13.森を抜けた
今までの文章を適当に修正してきました。
ついでに、何となく粗筋始めます。気が向いたら、今までの前書きにも追加したいと思います。
前回の…あらすじ!
ミリアにイラッときたのでお仕置きした。 おわり!
ふぅ。
昨夜はお楽しみでしたね、ってか?
まだ夜だよ。
ミリアの感度はなかなかでした。尚、ラリには及ばない模様。
現在、拘束を解いたらそのまま地面に倒れ伏したミリアを、俺がテントに横たえておいた。他に、テントの中には、木の実と食べかけのパン……堅いパンが落ちている。
ミリアは小さく肩で息をしており、その小豆色の瞳には何も映ってはいない。
やりすぎた感はある。そして、反省している。
いやー、でもくすぐりだけで留めたんだから、中途半端に理性が働いてるよね。つまり、止めようと思えばいつでも止められたわけだよね。なんかすんません。
そうこうしているうちに「すぅすぅ」穏やかな呼吸が聞こえてくる。落ちたな(確信)。
外に放置していた無駄にでかいバッグをテントに入れて、外に出る。そこで気が付いた。
これ、テントの魔除け、発動してなくない?
あ、ヤバいねこれ。どうやって発動させんの? てっきり人が入ればいいものだと。ハルトは特に何もしてなかったよね……。
魔力を込めたり、発動しろって言ったり念じてみたけどダメだった。
仕方がない。今日は徹夜で見張りか。身から出た錆ですな。
だけど、こっそりのぞいた寝顔は、とても可愛かった。
翌朝、起きたのであろうミリアの声が、テントの中から聞こえてくる。
「ふぁああ、あ、あれ。いつの間に寝て……あ!」
ミリアがテントの中から、ひょこっと顔だけを出す。その目には光が戻っていて、少し潤んでいるようにも見える。
「ごめんなさい……」
上目遣いにそう言う。
赦さざるを得ない可愛さがそこにはあった。
「お、おう。こっちこそごめんな。ちょっとやりすぎた」
このように、つい謝ってしまっても仕方がないと思う。
この後、ミリアはテントに隠れ、落ちた食べ物や服、体を魔法で浄化して、造った水を飲んだりしていた。さらっと言ったけど、浄化魔法が便利すぎる。風呂入らないし体も拭かないでも清潔とか、便利っすね。……体がない俺には関係がないのだが。
この世界に水不足ってあるんだろうか? 詠唱さえ知っていればだれでも魔法が使えるのだから、水が足りないってあり得ないよな。
この世界について知らないことが多すぎる。まあ、そのうち知っていけばいいか。
ひとまず、木の実を食べる事は諦めることにする。昨日の夜だったら構わないが、朝から貴重な魔力を使うのは難しいと思われたからだ。
ハルトから聞いた話では、魔力は基本的に、食べ物から補給し休養を取って初めて回復し始めるのだそうだ。だから、歩いて町へ向かうために、途中で使うかもしれない魔法の分を残しておくべきだろう。
「そんなに心配しなくても大丈夫だと思いますよ。まあ、ローがいいならいいですけど」
ミリアに話すと、こう返ってきた。
一応安全な旅とは言えないのだから、ミリアはもうちょっと危機感を覚えるべきだと思う。確かに、この森には苦戦するような凶暴な動物や魔物はいないと思うが。
ミリアが朝食を終えると、テントなどを片付けて出発することになった。
そういえば、
「そのテント、どうやって使うんだ? 昨日、ミリアが寝ちゃったから使い方が分からなくて」
「ローはホントに何も知らないですね」
バッグを背負いながら呆れたように言うミリア。こいつは隙あらば煽ってくるな。まったく反省していないというか、これがミリアの性質なのだろう。俺も諦めた。
「これは”作動”の魔法を使うんですよ。詠唱もいらない初期中の初期の無属性魔法です」
へぇ、人間でも(ハーフエルフだが)無詠唱魔法ってできるんだな。ハルトは教えてくれなかった。
魔力を注ぐだけではだめってことは、”作動”と言う言葉がキーワードになっているのかもな。おそらく魔法語だろうから、別言語ではだめだろう。
そんなことをぼやっと考えていると、
「では行きましょうか」
そう言って機能の嘲笑とは違う、晴れやかな顔でこっちに微笑みかけてきた。
えー、現在東の森林を西へと移動中です。今朝より現在に至って、異常はございません。
ミリアの肩に乗って、ゆっくりと移動中。多分もう少しで、森から出られるのだろう。
だが、そこにはナッセがいた。
「おう、ローじゃねぇか。エルフの子供と一緒にどこ行くんだ?」
みんな忘れてるだろうけど、こいつはすぐチクる精霊だ。今回のことはエストイア(様)も知っているはずだから、チクられたところで何も問題はない。
だが、あえて誰にも何も言わずに森を出たのに、こいつがいやがる。100%俺を知ってるやつらに俺の旅立ちを知られてしまう。この際知られてもいいのだが、こいつに周知されるのは何かムカつく。
ミリアは、俺以外の精霊も感じられるようになっているようで、突然かけられた声にも大して驚いていない。
ミリアに言葉に出さずに、気づかない振りをして進むように指示する。こういう時便利な機能だな、これ。
「おい、何無視してんだよ」
お前はどこぞのチンピラか、クラスのちょっとした不良なのか。無駄にめんどくさいやつである。あからさまに無視してるんだから、わざわざ話しかけてくるなよ。
つーか、西のパトロールは順番で回ってるはずなのに、なんでタイミングよくこいつがいるんだよ。いじめか。
「その様子だと、契約したんだな。そんな生まれたばかりの精霊じゃなくてもよかったろうに」
余計なことを言うんじゃない。俺だって、ミリアだって好き好んで選んだわけではない。
ミリアの顔にも、どことなく不安の色が浮かんで見える。
こいつは余計なことしか言わないから、無視して森から出よう、とミリアに伝える。
ミリアもその言葉に素直に従う。
後方から、呼び止める声が聞こえるが、気にしない。どうせ、エストイア(様)の命令で、さぼってまで追いかけて来ることはできないから。
森を抜けると、少し先に農地が見える。見た感じ、青々とした麦畑なので、今はまだ収穫には遠いのだろう。この辺はどういう形式の農業を行っているのだろうか。そういえば今はいつだったか……。
森と違って、魔力が薄いのがはっきりわかる。魔法の発動には問題ないと思うが、遠い景色が少しぼやけている気がした。森も、遠くまで見えるところがなかったので、もしかしたら何も変わっていないのかもな。
ミリアはやっと窮屈な森から出ることができたからか、うーんと伸びをしている。邪魔にならないようにささっとどいておいた。
ふーっと息を吐いてから、ミリアが話しかけてきた。
「何なんですか、最後のあの精霊は。失礼ですね」
「あいつはそういうやつだから。でもまあ、俺が生まれたばかりなのは否定できないが」
いまだ生後二か月。生まれたてほやほやである。
ミリアは、少し複雑そうな顔をしていたが、特にそれ以上何も言わなかった。
日は既に西に傾いていて、ミリアには眩しそうだ。
俺たちは、日が暮れないようにそそくさとララストルの町に向かうのであった。
ナッセがうざい。出しておいてどうしたらいいかわからなくなった。




