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短くなったタバコを足で捻り潰す。吐いたのは煙か、ため息か。踵を返し、小さな社を振り返ると…リコはそこにいた。
手に紙飛行機を握りしめ、立ちすくんでいた。
そこに書かれていた想いを、俺は何も知らない。どれだけ気持ちを巡らせても、今の彼女にかけるべき言葉は見つからなかった。
たぶんその事件以来、訪れていないだろう地元。そこでずっと待っていた想い。
視線が合った。迷わずにリコは俺の腕に飛び込んできた。汚れるのも厭わずに。言葉も言い訳もいらない。泣いている女の子がいる。なら…俺がすべきことは一つ。思いきり抱きしめて、涙をぬぐうこと。
まるで少女のように泣きじゃくるリコ。これがフィルターを通さない本来の彼女かもしれない。生きていくうちに、余計な生きるためのぜい肉はつくものだから。
手を洗えばよかった。これじゃ手をつなぐことも、頭を撫でることもためらわれる。それが…誤解されないといい。幾分、冷静なのか…そんな余裕さえあって。
残酷だな、と自嘲めいた思いが浮かぶ。確かに、痛い事実かもしれないけれど、知らないというのは、時に人を大胆にするから。
いや…違うな。選ばれた理由が名前というのが…思いの外ショックだったんだ。それは動かしがたい事実で。俺たちの今までを否定するには充分過ぎて。だから…。
言葉が出ない。間違えちゃいけないんだ。出口も、順番も。どれか一つ間違えるだけで…俺たちの今までなんて一瞬で消えてしまう。
口火を切ったのは彼女の方。ありがとう、と無難であり、本音であろう言葉で。
俺は何も言わなかった。すべてを見きわめるために。
あそこに書かれていたのは、なんだったのだろう?今さら気になっても、仕方がないことなのだろうが。
『…あなたがいてくれてよかった』
「きっかけはどうでも…か?」自嘲気味に吐き出す言葉に、トゲが含まれるのは仕方ない。
『…騙していたわけじゃない』
「黙っていただけだもんな…」
ダメだ。傷つける言葉しか出てこない。
『それは…ごめんなさい…でも…』
「信じて…か?リコの何を信じればいい?」
傷つけたくなんかないのに、口をついて出るのは…刃物より鋭利な言葉で。
嘘だ。ただ…俺は、受け止める勇気がなかっただけだ。
もう一度思い返してみる。きっかけを責めるには、あまりにも偶然の出会い。…いや、あれこそが仕組まれていたのかも。思考の迷路に迷い込んでいた。




