第4話 俺が恋愛不感症になったわけ。(4)
そんなこんなで釘宮さんと付き合い始めた俺は、そのタイミングで一念発起して筋トレを始めた。
筋トレといっても、歴戦の帰宅部ゲーマーの俺はよわよわ貧弱モヤシボディなので、負荷のあまりかからない、なおかつ家でお手軽にできるものに限ってだったけど。
腕立て伏せ・腹筋・スクワットは毎日欠かさず30回ずつ。
週に最低1回はランニングに行き。
ランニングの途中にある公園の懸垂棒(って言うのか? 背の高い鉄棒みたいな、ぶら下がれる遊具だ)で懸垂をしたり。
筋肉をつけるにはタンパク質がいいらしいと知って、牛乳も意識的に飲むようにした。
と、せいぜいそんな程度。
毎日部活にいそしんでいる運動部の人が見たら鼻で笑うレベルだ。
どれもこれも本当に大したことじゃなかったんだけど、それでもこの時の俺は、少しでも釘宮さんに釣り合う男子になりたかった。
釘宮さんに見合う男になって、「カッコいいじゃん」って褒めてもらいたかった。
だから少しして釘宮さんと初めてのデートに行ったときに、
「付き合うまではぜんぜん知らなかったんだけど、加賀見くんって結構筋肉あるよね。やっぱり男の子は違うね。カッコいいよ、えへへ♪」
なんて言いながら、釘宮さんが俺の胸元をチョンチョンと人差し指でつついてきた時は、すごく嬉しかった。
釘宮さんの指先の触れたところが強烈に熱を帯びて、そこを起点に激しいドキドキが巻き起こってくる。
筋トレを毎日続けてよかった!
「別にこれくらい普通だってば」
なーんて、浮かれ気分でちょっと見栄を張っちゃう俺。
右腕で力こぶを作ってみせた。
(冬で厚着しているのもあって筋肉が盛り上がるのは見えないんだけど、なんとなく)
「とかなんとか言ってー、実はこっそり筋トレとかしてるんでしょ?」
しかし調子に乗った俺に、釘宮さんが盛大なマジレスをたたき込んできた。
「……」
一瞬で真顔になり、返答に窮してしまう俺。
「えっと、どうしたの?」
「…………」
「な、なんで黙っちゃったのかな?」
「……まぁ、うん。実はそうなんだ」
彼女である釘宮さんに嘘だけはつきたくなかったので、俺はぼそっと、だけど正直に答えた。
「あ、ほんとだったんだ……。冗談のつもりだったんだけど、なんか、ごめんね……?」
叱られる直前の小さな子供みたいに、シュンとした顔をみせる釘宮さん。
「あはは、謝らなくたっていいってば。前にも言ったかもだけど、釘宮さんに見合うようにカッコよくなりたいって思ってさ。こっそり筋トレしてただけだから」
「そんなことしなくても、加賀見くんは今のままで十分かっこいいよ――って、何を言わせるのかな!」
「自分から言ったんじゃん」
「加賀見くんが言わせたんですぅー! 誘導尋問ですぅー!」
「俺は誘導なんてしてないからね」
「してましたー! 超してましたー!」
なんてイチャコラと盛り上がったんだよな。
ちなみにこの会話の後、俺がトレーニングメニューをちょっとだけ増強したのは言うまでもない。
この頃の俺は恋愛ってやつに、馬鹿みたいに浮かれていたから。
お読みいただきありがとうございました。
気に入ってもらえたら
ぜひぜひ、ブックマークへ&評価(☆☆☆☆☆)を入れていただけると嬉しいです(っ ॑꒳ ॑c)




