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どこかの谷にバウシカ

某大手アニメーション会社の作ったアニメのワンシーンのパロディです。

パロディといいつつぜんぜんシリアスですし、設定はまったく違います。背景だけ借りました。


こういうのって二次創作になるんでしょうか。

二次創作だと判断される場合、たとえば登場人物の名前をぜんぜん変えた場合はセーフになるのでしょうか。(冒頭の暴露?をしなければ、全然別の場面と言い切ることもできるわけだし・・)

ミートという男はガランとした部屋の片隅に、巧妙に隠された小さな扉を見つけた。

細い下り向きへの階段は先が見えず、奥の闇は限りなく深い。

王族の娘の部屋には不釣合いな空間にいぶかしげな表情を浮かべるこの初老の男は、右手に触れる壁を頼りにして、その先にあるものがなんであるかを求めた。

「む・・・」

闇が尽きるところはたっぷり10分は下ったであろう場所にあった。

行き止まりを示すように扉がひとつ。階段はそこで終わっている。

半開きになっているその仕切りの向こうには光源があるのだろう。闇に慣れた目には漏れている光が一際まぶしく見える。

今まで幾度も彼女の部屋には訪れたがこんな場所があろうとは知らなかった。先ほどの部屋から伸びていた道はこの道しかないのだから、ここは王女の隠し部屋なのだろうが、もともと物を隠して何かをするような娘ではない。

そのような理由から、今彼女がいるであろうこの部屋に明かりがともっていること・・・いや、このような部屋があること自体、ミートには不可解であった。


その不可解は部屋に飛び込んだミートの視線の先でさらに顕著なものとなる。

「これは・・・」

大きく見開かれた瞳は、しばらくその行動をやめてしまった。

「バウシカ、これはどういうことだ」

広い部屋だった。生活の匂いが強くする空間で、棚や食料・手洗い場・トイレが"生きて"いる。この場所で生活している者がいるということは容易に推察できた。

部屋の中央にテーブルがある。それに覆いかぶさるようにして力なく突っ伏して座っている一人の少女が、この国を統治している王の娘、バウシカである。

その周りを、ミートの太ももくらいまでしかないような小さな子供たちが群れを成して見守っている。彼らは一様に額に汗を浮かべつつも声も上げず、この王女の悲しみを呆然とその目に映していた。

「ミート様・・・」

たっぷり間をおいて、少女の瞳がようやく男に向けられると、ミートは半ば唖然として言葉にならない言葉を吐いた。

「バウシカ・・・これは・・・」

「怖がらないで。もう殺菌は行いました」

おそるおそる歩を進めながら、男にはこの部屋の光景がにわかに信じられない。

不潔であった。

部屋にある布という布は長い間換えられていないのだろう。色はあせて干からびている。テーブルに掛けられたクロスも同様で、娘が今まであれに顔を寄せて呼吸をしていたのかと思うと背筋が寒くなる。

それだけではない。部屋全体に埃が浮き、所々カビが生えて黒ずんでいる。さらに木の腐ったような部分からはキノコのようなものが生えていて、ごみは一箇所に集められているとはいえ山のようになっており、部屋の端は石の床を突き破って雑草が伸びている。

何より暑い。如何に夏とはいえこのような熱を帯びた部屋ではすぐに体調を崩してしまいそうだ。

「このような部屋にお前やこの子供たちはいたのか?」

「はい・・・」

「しかしそれにしてはみな健康そうな顔をしている」

不思議そうにミートのほうを見ている子供たちのすました顔はいずれも、病に憑りつかれているような様子はない。

この未来。このような部屋にいて、このような状況は、ありえなかった。

子供では3日ともつまい。いや、それは大人でも同じことだ。人はそれほどに外部の汚れに対して弱くなっていた。

「この子達は生まれた瞬間から、この部屋で育てました」

決して清潔ではないこの部屋で、彼らは数々の雑菌や細菌と共に生きた。

「人は菌と共に生きれば生きられたんです」

彼らもここまで育つのにひとつの病気もなかったとはいえない。が、その結果、現在では生きられないとされている環境で、立派に生きている。

「わたし、気づいたんです。人は菌を嫌いすぎました」

21世紀初頭・・・この国には空前の除菌ブームが来た。

そこかしこに菌がいることを喧伝し、その嫌悪感を煽ることによって、そのすべてをあらゆる薬剤を用いて駆逐することを植えつけた。

「その結果、人はこんな少しのほこりですら、受け入れられない身体になってしまった・・・」

今、この国は数多の予防接種とおびただしい種類の薬なしでは生きられない。

「汚れているのは菌じゃない。菌をすべて悪者にしようとした人間の心なんです」

そのさらに昔、寄生虫が当然のように人の腹の中にいた頃、人にはアトピーや喘息など、アレルギーというものは存在してなかったと聞く。

「ここには冷暖房の装置もありません」

「なんと・・・!」

「でも、一人も熱中症に苦しむことがない・・・」

温暖化・・・たしかに地球の温度は多少上がっただろう。しかし本当にそれだけが"患者"を増やした原因なのだろうか。

彼女はずっと疑問だった。そして今、この王女は確信している。

要は耐性なのだ。人は人自身を弱くしすぎた。

ものの数キロを歩くのに息を上げてしまうような便利な社会が、人をそのままでは生きていけなくさせてしまった。

「それを知ってどうなる・・・?」

ミートは彼女がやらんとしていたことを把握した。が、その上で聞かなければならない。

「人は弱さを捨てられると思うのか」

そして彼はすぐ、そのような質問を投げた自分に後悔した。

彼女の静かにかすんだ瞳が、その葛藤と戦い尽くしたことを物語っていたのだ。


だから皇女は、この隔離された地下室のテーブルで突っ伏している。

最近のCMで

「従来の方法では菌をなおさら広げてしまいます!」

っていうのがありますよね。アレにすごい疑問なんです。


今までそれとずっと共存してきたんじゃないか?

それに耐性をなくすことはいかがなものか?と。


なんか、あのアニメ(の原作)と逆のことが起ころうとしてるんじゃないかなと、大げさながら思っていて、だから敢えて場面を借りました。


ちなみに、部屋の表現が陳腐ですね・・・。スミマセン、ここに力を入れることが面倒でした・・・(馬鹿正直)

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