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サークルワールド HERO ~一期一会編~  作者: 葱原龍乃介
第六章 中央大陸英雄譚 ―騒乱―
44/90

過去、捜索、対峙、開戦

       ―――3年前―――



「なら…俺にもアドバイスをして欲しいねぇ………」



「君達………あの英雄の子供かい?」



「でも、俺は違うから… 自分が『正義』なんて思ってないから… だってそうだろ?」



「『悪』は、自分が『悪』だと思って行動するから『悪』なんだぜ?」



アレスとシード…2人の記憶から決して無くなる事が無いであろう出来事…

忘れもしない…忘れる事など出来ない…忌まわしき記憶…

()()()』の記憶…



「おいおい… 卑怯だとか騙したとか言うなよ? 『戦い』ってのは、命のやりとりだ。 騙す騙さない以前に、『生きる』か『死ぬか』だろ? それだけだ。 それに何より…」



「『悪』は、平気で()をつくから『悪』なんだぜ?」



『悪』と言う存在を知ったあの日…

『恐怖』をその身に刻まれたあの日…

『英雄』を垣間見(かいまみ)たあの日…



「…まあいいぜ…答えてやるよ。 俺の名は灰島ルベル。 元騎士だ。 目的はお前を…いや、()()を殺すことだ。 理由は復讐… 俺の人生は、()()()()()()()()()()()()()… だから殺す… お前も…その子供もな…」



「だから殺す… ()()()()()()()()()()()()()()()()…」



()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を… 俺が創りあげる…!」



過去が、鮮明に蘇る

事実が、2人に襲い掛かる

痛みが、体と魂を(うず)かせる


そして唐突に、現実へと戻される




       ―――3年後―――


アレス達はレインカの私室に居た

レインカが居るはずなのに、居ないその部屋に

レインカの部屋は綺麗に整理された実に『陸姫(りくひめ)』らしい部屋だった

しかし広い

通常の一軒家のリビングを倍にした様な広さで、高さは約4メートル程の正方形の一室

王族が住むに相応しい部屋ではあるが、置いてある家具は意外にもこざっぱりしていた

もちろん材質や形といった家具そのものは高価で質は良いが、乱雑に置いてあったり沢山置いてあったりする訳では無かった

部屋の中心に白いテーブル、同じく白いチェアが5個

部屋左奥には勉強机の様な机とイスがセットになった家具があり、こちらも白を基調とされている

机上部には本、机の上にはノートやペンも置いてあった

先程のテーブルやチェアはおそらく来客用、こちらの机を主として使用しているのが、何となく雰囲気で分かる

部屋左手前には、数多くの本が並べられた本棚、部屋左中央の壁には、騎士のマークが描かれた旗が飾られていた

※(騎士のマークについては用語集『騎士』にて)

部屋右奥には天蓋(てんがい)付の大きなピンク色の、実に女の子らしいベッドがあった

部屋正面奥には大きな窓が取り付けてあり、王都を一望出来る

その窓からは夕日の光が差し込む

部屋右手前にはクローゼット、その上に写真立てが置かれている

そこに写るのはレインカの家族の様だった

父、母、兄、そしてレインカの4人が写っている様に見える

よく見たいのは山々だが、そんな暇は無かった

肝心のレインカが、この部屋に居ないからだ

「…ヴェル(あいつ)が…レインカを連れて行ったのか…!?」

アレスは状況からそう推測する

「急いで知らせなきゃ…! 騎士の誰かに言ってレインカちゃんを捜しに

「待ちな…」

ミーシャが部屋から出ていくのをシードが止める

「な…なんでよ…!? 王都は騎士がいっぱい居るんだから、全員で捜した方が良いに決まっているでしょ!?」

「決めつけるのはまだ早い… この部屋を良く見てみな…」

ミーシャは辺りを見回す

…特に()()()()()()()()

「そうだ…()()()()()…」

シードからそう言われても、いまいちピンとこない

しかしスイは気付く

「…争った形跡も…抵抗した様子も…ありませんね… それに…部屋のカギが掛かってないことが…一番気になりますね…」

シードは(うなず)

「…もしもあのヴェルってやつが『黒い闇』の力でここに来たなら、確かに争った形跡も抵抗した様子も無いのは分かる…いきなりそこに現れるからな… だが、()()()()()()()()()のは不自然だ… つまり…」

そこでミーシャもハッと気が付く

「…誰かが…()()()()()…って事かしら…?」

「そうだ。 誰とも会いたくないと言っていたレインカが、私室のカギを開けてそのまま何も争う事無く出て行く程の()()()()()… 俺は、その人物が怪しいと(にら)んでいる… だからこそ騎士に相談するのはまずい… もしかしたら、騎士の中にその犯人が居る可能性もあるからな…」

そう言いながらも、シードは『外部犯』の可能性も捨てて無い

いくら内部犯の可能性が高くても、可能性は可能性だ

ヴェルが本当に来た…と言う可能性も十分にある

そこでシードが提案する

「…よし… とりあえず、この部屋を少し調べて何かしらの手掛かりを見つけ

「『獣心化(ドライブビースト)』!!」

急にアレスがそう叫んだかと思うと、周囲にソウルの風圧が巻き起こる

「っ!?」

「あ…アレス!?」

「…!」

突然の出来事に、シード達は驚きと疑問の顔を見せる


獣心化(ドライブビースト)』…


アレスは『人間』と『獣人』を親に持ち、その『血』を受け継いでいる

だがアレスは『人間』である

外見に獣耳や尻尾等の『獣人要素』が無い為だからだ

しかしアレスは『()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()

正確に言えば、『狼』の力を扱える

人間なのに獣人の力を使える…これは極めて稀な事であり、アレスの『才能』と言える

それが『センス』として発現し、アレスは自身の『才能(センス)』を『獣心化(ドライブビースト)』…そう呼んでいる

※(センスについては用語集『才能』にて)

アレスの頭頂部に黒毛の獣耳が生え、ソウルで創られた鋭利な爪を纏い、狼の様な目付きと牙を持ち合わせた、正に『獣人』と呼べる姿になった

「俺のこの力で…レインカを捜してみる…!」

アレスは早速、何か()()を嗅ぐ仕草をする

「…捜すって…どうやって捜すのよ…?」

「…なるほど…? 『獣心化(ドライブビースト)』で嗅覚を『()』並みにしてレインカを追跡するんだな? アレスにしては名案じゃねぇか…!」

狼も犬も嗅覚が人間より優れている事は誰もが知っている事

だがしかし、この世界(サークルワールド)においてそれはあまり有名では無い

実は『人間』と『獣人』が居るこの世界では、犬や狼等の()()も存在する

犬や狼の『獣人』も『動物』も居るのだが、それらの身体的特徴は『(イコール)』では無い

これは『獣人』が『人間』の染色体を有する為、本来動物が持つ優れた特徴をそのまま継承せず、逆に()()()()()()()()()()()()のだ

もちろん人間よりは優れている

それでも『一キロ先のコインの落ちた音を聞き分ける』、『視力が10.0ある』、『薬物の匂いを嗅ぎ分ける』等の事は出来ない

それこそ動物でしか出来ない

それならば、『獣人』となったアレスには『狼』並みの力を持って無いのではないのか?…そう疑問に思う

実はアレスの『獣心化(ドライブビースト)』 は、ただ単に()()()()を発現させるのでは無い

()()()()()()()()宿()()』と言うセンスの為、『狼の力そのもの』をその肉体に現しているのだ

故に、嗅覚や聴力は狼そのもの

シードは王都に来た後、アレスと特訓していた最中にその事実を知った

だからこそシードは『狼の獣人並みにして』とは言わなかった

…アレスは引き続き匂いを嗅ぐ

すると、1つの結果が導かれた

「…! レインカの匂い…この部屋のドアからどっかに行ってるぞ…!」

アレスは急いで部屋の外へと出て行く

それに続いてミーシャ達もアレスの後を追う

(この匂い…どこまで続いているんだ…?)

(ドアの外…つまり、外部犯では無くなった可能性が高いな… もしドアから入ってドアから出て行ったなら、もっと部屋の中は抵抗した形跡があっていいだろうし、まずレインカがドアを開けたりはしないだろう… なら…犯人はヴェルじゃねぇのか…?)

(獣耳のついたご主人様…とてもかっこいいです…♥)

(ていうかレインカちゃんの匂いを追うって…ちょっと…なんか…変な感じね… いえ…他に方法が無いからしょうがないんだけれど…)

それぞれが別々の思考をする中、アレス達は城を一気に突き抜ける




     ―――同日 午後6時12分―――


アレス達は城を抜け、街へと繰り出す

レインカの残した痕跡を追い、街中をひた走って行く

「…おいおい…一体どこまで行くんだ?」

「本当にこっちでいいのかしら?」

「…しかし…ご主人様はこの方向へと誘導しています… ご主人様を信じましょう…」

「……」

アレスは自分の嗅覚を疑わない

しかしアレスの表情は次第に()()()()()

匂いを嗅ぎ分けられるとはいえ、()()()()にレインカが向かったとは思えないのだ

「……」

「…? ここは…」

辿り着いた先は、誰もが予想もしなかった場所だった

「え… ()()()()()()()よね?」

「…アレス…ここにレインカは向かった…で良いんだよな…?」

「……」

アレスは静かに頷く

大陸を守りし武装組織『王国騎士団』

王都『サニーライン』には、その騎士の本部が存在する

もちろん建物が小さい訳が無い

4階建てで四角い建物、その左右に2階建ての横に長い建物が伸びている

古城の様に強固で頑丈な造りでありながらも、古さは感じられない程綺麗に整えられている

注目するべきは、建物上部に飾られた騎士のマーク

堂々と飾られたその騎士のマークのオブジェは、そこが騎士の本部である事を象徴している

白と灰色に染められたその建物は、普通の一軒家が横に7軒程並べたのと同じぐらいの大きさだが、騎士の本部にしては少し小さいと思われる

奥行も一軒家5軒程で、やはり少し小さい

『小さい訳が無い』のだが、あくまでそれは()()()()()話である

この本部には、広大な()()が存在する

その存在を聞くのは、もう少し後である

「…ここにレインカは来ていないのか…!?」

「その通りだ。 陸姫(りくひめ)様はここに来られてはいない」

アレス本部の前に立つ騎士に話を聞いた

だが、レインカはここに来ていないそうだ

「アレス…確かにここで間違いないんだな…?」

「…ああ… レインカ…の匂いはここに来ている…間違いないよ…」

アレスはくぐもった声でシードの問いに答える

「どういう事かしら…? 来ていないのに来ている…って…どっちが正しいのかしら…?」

「…とりあえず…中に入らせていただきませんか…?」

ミーシャは悩み、スイは騎士にそう尋ねる

「駄目だ。 理由も無しに入らせる訳にはいかない。 今、我々は忙しいのだからな」

やはり拒否される

王都の騎士は、総出で街の復旧作業に取り掛かっているのだから当然である

アレス達に構っている暇は無いのだ

「……」

「…? どうした…アレス?」

シードは気になる

先程からアレスの様子が少しおかしい

何か()()()でもあるかの様な…心ここにあらず…そんな感じである

「……なぁ…シード…」

「?」

「あのさ

「貴方がアレス君…かしら?」

突然呼び掛けられるアレス

全員がその声のする方向を向く

そこには、白い白衣の様な隊服を来た女性が、両手を上の隊服のポケットに入れて建物から出て来ていた

「あっ…! ユゥカ団長…!」

「お疲れ様です!」

本部前に立つ騎士の2人が敬礼をする

「悪いわね貴方達… その子達は私の客人なの… 通してもらってもいいかしら?」

淡々とした声でそう言う白衣の女性

「了解しました!」

「どうぞお通り下さい!」

騎士の2人が道を空ける

「…()()()()のでしょう? 付いて来なさい」

それだけ言ってクルッと背を向け建物へと戻る

「…良いのかしら…?」

「…行くしかねぇな…」

「…行きましょう… …? ご主人様…?」

「……あぁ… 行こう…」

アレスは再び気の無い返事をし、シード達と共にその女性を追い掛け建物へと入る

建物内は外観と相反して少し年期が入った様相だった

それでも補修など必要も無い程で、まるでオフィスビルの1階の受付を連想させる

おそらく街の人々が『依頼』を頼みにここに来る事を考え、日頃から清掃をしているのだろう

本来は騎士が多く在中しているのだが、街の復旧作業、警備、この混乱に乗じての犯罪の取り締まり等…そう言った事で出払ってしまい、ほとんど人は居なかった

そんなロビーを通り過ぎ、一向は奥にある扉へと入る

清楚(せいそ)なロビーに似つかわしく無い、随分と古めかしい扉を開けると、その中には下に伸びる『階段』があった

コツッ…コツッ…っと何の違和感も無く下りていくその女性に対し、アレス達は不安になっていく

「…おい…あんた… 俺達をどこに連れて行くつもりだ…?」

たまらず階段を下りながらシードが尋ねる

「あら…貴方達はどうしてここに来たのかしら…?」

そう言う彼女に、ミーシャが少し食い気味に言う

「えっ…レインカちゃんが…この先に居るって事ですか…!?」

すると彼女は意味深に笑う

「フフッ… その『答え』を知りたかったらもう少し付いて来て頂戴…?」

…ミーシャ達はそれに従うしか無かった

理由は2つ

1つはここが騎士の本部と言う事

騎士に対して何か問題を起こせば問答無用で捕まってしまう

しかも騎士の本部なのだから、逃げ場など無い

もう1つは、彼女が『()()』と呼ばれていた事だ

騎士には4つの隊が存在する

それぞれの隊に支団長や副団長は数人居たりするが、『団長』と呼ばれる存在は『1人』ずつしか存在しない

その内の1人が今、目の前に居る

白い隊服を着用している事から、彼女が『魂理工学隊(そうりこうがくたい)』の団長である事が予想される

戦闘向きの部隊では無いとは言え、能力も実力も分からない相手に正面から戦って勝てる程決して弱くは無いだろう

それならば、レインカの居場所を知る為にもここは従った方が良い…そう思っていた

…ようやくその階段は終わりを迎えた

「…なんだここは…?」

先程まで居た騎士の本部とは似ても似つかぬ場所に、その階段は全員を導いた

古い遺跡の様に、もう何十年もほったらかしにされた古代の石造りの建造物であるかの様に、コケが薄く生えた石の通路が奥まで続いていた

横にも縦にも広く設けられたその通路は、壁に付けられたランプの灯りで薄明るく照らされている

暗い通路を、ここを通るのが当たり前と言わんばかりに女性はスタスタと歩いていく

アレス達は無論付いて行く

少しだけ歩いたその先で、妙に開けた所に辿り着いた

円形の広場…円形闘技場に近いと言えば分かりやすいかも知れない

随分と高い天井は、5階建ての建物であれば入るだろうと感じてしまう

その場所の両脇には奥まで見えない檻が備え付けてあり、何か動物でも入れて置くのかと思ってしまう

そして奥にはまだまだ先があるらしく、ランプに照らされた通路が怪しく誘う

通路の様に古い石造りのこの場所が一体何なのか…この通路はどこまで続いているのか…全く予想がつかなかった

そんな場所に到着した所で、ようやく女性がアレス達の方を振り返る

「アレス君…いつまでもそんなに殺気立っていたら、私も落ち着いて話が出来ないわ」

アレスの『獣心化(ドライブビースト)』を解くように、そう催促する女性

「……」

アレスは静かに、ソウルを弱めて『獣心化(ドライブビースト)』を解く

「…?」

シードはずっと気になっていた

アレスの様子がおかしい事に

それを直接聞き出す前に、女性が話し始める

「自己紹介がまだだったわね。 私はユゥカ・アラクネア。 貴方達の予想通り、『魂理工学隊(そうりこうがくたい)』の団長… ついでに『聖騎士(せいきし)』も兼任しているわ」

彼女の名はユゥカ・アラクネア

首元まで伸ばした白髪で、紅い口紅を塗っている大人の女性

眼鏡の奥から覗く鋭い眼光は、見た者の心を覗き込むかの様に突き刺さる

スラッとした体型ではあるものの、白い隊服が少し大きいのかちょっと太めに見えてしまう

女性の騎士も下の隊服はズボンを履くのだが、彼女は白いスカートを着用している

どうやら魂理工学隊は基本激しく動いたりしない為、スカートでも問題無いのだろう

身長はシードと同じぐらいだが、黒のヒールを履いていて、正確な身長が分からない

そして、彼女は名前からして獣人なのだが、見た目にはその獣人らしさが現れていない

…おそらく白い隊服の中に、その『要素』が隠されているのだろう

だがミーシャ達にとって()()は些細な事だった

「『聖騎士』…! やっぱりそうですか…!」

ミーシャは当然驚く

アレス達の居る中央大陸『セントレイン』…その大陸で4人しか居ない、各分野にて最も優れて最も『愛陸心』を持つ人物達…それが『聖騎士』なのだ

その聖騎士の1人が、今正に目の前に居る…驚かない訳が無い

「貴方達の事は()()()()()()聞いているわ。 自己紹介は結構よ。 それに私は興味の無い事は頭に入れない主義なの。 今の私が興味あるのは()()だけよ」

ユゥカは上着のポケットに入れた手をゴソッと動かし、何かカチッと音を鳴らした

すると右側にあった檻がゴガガガッ!っと大きな音を立てて上部へと動き始めた

完全に開ききった後、その奥から何やら音が聞こえてくる



ズンッ……ズンッ……ズンッ……



「…おい…何の音だ…?」

シードは無意識に背中に携えた槍に手を掛ける

そんなシードを意に介さず、ユゥカは円形の広場の中央へと歩きながら語り掛ける

「貴方達に伝える事は2()()… 1つは、貴方達の目的である人物…陸姫(りくひめ)様はこの先に居るわ」

「「「「!!!」」」」

アレス達はようやくレインカの行方を掴んだ

ここに居る事は分かっていた…が、確固たる証拠が無かった

しかしレインカの行方を知る者からこう聞かされたら、疑心は確信に替わる

だがそれが1つ目ならば、もう1つとは一体…?

「もう1つは、この広場は闘技場では無く…罪人を閉じ込めて猛獣と闘わせる『()()()()()()()()()』だと言う事よ」

ユゥカがそう言った後、左手を高く上げる

するとグワッ!っとまるで()()()()()()()()()()()ユゥカの体が浮き上がり、円形広場の横上部に出ている出っ張りにスッと着地する

その出っ張りがある壁に手をかざすと、ガコッと音が鳴り扉の様に開く

どうやら壁の材質はそのままで、そこが開く様に扉を取り付けたようだ

ユゥカは開いた扉の中に入り、やがてそれが閉まる

「!! おい! 何をする気だ!?」

シードが声を荒らげる

「『――言ったはずよ。 ここは処刑場であり実験場… 貴方達は私の実験に付き合ってもらうわ。 …()()の力を計測する実験台(モルモット)としてね…』」

どこからか聞こえたユゥカの声

スピーカーか何かがこの広場に付けられているのだろう

だがスピーカーなど無くても、檻の奥から聞こえる『()()()』はハッキリと聞こえてしまう

「…とにかく、やるしかねぇか…! アレス! ミーシャ! スイ! 構えとけ!」

「分かった…!」

アレスも腰の刀の柄を握りしめる

「…あなた達…先に行ってちょうだい…」

「…ここは…わたし達が引き受けます…」

しかしミーシャとスイは違った

もう既にミーシャは2丁の銃を両手に持ち、スイは両腕を胸の前で交差させ立派な両刃剣2本をその両手に握りしめていた

「「!?」」

「私達の目的はレインカちゃんの救出よ… ここに居るって分かったなら、何よりも早くレインカちゃんの身の安全を確保するのが大事…そうでしょ…?」

ミーシャの言う事は一理ある

しかし…

「ミーシャ…! 何言ってんだ! 相手はあの『聖騎士』だぞ!? 2人でも…ましてや4人でも敵うかどうか分からないだろ!?」

「…だからこそ…です… 4人でも敵わないのならば…戦力を分散して…目的を達成するべきだと思います…」

「スイちゃんの言う通りよ… ここで4人全員が足止めされるくらいなら…だれかが残って()()()()()()()()()のが当然でしょ? レインカちゃんを助けるまで、()()は私達が足止めする…!」

シードが現状を冷静に分析して言うが、ミーシャやスイは退きはしない

「だからって

「行こうシード… ミーシャ、スイ、頼んだ…!」

「!?」

シードは妙に驚く

それもそのはず

こういった状況ならば、アレスは普通『それじゃダメだ! 全員で戦って全員で助けに行くんだ!』…っと、言ってもおかしく無い

それが『先に行く』と言い出したのだ

()()()()()()()()()()()()

そんなアレスの様子に戸惑いながらも、シードは先に行くアレスに付いて行く

広場奥の通路へと、2人は走り出して行った

そんな2人の姿が見えなくなった後、ミーシャが小さく呟く

「…ごめんねスイちゃん… 本当はアレスと一緒が良かった…でしょ?」

スイは首を軽く横に振る

「…いえ… わたしの全てはご主人様のもの… ご主人様のためなら…わたしは…この身を()()にできます…!」

「…ありがとう…スイちゃん…!」

ミーシャとスイは真っ直ぐ見据える

その視線の先から来る()()から目を離さない様に





 次回  サークルワールド HERO ~一期一会編~





「『私が創り上げた()()()の1つ… エニグマを人工的に創り上げ、戦闘力向上とそれを制御しやすい様に魂機(そうき)と合成した『有魂機(ゆうそうき)生命体』…』」





     第六章 中央大陸英雄(たん) ―騒乱―





「『『対人戦闘生体兵器:E.S.サイク・ロプス』…実験コード≪E(エニグマ) . S(システム)≫を組み込んだその生物の戦闘能力を測る、最初の実験台に…貴方達はなって貰うわ』」







       青原(あおはら)ミーシャ & スイ


            VS


   対人戦闘生体兵器:E.S.サイク・ロプス

Q:人間と獣人の子供なら誰でも獣人の力が使えるのか?

また、その確率はどれぐらいなのか?

「ハッキリ言っちゃうと『誰でも』では無いわね。 そして『使えない』わね。 人は産まれた時から『人間』か『獣人』かに分かれて産まれてくるわ。 詳しい説明は抜きに、獣人としての特徴が外見に現れたら『獣人』、それ以外を『人間』として分類するわ」

「その中でも、俺は獣人の力を使える事が出来るって『才能』を持ってるんだ。 それがソウルの力で『センス』として発現したんだ!」

「…つまり…獣人の力を使えるのは…ご主人様ならではのこと…そういうことでしょうか…?」

「そうね。 誰でも人間と獣人の遺伝子を持っているけど、持っているだけでどっちかに必ず分かれてしまうのよ。 でも確率は分からないけど、時々人間でも獣人の力を扱える人も居るみたい。 だけどもアレスみたいに、『狼そのものの力』を使える訳じゃ無く、『獣人と同じぐらいかそれ以下の力』しか扱え無いらしいわね。 だからアレスが特別って事ね」

「どんなやつが出てきても、俺の『ドライブビースト』には敵わないぜ!」

「…ご主人様…頼もしいです…♥ …そろそろ時間ですね…」

「んじゃ、また次回!」






「…俺…一生出て来ないんじゃねぇのか…?」


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