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進化を極めた世界

 その星の医療・演算技術は、頂点に達していた。

 脳のメカニズムはすべて解明され、すべての感情や感覚は電気信号から成るという結論に至る。すべての電気信号は二進法に置き換えることができ、つまりはコンピュータと脳を直接つなげればどのような欲求を満たせる時代になった。

 もちろん頭の中にコンピュータを埋め込むわけには行かないので、遠隔操作のできるチップを脳へ作用できる場所に埋め込む。遠くマザーコンピュータより発せられる信号により、人間は目に映らなくても見ることができ、においをかがなくてもいろんな匂いを体験することが可能になった。

 運動すら必要ない。送られてくる情報はバーチャルなものだが、だだっ広いフィールドの中で、自分が走りたいと判断すると心拍数も上がれば筋肉も疲労する。また、頭脳はインターネットでつながっているので、一瞬で無限の知識を引き出すこともでき、メールを打つまでもなく自分の意思は望む相手に伝えることができるようになっていた。

 行きたいところへも意識だけがいけばよい。検索できるところなら一瞬でつながるし、そこで周波数を合わせれば望む他人と自由に会うこともできる。そして例えば行った先で水に触れたとすれば、その電気信号の感覚は実際のものと変わりがなかった。おまけになにをしても一線を越える刺激がないように配慮されているから、その中で脳がショック死することもない。人間は平気で危険な遊びを体感できるのだ。


 要するに、この星では呼吸と栄養分の補充以外の日常生活を行う必要がなくなっていた。もっとも味覚についても脳への電気信号であらゆる味を感じることができるので、生きていくために必要な栄養素さえ補うことができれば、味などはどうでもよい。

 そこで考え出されたのが、地中の養分を自分の体内に吸い上げる方法だった。

そのためには大地に根ざす必要があるので外で生活することになるが、脳への信号で住む空間も自由に設定できるので家というものは必要ない。痛覚も当然コントロールされているのだから、雨ざらしで座っていてもなんの不都合もなかった。

 動く必要すらないとなると、地中から養分を吸い上げる装置は、どんどん大型化していった。地表に少し刺さるだけではすぐに周辺の養分は尽きる。根を深く這わせてより長い時間養分を吸えるよう成長できるようにし、太陽からも必要な養分を生成できるように人は改造されていった。

 もはや、肉体などは邪魔であった。

 人は結局、脳以外のすべての器官を捨てた。マザーコンピュータは誰も改ざんできないように地の底へ、そして、たとえそれがいかれたとしても、脳の信号から逆算して修復するプログラムもできている。

 ……未来永劫稼動するシステムの中で、気がつけばその星から人間の声は消えていた。


 後世、その星を訪れる異星人は、まさかそれが元人間だったとは誰も思わないだろう。

 その星は、うっそうと葉の生い茂った原生林が多い尽くす、無人の園となっていた。

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