聖女 4
魔導士ラミダ視点です
国王の命令で、召喚の文献に探すことになった
仕事をもらうのは久しぶりだったため、命令をくだされた時には舞い上がった
150年以上も昔の文献、それも召喚の本を探すのは大変な苦労だった
この国のもっとも大きい図書室に通い詰めて二ヶ月、漸く見つかった古い魔導書
しかし、見つかったのはいいが、文字が150年前と現代では違っているため翻訳をしなくてはいけない
本当に、この一年は疲れることだらけだった
私は、この国最強といっても過言ではないほどの魔術の使い手だ
ここ最近になって、魔族の動きが活発にになって魔導士の本職の仕事がもらえず、政務などというわけの分からん物をやらされてきた
人数が足りないからと言って、こちらに政治の仕事を持ってこないでもらいと思っていたら、この召喚の仕事がきたわけだ
召喚の儀では、私が魔力をあやつり陣を発動させることになっている
けっこうな大仕事だった
私、一個人として召喚の儀には、反対だった
救世主、聖女といっても、簡単に言ってしまえば、人間の生贄なんだ
こことはまったく関係のない世界で、私たちの代わりに死んでくださいと言う儀式だ
文献を探している間は、久しぶりの魔導士の仕事と喜んでいたが探し終わり翻訳が終わると、冷静に今まで自分が調べていたことを考えることが出来た
神官どもは、私が調べた資料をまるで自分がやったかのような言葉で、王宮に広めている
もう、後戻りはできない
そもそも、魔族とはなんなのか?
今の王族すらもその答えを知っている物はいなく、大陸の中でもごく僅かな人間しかしらないだろう
私もこんなものを調べなければ知ることもなかった
彼らは、私たちと同じ種族なんだと
笑ってもいいだろう、同じ人間同士で殺しあっているのだ
それも、過去に二度もだ
私はこの事実を知ったとき、久しぶりに大笑いしてしまった
さらに、同じ種族のあらそいに、別の世界の人間が強制的に参加させられている
人間のおろかさはここまで極まればわらわずにはいられないだろう?
しかし、事実を知っても私は召喚の儀を止めることも、止めようと叫ぶ事もなかった
着々と、準備が進められていく
そしてついに、召喚は始まった
私が発動させた、この愚かな戦いが無意味だと知っている私が、召喚の陣を発動させた
召喚されたのは、18の少女だった
文献にも、若い聖女と書かれていたので予想はしていた
しかし、魔導士の私は召喚され眠った状態の少女を見て正直に怖いと感じた
少女が怖いのではない、少女のもっている魔力にだ
魔導士の私には分かる、この召喚された少女の持つありえない量の魔力を・・・・・
ずば抜けていたのはそこだけではない、彼女の魔術の相性も天才と呼べるほど
冗談で一週間でと言ったのを、彼女は実現させてしまったのだから天才というしかない
彼女は、160センチほどの身長で、美人と言うほどではないが笑うのが似合う子だった
あまり、親しくなってはいけないと思いながらも、気がつけば私の初めての親友と呼べるまでの存在になっていた
旅がはじまった
平和の世界からきたのだろう
始めて人間を、間接的ではないにしろ殺してしまったときの彼女の絶望の表情は今でも思い出せる
ここ最近、山賊がでると言うのは聞いていたが、王都のすぐ近くで教われるとは夢にも思わなかった
彼女には、相手の隙を狙って魔術を使ってもらったが、運悪く山賊にあたり体ごと解けてなくなった
光の魔法は、太陽と同じ熱を持っている術を作り出せる
彼女には、そんな危ない魔術ばかりを教えている。
言い方は悪いが、彼女は人間兵器なんだ
そんな風にしたのも、仕向けたのもこの私だった
ギル殿下から、彼女を魔王と共に始末すると聞かされている
覚悟は出来ていた、二度の召喚によって呼ばれた歴代の聖女は相打ちと言う形で死んでいる以上、聖女は魔王と共に死ぬのが一番
生き残っていたら、人間達が逆に迷惑だ
復讐されるかもしれないからだ
私は道化になることにした、いつでも笑って彼女を褒め、彼女を聖女にし続けるための道化
魔王と対峙する彼女がいた
魔王城には、もう魔王しかいない
それ以外は、すべて殺した
聖剣を手に入れた彼女は、間接的に人間を殺すことに、魔族を殺すことになれた
その代わりに、彼女は心を壊していく
このままでは、魔王の前に死んでしまう
だから、道化の私は彼女に恋人を作る
彼女が信頼を置いていたギル殿下を、恋人にした
人間というものは、痛みを分かち合える人間がいれば心が軽くなるのを知っていたからだ
もう私は彼女の親友ではないだろう
彼女は私をまだ親友と思っているだろうか?
彼女がすべてを理解するのは、多分すべてが終わったあとだろうけど・・・・・
ごめん、ごめんね
「・・・・・・」
そうだった、そうだったね
名前、聞いていなかったね
あなたの名前、私知らなかったね
「ごめんね、聖女様」
結局、彼女は聖女と言う言葉でしかなかったのだ