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第41話 加恋、待ち伏せ、一緒の通学路

 翌朝。


 オレは昨日と同じ電車に乗ると、高校最寄りの駅で降り、同じ制服を着た生徒集団の一員となって改札を抜けた。

 すると、


「シュート、おっはよーん♪ 昨日ぶりだねー♪」


 まるで待ち構えていたかのように、加恋が人好きのする笑顔とともに手を振ってきた。


 それだけで周囲の視線が加恋に集まる。

 1年生も2年生も3年生も、男子も女子も一般人も関係ない。

 この場にいるほほ全員が加恋に注目していた。


 ――いや、そもそも何もしなくても、改札の脇で待ち人をしていた時点で注目されていたに違いない。


 オレは今来たところなんでその辺りはぜんぶ想像だが、アイドル並みに可愛い女子生徒が改札脇で人待ちしていたら、誰でも気にはなるだろう。


 それはそれとして。


「おはよう加恋」


 オレはクラスメイトとして軽く手を上げて挨拶を返しつつ、加恋の横を通り過ぎようとしたのだが。

 加恋はタタッと小走りに駆け寄ってくると、


「シュートのこと待ってたんだよぉ♪ 一緒に学校行こうっ♪」


 当たり前のようにオレの隣に並んで、歩き出した。


「えっと、オレを待ってたのか?」

「うん、そーだよーん♪」


 やや戸惑いながら問いかけると、加恋は笑顔でうなずいた。


「悪い、もしかして昨日、約束でもしてたっけか? ド忘れしてたかもだ」


「ううん、アタシが勝手に待ってただけー。シュートが電車通学なのは知ってたから、駅で待ってたら会えるかなーって」


「勝手にって。用があるならラインで連絡なりすればいいだろ?」

「んー、用とかじゃなくて、なんか急にそんな気分になったからぁ、えいやってやっちゃった感じ? あはっ♪」


 加恋がにゃはーと楽しそうに笑う。


「……人生楽しそうでなによりだよ」


「1度きりの人生なんだから、楽しまないと損でしょ? 十代なんてもうあと5年しか残ってないんだから」


「……」

「な、なに? 急に黙り込んじゃって?」


 思わず黙り込んでしまったオレに、加恋が上目づかいの少し不安げな様子で尋ねてきた。


「いや、マジレスが返ってきて一瞬、感じ入ってしまった。含蓄(がんちく)ある言葉をありがとう。胸に刻んでおくよ。そうだよな、人生は一度きりだもんな」


「ふふっ、感動して言葉が出なくなっちゃうとか、さすが令和の名言製造機・加恋ちゃんだよねっ♪」


「へぇ、そんなあだ名があったんだな」

「ううん、今テキトーに思いついただけー」


「ああ、そう……」

「うん、そうっ♪」


 どうやら加恋は冗談も上手いらしい。


 放課後に一緒にクレープを食べたりして互いに打ち解けたからか──少なくともオレはそう思っている──昨日までよりも加恋との距離を近く感じていた。


(恋愛的な意味ではなく、友だちとしての距離感な。念のため)


 あとはどうして突発待ち合わせの対象がオレだったのかが気にならなくもなかったが、変な話題――コイバナ――に繋げられるとウザそうだったので、そこはスルーしておいた。


「っていうか、もしオレが加恋より前の時間の電車に乗ってたら、どうするつもりだったんだ?」


「でもでもぉ、ちゃんとこの電車だったでしょ?」


「運が良かったんだな」


「チッチッチ♪ 運じゃなくて、ちゃんと根拠があるんだから」

 加恋がピンと伸ばした右手の人差し指を、左右に振った。


「根拠って?」


「名探偵・小鳥遊加恋の華麗な推理を聞きたい? 聞きたい?」

「まぁ、話の流れだし、聞かせてくれないか?」


「別にそんな大したことでもないんだけどね。ほら、昨日はシュートってアタシより遅く教室に来たよね?」

「そうだな、オレが教室に入ったら加恋に挨拶をされたよな」


「ってことはぁ、シュートはアタシの一本後の電車なわけだよね? 通学電車って、寝坊して遅くなることはあっても、早くなることは普通ないと思ったんだよねー」


「なるほどだな」

 いたって単純な話だったが、実に核心をついていた。


 朝の電車に乗り遅れることはあっても、早い電車に乗ることはない。

 全・高校生が同意するこの世の真理だと思う。


「そういえば一緒じゃないの? てっきり一緒だと思ってたんだけど」


 と、話が一つ終わるとすぐに、加恋がまた新しい話題を振ってきた。


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