第20話 自己評価と、他者評価
そして4部屋あった中で、オレは男子ばかりの男部屋を選んだ。
ちなみに他の3部屋は、女子ばかりの女部屋、男女半々くらいの部屋、そして加恋を中心に男女の1軍グループ候補生たちが集まるキラキラVIPルームだ。
そりゃオレが選ぶならここだろ?
みんなでアニメやらゲーム、Vtuberの有名ソングを歌う合間に、ゲームの話や中学時代の話、あとは下ネタやら兄貴がウザいやらどうでもいいバカ話で盛り上がるこの部屋は、言うなれば実家のような安心感を与えてくれる。
しかもみんな素直かつオラオラしないタイプで、オレの苦手な恋愛脳のイケイケ軍団とは正反対だった。
早速、仲良くなったクラスメイトたちと他愛もないことをいい感じに話していると、そのうちの1人が妙なことを言ってきた。
「っていうか加賀見。お前、ここにいていいのかよ?」
細川って男子で、将棋が趣味で、ネット対戦で鍛えていて結構な腕前らしい。
知的でしぶい趣味だ。
ちょっと憧れる。
「悪い、どういう意味だ? オレはちゃんと1組のクラスメイトだぞ?」
まさか他のクラスの人間だと疑われているんだろうか?
右に倣えなありきたりな自己紹介だったのは事実だが、そこまで存在感がなかったのだろうか?
「そうじゃなくてさ。加恋ちゃんの部屋に行かなくていいのかってこと」
その言葉に、他の男子たちが一斉に会話に乗ってきた。
「マジそれ、俺も思ってた」
「加賀見は俺らと違って『向こう側』だよなぁ」
「今からでも遅くないから行ってきたらどうだ?」
「んだんだ」
「いやいやいやいや、それはないっての。言い方は悪いが、あそこはいわゆる1軍グループだろ? オレが行っても空気を冷やすだけだっての」
変に持ち上げられてしまって、オレは思わず苦笑したのだが。
「いやいや、加賀見みたいなイケメンなら余裕で1軍だろ?」
細川からは驚くような言葉が返ってくる。
「なんでオレがイケメンなんだよ。そんなこと生まれて初めて言われたんだが?」
「なに言ってんだよ。背も高いし、細身なのに筋肉質だし、話し方とか雰囲気はなんか大人っぽいしさ。どう見てもイケてるだろ。なぁ、みんな?」
「マジそれ」
「だよなぁ」
「加賀見が羨ましいぜ」
「んだんだ」
その言葉に部屋にいた男子が全員、うんうんとうなずいた。
そこにはオレをからかおうなんて雰囲気は、微塵も感じられない。
たしかに筋トレをやり始めてから、身長は「かなり前の方」から「一番後ろか、その一つ前」くらいまで伸びた。
今も毎日欠かさず筋トレを継続しているので、かつてのもやしっ子ボディとは大違いだ。
背筋をピンと伸ばすようになって、猫背だった姿勢も大きく改善した。
ランニングも続けているので割と体力もある。
オレとしてはそこまでの実感はなかったんだが、今のオレは周囲からはそういう風に見えなくもないんだろうか?
自分と1軍のキラキラ生徒たちと比べるなんて、そんなおこがましいことはしたことがなかったからな。
「うーん、あんまり自分を他人と比較したことはないから、そこはちょっとよくわかんないかなぁ」
やたらと持ち上げてくる彼らに、答えになっているようでほとんど何も答えていないに等しい曖昧な言葉を返していると、コンコンと軽やかなノックの音がしてから、入り口のドアがガチャリと開いて、
「なになにー? なんだか話が弾んでるみたいだけど、何の話で盛り上がってるのー? アタシも混ぜてー♪」
ニパニパと人好きのする笑顔を浮かべた加恋が、ひょこっと顔を出した。




