第19話 シゴデキ? 加恋の人心掌握術
「ぅ……」
そして加恋の問いかけに、夏美が目に見えて動揺していた。
まったく、例のことなら別に大したことじゃないって何度も言ってるだろうに。
「あれあれ~? その反応? やっぱり付き合ってるんだ~♪ そうだと思ったんだよね。アタシって、そういうの見抜くの得意だから♪」
加恋が嬉しそうにニマニマと笑みを深めた。
しかしそこには茶化そうとか、からかおうといった意地の悪さはあまり感じない。
予想が当たって嬉しい、みたいな様子だ。
同じクラス女王でも、中学の時に女王として君臨していた千堂真紀――イジリが好きで性格があまりよくなかった――と違って、加恋は親しみが持てる女王のようだ。
「えっと、あの――」
そしておろおろしっぱなしの夏海の言葉に被せるようにして、オレは言った。
「ただのおな中だよ。普通の友達。おな中で席が隣なら話くらいするだろ? それ以上でもそれ以下でもないさ」
「え~? とてもそうは見えないんだけどぉ」
説明はした。
恋愛脳の恋愛話に、これ以上付き合っても不毛だ。
「そんなことより、みんなでカラオケ行くんだろ。オレたちも参加したいんだ。な、夏美」
「うん。小鳥遊さんと一緒に行けたら嬉しいな」
「わっ、ありがと~♪ 2名様ごあんな~い♪ あと、加恋でいいよー。アタシもナツミンって呼ぶしー♪」
そう言うと加恋は人好きのする笑顔で、夏美の手を取ってぎゅっと握った。
同性とはいえ、初対面の人間の手をナチュラルに握れる。
コミュ力お化けってこういうのを言うんだろうな。
「じゃあ、えっと。加恋ちゃんで、いい?」
手を握られたまま、夏美が恥ずかしそうに答えると、
「もちもち♪ 改めてよろしくね、ナツミン♪」
加恋は素敵な笑顔を見せると、嬉しさを表すように握っていた手を上下に振ったのだった。
そんなやり取りを経て、俺たちは加恋主催のクラス親睦カラオケに参加することになった。
最終的にクラスのほぼ全員が参加し、総勢30名を超える大集団となった俺たちは。
まずは加恋の作ったクラスラインに参加して全員「友だち」になると、途中ドンキに寄ってポテチやらチョコやらといったパーティ菓子を買いこみ、高校最寄り駅の駅前にある有名カラオケチェーンに入った。
ドンキで買い物中に、加恋はネットでパパっと部屋の予約をしていたらしく、
「大部屋を4部屋とったから、行き来は自由にしよっ。その方がみんなと話せるもんねっ♪」
大所帯でもササッと入店手続きが済んでしまう。
さらには、
「全員20%引きになる割引クーポンがあるからねー♪」
加恋の言葉に、
「うわそれ助かる~!」
「加恋ちゃんありがと~!」
クラスメイト達からは次々と称賛の声が上がった。
もう完全にクラスメイトの心を虜にしていた。
さすがはクラスの女王になってやろうという人間だ。
人心掌握テクがハンパない。
「すごいな。やることなすこと卒がない」
誰に聞かせるでもなく、感心したオレは思わず呟いてしまったのだが、隣にいた夏美には聞こえてしまったらしく、
「すごいよね、加恋ちゃん。シゴデキって感じ」
そんな言葉を返してきた。
せっかくなので話を続ける。
「そもそもここまで全部、計算づくだよな。予約とかクーポンとかさ」
「あ、言われてみればそうだよね。加恋ちゃん、準備してくれてたんだ」
「多分な。さすがに手際が良すぎる」
そこに小さくない努力の存在を感じたこともあって、オレは小鳥遊加恋という女子に素直に感心していた。
評価を大幅に改める――もちろんいい方にだ。
ま、恋愛脳すぎて、大幅にプラスしてもオレとは絶対合わないがな。




