後日談
さて、彩によるさんざんな告白の後。
隣や海奈、あるいは編美や香。そして彩自身は一体どうなったのか……。
後日談
さて、ゴールデンウィークが明けた五月七日。
この日、生物部に新しい部員が加わった。
といっても後輩ではなく、同学年の女子三人である。
名前は、河勝隣、明石海奈、そして八雲編美。
河勝さんと明石さんは、ゴールデンウィーク中にあれこれ考えた結果、僕がああいった告白をした意図に気がついたらしく、僕のことを許してくれたのだが。
しかし、それでも告白のときに妙なことを言ったということまで帳消しにはしてくれなかった。
なので、僕が河勝さんを選んだ件もなかったことになり、当面は同じ部の部員兼友達として付き合っていくことにしたらしい。
で、ちなみに。
八雲さんはパソコン部だったのだが、河勝さんが兼部して入るように勧めたため、彼女たち二人と一緒に生物部に入ってきたということだ。
で、そんなわけで。今日から女の子三人がいる部活か。
などと思いながら僕が生物室の扉をを開けると。
ヒトに擬態していない河勝さんが押し倒され、これまたヒトに擬態していない明石さんに触手で巻き付かれていた。
……………むう。
これは、葛飾北斎の描いた春画、「蛸と海女」を連想させる構図だ。
思わず僕はスケッチブックを取り出し、二人の様子をスケッチする。
「ちょ、藤若君。何やってんの!? 早く助けなさい!!」
そう言ってくる河勝さんと、
「あたし前から自分以外のソキウスの身体ってどうなっているのか興味あったんだよねー」
と言って、河勝さんを触手で撫で回す明石さん。
そんな二人を描きながら、そういえば明石さんが入部届を出すときに、
「そういえば、あれってカガッチがオーケーすればあたしも藤若君と付き合えるってことだよね? じゃあそっちから攻めようかなー?」
とか言っていたのを思い出したのだが。なるほど、あれはそういう意味だったのか。
いや、そう言う意味なのか? どうなんだろう?
「ちょっと明石さん、やめてよ。もう」
「海奈でいいよー。カガッチとあたしの仲でしょ?」
「なんかこのタイミングで言うとどんな仲なのか誤解されるでしょ。駄目だってば」
「えへへ、良いではないか、良いではないかー」
「良くない! 良くない! ちーっとも良くない!」
僕が色々気にしながらスケッチを進め、二枚目に取りかかっていると、明石さんは悪代官みたいなことを言いながら河勝さんを更に撫で回す。
それを震えながら見ているのは八雲さんである。
そうか。八雲さんもソキウスだから、場合によっては明石さんに襲われる可能性もあるのか。
足が八本のソキウス同士がいちゃついているのもちょっと見てみたいか……って、いかん。
彼女たちをそんな目で見るなんて、僕は友達を一体、何だと思っているんだ。フィクションと現実の区別はつけるべきだ。
とはいえ、これはかなり刺激が強い光景だな。誰かが入ってきたらいけないし、そろそろ止めた方が……。
と僕がそう思っていると、
「なんだぁ? やってんなー」
などと言いながら香が入ってきてしまった。
「なあ、香。これどうすればいいんだい?」
僕はとりあえず香に訊ねる。すると香は、さも当たり前のように、
「どうするって、こうなったら俺たちでやるしかないだろ?」
と答えた。
「やるって、何を?」
「だから、俺とお前で……」
不思議に思って僕が訊ね返すと、香はと何やら妙な事を言い始めた。
更にそれを聞いて「そうか。そういうのもあるんだ……これは今度のネタに……」と呟き、何か嬉しそうにする八雲さん。
「いや、ない。ないからね。八雲さん」
僕は咄嗟に彼女の妄想を止める。
想像までは勝手だが、生物の扱いは注意である。
なんて思っていると、香が、
「おい、彩。何勘違いしているんだ? 俺とお前で二人を――」
と指摘してきたので、
「ああ止めるんだね」
と、我に返って返事をする。
そうだよな。いくら女子二人がいちゃついたからって、こっちも負けじとそんなことをするはずないもんな。
流石、香。冷静な判断だ。
と思って香の方を見ると、香は笑顔で、
「撮影するに決まっているだろう?」
と言いながら、ゴールデンウィーク中に生物部の活動用に購入した記録用のデジカメを用意し出した。
「よーし、このカメラで最初に撮影するのはソキウス同士の――」
「やめんかい! ってか助けて!」
「もう、カガッチたら照れちゃって。あ、編美ちゃんも一緒にどう?」
「え、遠慮しておきますっ!」
うーむ。これはなんかややこしいことになってきた。
でもなんだか、これから先、生物部は賑やかになりそうだ。
だから、まあ、これでいいのだろう。
なんて思いながら、僕はこんな部の状況もいつか良い思い出になるだろうと思いながら、四人の部員達をスケッチブックに記録しておくことにしたのだった。
こうして、彼ら5人は生物部として活動していくのですが。
この先に続どうなるかといえば……それは、また機会があればという事に。




