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太平洋の双翼  作者:  カズヤン
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1. タイムスリップは突然に

  「よーし、そろそろ帰るで」


  大阪日本橋の地下鉄への道をせかせかと一人の男が歩いていた。

「待ってくださいよ緋村先輩」


「先輩」と呼ばれた男は後ろから走ってくる後輩を見た。

「おお、遅かったな村田」


「遅くなるにきまってますよ。こんだけ荷物持たせて」

 彼はプラモデルの入った袋をいくつももっていた。そのうち半分は緋村が購入したものである。


「後輩の仕事だ。我慢しろ。」

「そんなこと言わず自分の持ってくださいよ。」

「ほいほい。」

 そう言いながら緋村は自分の荷物を持ち、地下鉄の階段を下りようとしたその時......


「っうわ!!」

「先輩危ない!!」


 緋村が足を滑らせ階段を落ちそうになったその瞬間、ぐにゃりと視界が歪んでいくのに気付いた。


(何や、何が起きた!?)

 そして緋村はぐんぐんとまるで深い穴へ落ちていくような感覚に陥り、やがて意識が遠のいていった......

   





「うっ...ううん。」

「あ、目が覚めました?」


 起きてみるとそこには自分と同じ年くらいの一人の少女がいた。

「?あのう、すいません。ここは?」

「ここは私の家です。父が家の前で倒れていたのを見つけてあなた方を家に入れたんですよ。」


「は、はあ。」

「もう一人の方も隣の部屋で寝ています。お呼びしましょうか?」

「いえ、大丈夫です。」

「そうですか。父をよんできますね。」


 少女が部屋を出て行った後、また布団に潜り込んだ。

 妙だな、と思った。地下鉄でこけたのがなぜ人の家の前で倒れていたのだろうか。おまけにあたりを見渡すとなぜか違和感を感じる。ふと近くに置いてあった本を手に取ってみると『少女世界』と書かれていた。さっきの子が看病の時に読んでいたのだろう。


(なんで戦前の雑誌が?それにこの妙な違和感は一体...まさか)

「なんで少女雑誌なんか見てるんですか?」 

「あっいえ・・・別に」

「おお、起きたかね。」


 ふと声のする方に振り向くと、そこには少女の父親らしき50代の男性が立っていた。


「3日間死んだように寝てたから心配したよ。しかし、薫が必死で看病してくれたおかげだな。」


「はい、ありがとうございます。あのう、ところで今日は何日でしょうか?少し記憶が混乱していまして...」

「今日かね?今日は6月の6日だが?」

「今年は何年ですか?」

「昭和10年だが?」


 緋村は唖然とした。昭和10年といえば西暦に直せば1935年である。つまり自分たちは80年も前の時代にタイムスリップしてしまったのである。

「すいません。もう一人の方はどこにいますか?話がしたいのですが。」

「と、隣で寝ています。」

「失礼します!!」


 緋村は急いで隣の部屋にいる後輩の村田の部屋に入っていった。

「おい!!おきろ!!村田!!」

「うーん。何ですか・・・あれ、ここは一体?」

「いいか村田。落ち着いてゆっくり聞いてほしい。」

 緋村はタイムスリップしたことを一から説明した。


「...マジすか。」

「本当だ。さっき新聞で確かめてみたが昭和10年と書かれていた。」

「そんな...」

「あのう、いいかね?」

 そこにはさきほどの父親と娘がじっと見ていた。

「君たちの話を聞いてしまったのだが、その話は本当なのかね?」

(先輩、話してええんですか?)

(話すしかないやろう...)

「信じてくれないでしょうが、僕たちは80年後の未来からやってきたのです。」

 そして緋村は、リュックサックに入っていたタブレットを起動させた。

「オオオオオッ!?」

 そしてタブレットに保存していた写真や動画を見せるなどをした。


「ふうむ、たしかにこれはドイツやアメリカでも作ることはできない...わかった。君たちのことを信じよう。そういえば自己紹介がまだだったね。私は神谷武三。海軍艦政本部所属の中佐だ。こちらは娘の神谷薫。今年で16になる。」

「どうも。」

「あ、いえ。」


(ドンドン)

「あ、いかん!!今日は山本中将がやってこられるんだった!!」

(山本中将って、まさか、あの山本連合艦隊司令長官!?)

 この山本長官との出会いが、のちに歴史を変える第一歩となるのであった...



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