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温かく柔らかい香りが、鼻をくすぐる。


英国紳士を気取ってる訳じゃないけれど、そのぐらいの余裕はほしい。


ひとしきり泣いた後のティータイムも、ちょっと可笑しいけれど。



…紅茶をすすりながら、もう一度思案を巡らせる。忘れていることはないか?いつもと変わっていた点は?


…浮かんでくる考えに、自問自答する。


名刺もダメ。あの飲み屋の線も…今は何も進展はしないだろう。


そして絶対に、何かの手がかりになるはずの画像も…無理だ。



…何か…きっかけは…。閃光のようなひらめきは…。


…待てよ。思い出せ。


今日…彼女は…初めて待ち合わせに遅れて…来たよな?


どうしてだっけ?


タバコに火をつけ、深く吐くようにして、考える。


…確か…『用事があって』…って言ってたよな?



…用事?


心の中で、一つの考えにたどり着く。


…もしかしたら…今夜も、バッグの中に…何かがあるかもしれない。


用事を済ませてきたなら、なおさらのこと。



…と、なれば。


「知ってる?この紅茶はブランデーによく合うんだよ」


『えっ?そうなんだ?』


「試してみる?」



…ごく自然に…毒を盛る。好きだからこそ…知りたくなる。秘密にされると…探りたくなる。


疚しいことがなければ、誰も携帯にロックなんかかけやしないしね。


『あ…美味しい。唯人さんって物知りなんだね』


無邪気な笑顔が、胸を抉るけれど。目的のためには、手段なんか選んでいられない。


2杯目を飲み干す頃には、頬を桜色に染めた彼女がいた。


『やっぱり…ブランデーって酔うね』


「紅茶で割ってるから、それほどアルコール度数は、高くないはずなんだけどなあ?」


『じゃあ…気分的なものかな?』


「きっとそうだろうね。紅茶にはリラックス効果もあるしね」


笑顔の裏に忍ばせた、醜い気持ち。少しずつだけ、ブランデーを濃くしていく。


呂律が回らなくなる頃には、ブランデーの紅茶割りなのか、紅茶のブランデー割りなのかわからない濃度になっていたが。


「あれなら先にお風呂入ってきなよ?ちょっと酔ってるみたいだし」


『うん…わかった…そうする…』


甘ったるい声で、浴室へ消える彼女。


バスタオルを用意して、彼女がシャワーを使うのと同時に、カバンの中に手を入れた。



…ビンゴ。昨日とは違うディスクが、そこにはあった。

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