第10話 夢の終わりの最後の瞬間
ことが終わって、家への帰り道。
俺は行き場のない怒りをぶつけるように、ヅカヅカヅカッと地面を乱暴に踏みしめながら歩いていたのだが。
「おっと、そうだ」
大事なことを思い出して、道端に寄って足を止めた。
「夏美のラインをブロックしないと。万が一、心にもない上辺だけの謝罪なんて送られてきた日には、スマホを地面に投げつけかねないからな」
俺はあまり争いごとが好きじゃない平和主義的な性格だと思っていたんだが、今日の俺は自分でも信じられないくらいに攻撃的になっている、その自覚があった。
俺はスマホを取り出すとラインを立ち上げる。
当然のように一番上にあった夏美のアカウントを、怒りに任せてブロックした。
元々、俺は交友関係が広くないのもあって、誰かをブロックするなんてのは生まれて初めての経験だ。
「いいや、やるべきはブロックじゃなくて削除だよな」
たしかブロックしただけじゃ、相手の情報が俺のスマホに残ったままになるらしい。
そんな話をチラッと聞いたことがあった。
偶然、夏美の名前を見てしまって嫌な思いをしないでいいように、スマホから完全に消去しないといけない。
俺は夏海のアカウントを削除するべく、スマホを操作する。
なにぶん初めての経験で、削除のやり方が分からずに少し手間取ったが、それでもそう苦労することもなく削除ボタンまでたどり着いた。
しかし削除ボタンを押そうとした瞬間、この3カ月の偽りの幸せが、まるで走馬灯のように俺の心を駆け抜けていった。
初めてのデートで見た夏美の緊張でひきつった顔。
初めて手を握った時の柔らかい感触と優しい温もり。
勉強会で苦手の数学で疲れ果てて、だらしなく机に突っ伏した夏美の姿。
etc...
「まさか未練でもあるのか? ははっ、まさかな」
この3カ月とはつまり、俺が笑いものにされていた期間だ。
未練なんてあるはずがない。
あっていいはずがない。
俺は顔を軽く左右に振ると、今度こそ夏海のアカウントを俺のスマホから完全に削除した。
そうして家に帰り、自分の部屋で上着を乱雑に脱ぎ散らかすと、俺はベッドに倒れ込んだ。
まだ窓の外は明るいが、目をつむる。
「とりま寝よう。起きてると、いろいろと余計なことを考えてしまうから……」
起きて何かをする気には、とてもなれなかった。
どころか、せめて眠りでもしないと憎しみ、悲しみ、怒り、憎悪、憤慨、イライラetc...心の中でうごめく多種多様な負の感情に、俺という人間が食い殺されてしまいそうだったから。
「あーあ、なんだってんだよ、ほんと……」
感情が高ぶり過ぎていて最初はなかなか寝付けなかったが、しばらくすると俺は深い眠りに落ちていた。
夜になって母さんが晩御飯ができたと呼びに来たが、「ごめん。疲れたから今日はいいよ。明日の朝に食べるから置いといて」と言って追い返す。
その後は翌朝までずっと眠り続けた。
こうして。
俺の人生で最も最低で、最悪で、醜悪な一日は、幕を閉じたのだった。
胸の詰まるプロローグも、そろそろ終わりを迎えようとしています。
今作は流行りの「ざまぁ」も「もう遅い」も「Vtuber」もありません。
昨今の小説家になろうの現代恋愛ではめっきり見なくなった「真正面から恋とは何か」を描いた青春ものです。
流行りでないのでランキングに入りづらいのも重々承知しております。
ですがピュアなアオハル恋愛を一人でも多くの方に届けたいんです。
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