港湾施設や飛行場は穴だらけになった。


 土方がコロンボ上空からその様子を眺めていると、中隊長から無線で集合がかけられた。帰投の合図である。土方はすぐに攻撃隊へ合流すると、編隊を組み直した。回りを見てみると、被害はほとんど無いようであった。


 土方は攻撃隊の無事にホッとすると、用具袋からサイダーを取り出した。


 土方はサイダーが吹き出ないように慎重に詮を開けると、それを口に含んだ。高空の冷たい空気によって冷やされたサイダーは、土方の乾いた喉に気持ち良く流れた。


『土方大尉。ずいぶんうまそうに飲みますね。』

 土方がサイダーを飲み終えたとき、隣を飛行していた岩本徹三一飛曹から無線で話しかけられた。


「おう、岩本か。お前も飲んだらどうだ?」

『私は番茶の方がいいので...土方大尉は何機落としましたか?』

「ハリケーンを一機落とした。岩本はどうだ?」

『哨戒で飛んでたカタリナ飛行艇を一機です。』

「そうか、流石岩本だな。」

 そう言って土方は二カリと笑った。岩本はノモンハン事件では海軍航空隊での最多撃墜数を記録し、下士官として異例の功五等金鵄勲章を授与されたほどの腕前であり、『瑞鶴』戦闘機隊でも指折りの搭乗員であった。


「後で話聞かせてくれ。とっておきの酒奢るからよ。」

『ええ。良いですよ。』

 そう言って、土方と岩本の編隊は、空母『瑞鶴』へと帰投したのであった。





 

 ーー同時刻 アッヅ環礁ーー


「何ッ!!コロンボがを敵機動部隊の攻撃を受けただとッ!?」

 イギリス東洋艦隊旗艦『ウォースパイト』司令官のソマーヴィル提督はそう叫ぶ。


「それで、被害はどうなっている?」

「はい。コロンボ港の基地機能はほとんど喪失したとのことです。」

「なんということだ...」

 部下からの報告にソマーヴィルは呟く。


「まさかこれほど早く仕掛けてくるとは...こうなればすぐに出撃させるしかないか。」

「しかし相手はあのツカハラです。やみくもに攻めれば返り討ちにあってしまうでしょう。」

「それもそうだな...」

 部下からの進言にソマーヴィルは考え込む。塚原長官は真珠湾攻撃を指揮した提督としてすでに米英に知れ渡っており、やみくもに戦っても勝てないとソマーヴィルは考えた。


「...ひとまず出撃中の『ドーセットシャー』と『コーンウォール』を

こちらに合流させよう。それから反撃に出ることにしよう。」

「了解しました。」

 ソマーヴィルはそう部下に命令を出すと、すでに冷めきった紅茶を一気に飲み干した。


 しかし、この時ソマーヴィルや参謀達は、角田少将率いる第三航空戦隊が近づいていることに気づいていなかった。 


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